News 2003年7月23日 11:59 PM 更新

異業種の参入相次ぐキャラビジネスは「イケる」のか? TCS2003レポート(2/2)


前のページ

 聞けば同社はアニメ・ゲームを題材にした情報番組や声優が出演する番組を制作しており、その多くは東京のラジオ局にも提供しているという。ラジオ番組内で制作した声優・アニメ・ゲーム関連のグッズは人気が高いとのことだった。キャラビジネスを狙う出展ではなく、番組の販促が主目的のようで、「本業」への直接的なアプローチであるところが他とは違う。

 大別すると、出展社は以下に分類できる。

  1. 従来からの「本業」(東映アニメ、コナミなど)
  2. 異業種からの参入(直接参入:イーコンテクストなど 関連会社経由:NTTデータコンテンツプランニングなど)
  3. 「本業」への販促、あるいは派生業務(ラジオ大阪など)

 2の企業群においては特に、投資としてキャラビジネスが有望だとの認識が前提だろう。投資効率が重視される中での選択だ。1の企業群が持つノウハウやコンテンツ資産をベースにした行動でもなく、また3の企業群があくまで既存ビジネスへの指向のなかで行う行動とも明らかに違う、「新しく拡大してゆく」ベクトルには、どれほどの可能性があるのだろうか。

果たして「キャラクタービジネス」は参入しやすいのか

 ゲーム・アニメのキャラ人気が高まれば、これを利用した派生ビジネスが可能となる。この手法が定着したTVアニメの場合は逆に、派生ビジネス自体を目的に作品が存在しているといっても過言ではない。6年連続でこのイベントが開催され、例年とほぼ同じ5万人以上が来場したという事実も消費者の規模を証明している。方法論と市場は確認できている状態にある。

 新規参入が相次ぐ理由として、ゲーム・アニメの市場規模と、TV地上波のゴールデンタイム進出よりは参入障壁が低いことが挙げられるだろう。さらにアニメ・ゲームの制作は資金があれば簡単といえるほど業界構造が整理されている。

 またキャラビジネスで企業名がブランドとして認知されているのはほぼディズニーのみ。「萌え」系では、シリーズタイトルやキャラを描いたクリエイター名などのインパクトに企業ブランドは及ばない。つまりある程度メジャーな原作マンガやクリエイターを確保できれば、必要なのは資本だけとも言える。あるいは「いま人気のあるコンテンツのスタイル」を似た絵柄で作れば低コストでリリースすることも可能だ。

 参入しやすいのか? といえばイエスだ。実際に参入した各社の動きは活発だ。だが新規参入組は老舗各社にとって脅威になりえるのか? 新規参入組は成功にたどりつけるのだろうか。行く末には何があるのか。

変わらない来場者数と縮小した会場規模

 エンターテイメント業界で「誰もが買った」メガヒットが出なくなって久しい。「消費者のし好が細分化したためでは」という分析も定着したと思われる。ただカテゴリー内での細分化は進んでも、全体としては成長が続いている。TCS2003での異業種参入組のチャレンジは、業界に活気がある証明と見ることもできる。

 だが来場者の数は変わらない一方、会場規模も出展社数も減少している。つまりこの来場者規模では各社のビジネスを支え切れない状況があるのではないか、という見方もできる。出展社も大手企業は網羅されていない。

 その中で出展していた東映アニメは低年齢層向けに強力なコンテンツを持ち、ブースには子どもの姿が途絶えることがなかった。またコナミのブースでは同社ゲームキャラのグッズ物販に行列ができていた。その横のステージでは同社ゲームのテーマソングで盛り上がる。業界を代表するこの2社は本業としてキャラビジネスを展開する企業の「迫力」すら感じられた。


子どもの姿が途切れなかった東映アニメブース

ビジネス規模と「本業」の迫力

 新規参入企業は、「萌え」といった細分化した好みを狙うことでビジネス化をもくろんでいるのかもしれない。だが新規参入組の行く末が東映アニメやコナミの規模になるとは考えにくい。ターゲットが細分化されている分、成功してもその規模は限られる。

 新規参入組の多くは「萌え」系で進出しており、それはこのカテゴリーが大手にとって隙間領域だからだろう。アダルトコンテンツとも密接に関わりがあるため、大手は直接参入はしづらい。結果として市場規模の小さい袋小路に向かっての異業種参入であり、大手にとってはチャレンジャーではないのかもしれない。

 異業種が参入する際、まずはニッチからというのは常套手段ともいえる。だがそれは規模を望まずに適正な規模を維持しつつ存在していくための手段だ。「それでもいい」というなら、もはやチャレンジャーではない。上手く小さく利を獲得するための手段に過ぎないコンテンツが増えるのでは、海外でも評価が高い「ジャパニメーション」やゲームの評判をも落とすことになりかねない。アニメ・ゲーム業界の“アタリショック”もありうるだろう。

 ラジオ大阪のような企業のしたたかさは別として、少なくとも新規参入組のブースから迫力は感じなかった。もちろん今の段階では各社もまだこれからなのかもしれない。それが本業化していくのを、楽しみに見守る時期なのだろう。

 どのような業界でも、新規参入組が新風を吹き込み再活性化したケースはある。チャレンジャーが存在する状態は、老舗が寡占を続ける閉塞より何倍もましな状態といえる。だがそれを本業としてきた老舗の力は強大だ。果敢に挑むチャレンジャーに期待したい。

[絵本大, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 2/2 | 最初のページ