News 2003年7月23日 09:02 PM 更新

デジタル写真の新たな表現方法――ハイパーフォトを実現するPhotoWalker登場(2/3)


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 PhotoWalkerの開発メンバーは、スフィアシステムデザイン クリエイティブディレクターおよび慶應義塾大学環境情報学部非常勤講師で政策・メディア博士の脇田玲氏、most music inc.代表のMr. tom氏、000studio主催のデザイナー松川昌平氏、伊藤宏樹氏など数名。バックグラウンドや考え方が異なるメンバーが集まったため、コンセプトメイキングには膨大な時間がかかったという。


PhotoWalkerの開発メンバー。右から順に脇田玲氏、京都大学COE研究員の田中浩也工学博士、Mr. tom氏

 十数回のバージョンアップを経て、ようやく3月末に「PhotoWalker Ver 1.0(パブリックベータ版)」がプレリリースされ、4月と5月にはバグフィックス版がリリースされた。自分でコンテンツを作成するにはPhotoWalkerをダウンロードする必要があるが、PhotoWalkerコンテンツを閲覧するだけならFlashをインストールしたIE(Internet Explorer)があれば可能だ。

 PhotoWalkerは、当初は「写真を組み合わせて作品を創り出す能動的・創造的ユーザー」を想定ターゲットにした。このため直感的に操作できるダイレクトオペレーションを採用し、試行錯誤の過程そのものも楽しめるようにしている。この点に関しては、「ソフトが勝手に工夫してくれて、カッコいいものが簡単に作れるともっと嬉しい」という、筆者のようなものぐさユーザーには不満がないでもない。

 田中氏の構想では、先にリリースした「PhotoWalker Ver 1.0(パブリックベータ版)」は「PhotoWalker Standard」の初期バージョンにあたる。今後は、ものぐさユーザーを対象としたもっと簡便な「PhotoWalker Lite」と、プロのクリエイターを対象としたより高度な「PhotoWalker Professional」を発表する計画だ。「一つですべてを賄うのではなく、個々のユーザーに応じた異なるバージョンをリリースしていきたい」(田中氏)という。

 PhotoWalkerの登場以来、続々とPhotoWalkerコンテンツが公開されている。PhotoWalkerサイトには数多くのPhotoWalkerコンテンツがリンクされていて、すでに筆者もフォローし切れないほどになっている。建築家やアート系の注目度が高いほか、展覧会などでプレゼンテーション用に使われるケースも多い。動画より軽いためネットワークとの相性もよく、複数の企業からアプローチが来ているという。これから多くの場所で使われていくことになりそうだ。


PhotoWalkerはコンピュータを用いて制作された芸術と科学の融合作品を審査・発表する芸術科学会主催の公募展「DiVA」に展示され、奨励賞を受賞した

4点で写真間をリンク

 PhotoWalkerコンテンツの作成方法を簡単に紹介しよう。ダウンロードしたパッケージを解凍すると、「PhotoWalker」と「PhotoBrowser」の2つのアイコンが現れる。PhotoWalkerはコンテンツの作成・編集に使用し、PhotoBrowserは閲覧に使用する。

 PhotoWalkerは、メニューバー、サムネイルウィンドウ、編集ウィンドウの3ペイン構造となっている。作業は、

  1. サムネイルウィンドウに写真をインポート・並べ換え
  2. 編集ウィンドウで2枚の写真の重なり合う部分を4点でリンク指定
  3. 保存、またはインターネットに公開できるようにパブリッシュ

 という手順になる。重なり合う部分を4点でリンク指定し、モーフィング処理することで、あたかも2枚の写真がつながっているかのような効果を出すわけだ。4点は、窓や建物、絵画のような目印となるものを選ぶとわかりやすい。


PhotoWalkerの画面。メニュー、サムネイルウィンドウ、編集ウィンドウの3ペインで構成されている


サムネイルウィンドウから選んだ2枚の写真の重なり合う部分を4点でリンク指定する

 ちなみに、写真の切り替え効果には「左端を綴じる」なども用意されている。「左端を綴じる」は2枚の写真の左端を糊付けし、あたかも横書きの書物のように写真をめくれるようにしたものである。モーフィングのような空間的な表現はできないが、書物を画面上でめくっているような独特の表現が可能だ。

[美崎薫, ITmedia]

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