News 2003年7月29日 10:00 AM 更新

AMIBIOS8――BIOSの新しい可能性(2/2)


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 極端な話、サウスブリッジとノースブリッジは必ずしも同じメーカーのチップにする必要がない。ところが、多くの場合、そうなっているのは、多様な組み合わせを試すためにBIOSをイチイチ書き直す負担があまりに大きいことが一因だ。

 だが、eModuleを採用したAMIBIOS8では違う。これまでサウス、ノースでA社製品を使っていたが、ノースでB社を使ってみようという場合、ノースのA社のモジュールだけを削除してB社のモジュールを組み込むという形でBIOSを“作り直す”ことができるのだ。

 もちろん、こうした場合、ノースとサウスのインタフェースの仕組みが違ってくるので、若干のすり合わせ作業は必要になる。ソフトウェアである以上、あるモジュールを削除して別のモジュールを追加したらそのまますぐに動くというほど、簡単なものではない。だが、こうしたモジュール構造を採ったことで、エンジニアの開発負担は従来と比較にならないぐらい軽減される。

 さらに、同社ではこういったBIOS開発のために「Visual eBIOS for Windows」というグラフィカルなユーザーインタフェースを持つ開発環境を提供している。


グラフィカルなBIOSの開発環境「Visual eBIOS for Windows」

 BIOS開発というと、真っ暗な画面の中にひたすらコードを打ち込んで、「動いた」「まだ動かない」とやっていたものだ。そんな時代のことを覚えている世代から見れば、これは夢のような話だろう。前述のモジュールの組み換え作業はもちろん、コンパイルやPOST(power-on self test)中のフロー管理などの作業もすべてこのツールの中で行える。

 この仕組みの最大のメリットは、新しいプロジェクトが立ち上がったとき、過去の資産=「これまで作ってきたソース」をそのまま生かせるということだ。過去の資産を可能な限り生かしながら、新しいプロジェクトに不要なモジュールだけを落とし、必要なモジュールをAMIから購入して組み込む――こういったBIOSの開発手法が可能になるのである。これは長期的に見て、メーカーの製品開発の利便性・生産性の面で大きく寄与するものだ。

 誤解を恐れずに言えば、メーカーにとってBIOSの開発は、うっとうしい、できるだけ早く済ませたい作業だろう。BIOSは絶対スクラッチで書きたいという奇特なエンジニアを除けば、BIOSを書く作業をこれだけ軽減してくれるモジュラリティとそれを支える開発環境の存在は見逃せないはずだ。

 では実際にメーカーの開発者たちはそれをどう評価しているのだろうか。

 「AMIBIOS8を採用したことで、デバイス仕様の変更や拡張をより大胆に行うことが可能になりましたという声をお客さまより頂きます。特に拡張性という意味においては、過去に開発したハードウェアの遺産を踏襲しながら、常に新たな拡張の可能性を追求できることによって、お客さまの開発推進に少しでも寄与させていただくことがわれわれの喜びです」(平岡氏)

 「IRQの割り当てやルーティングも、これまでは自分の頭でイメージして線を引いていたでしょう。それがGUIベースで構築できるようになったということも、好評ですね」(同社ソリューション開発部開発企画の長友洋介氏)


ソリューション開発部の長友洋介氏

 「(PCメーカーなどの場合)あらかじめ載せるボードの構成なども決まっているので、どこに何を差すのかもあらかじめ決まっています。それに一番都合のよい引き方を、その段階で設計してしまうということができるんです。最近では、ルーティング一つ取っても、PCI BIOSで規定されているルーティングもあれば、MSのルーティングがあり、ACPIのルーティングもあります。この三つのルーティングテーブルを(Visual eBIOS上で)処理できます」(同)


デバイスの結線管理もPCIウィザードでグラフィカルに作業できる

情報家電、携帯電話、産業機器……BIOSの可能性は広がる

 BIOSというとPCというイメージが強いが、最近ではPCと家電などとの融合が進み、見かけは家電だが中身はPCというものも少なくない。言い換えれば、これらにはマザーボードが搭載されており、BIOSが必要――ということになるわけだ。

 「ユビキタスのコンセプトを具現化する未来家電においては、記録やネットワークといった、いままでPCが果たしてきたアーキテクチャーを継承し、かつ発展させていくことになります。BIOSは従来のデバイス初期化やPOST処理だけでなく、セキュリティやデータリカバリーといった新たなソリューションを提供していく使命があります」(平岡氏)

 同社で現在重視しているのは、組み込み系のBIOSだという。「PC開発に従事されてきたお客さまが、いかにBIOS開発に苦心されてきたかをAMIはよく存じ上げているつもりです。だからこそ、こうした分野において夢のある商品開発にBIOSが必要とされているのであれば、より簡易で、より親身な、そしてなによりも可能性に満ちたソリューションを提供していきたいと考えています」(同氏)

 コモディティ化と標準化が進んで、コンシューマーPCではBIOSの存在感が薄くなっている。それに対して、こうしたデバイスは、多品種で、機能の違いも大きい。情報家電のように日進月歩の分野もある。これらのデバイス開発で、BIOSを以前のように毎回イチから書いていたらたまらないだろう。

 いや、こういった分野の開発者は、元々がPC畑ではないケースが多い。真っ黒な画面に向かってコードを書く……なんて想像しただけで気分が重くなってくる人も多いに違いない。モジュラリティとグラフィカルな開発環境で、BIOS開発の負担を軽減するというAMIBIOS8が活躍できる下地がこうして整いつつある。

 気が付いたらAMIBIOSだった――エンドユーザー、特にかつてのPC用BIOSの黄金期を知る古手のPCユーザーから見れば、思わぬところで今後、AMIBIOSに触れる機会が増えることになるかもしれない。

関連リンク
▼ アメリカンメガトレンド(日本法人)
▼ AMIBIOS8の情報
▼ AMIBIOS8の情報(英文サイト)

[中川純一&北川達也, ITmedia]

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