News 2003年7月30日 05:25 PM 更新

EFF、ファイル交換「要注意人物」確認ツールを公開

RIAAはP2P経由の違法ダウンロード告発を大々的に始めているが、EFFは自分がその標的になっているかどうかを確認するツールを提供し始めた。

 インターネットを使ってファイル交換を行い、全米レコード協会(RIAA)からの訴訟に脅えている人たちは、自分たちのIPアドレスをRIAAに知られているかどうかを確認することができる。

 Electronic Frontier Foundation(EFF)が提供する新しいウェブベースのツールを使えば、RIAAがISPに送った数百通の召喚状に書かれたアドレスと名前のリストの中に自分が含まれるかどうかを、自宅のIPアドレスやファイル共有サービスのユーザー名でチェックすることができる。

 7月25日に公開されたツールはウェブ上のプログラムで、KazaaやGroksterといったファイル共有サービスで使っているユーザー名やファイル交換に使ったシステムのIPアドレスを入力するようになっている。

 このページはRIAAの召喚状に掲載されていたファイル交換者のデータベースに接続されていると、EFFの上級知的所有権担当弁護士のフレッド・フォン・ローマン氏は説明している。

 ここで名前やアドレスを入力して、リストに該当している人は実際の召喚状の電子コピーへのリンクを受け取る、と同氏。

 このツールにより、ファイル交換を行い、召喚状の対象となっている人はすぐに行動を起こすことが可能になると、ローマン氏は述べる。

 自分の名前がリストになければ、自分は訴えられないという「安心感」を得ることができるとEFFは述べている。

 RIAAの広報担当者は電子メールで寄せたコメントの中で、EFFが過去においてオンラインプライバシー保護を訴えていたにもかかわらず、このようなツールを提供するのは奇妙なことだと述べている。

 しかし、EFFのツールはRIAAに対して問題を起こすわけではなく、この団体の基本メッセージを明確にしているとRIAA広報は主張する。

 「これまでわれわれが主張していたことがまたもや実証された。P2Pネットワーク上で違法に音楽を『共有』していると、匿名ではいられない、ということだ」

 RIAAが提出している召喚状の数が膨大であるため処理に時間がかかり、RIAAが出している召喚状の数と、公開されEFFデータベースに入っている対象者の数には隔たりがある、とフォン・ローマン氏。

 EFFによれば、RIAAがISPに提出した召喚状はこれまでに1000人近くに上るが、一般にアクセス可能なのは300人にすぎないという。

 RIAAは6月、個人のファイル交換者を対象とした「数千件の訴訟」のための証拠集めを開始した。

 当時、RIAAはP2Pネットワークをスキャンするソフトウェアを使い、訴訟の根拠となる証拠を集めると説明していた。

 RIAAが召喚状を送るパターンを見分けるには時期尚早だが、RIAAは同団体が権利を有し、オンラインでの配布を認めていない楽曲5〜10曲の名前を挙げていることが多いとフォン・ローマン氏は述べている。

 ダウンロードしている人よりも、ファイルをホスティングしている人の方がターゲットになっており、RIAAはKazaaのようなP2Pネットワークのいわゆる「スーパーノード」を狙っているようだと同氏。

 スーパーノードはP2Pネットワークのバックボーンとなるマシンのことで、広帯域のバンド幅、コンピュータの処理能力を持ち、長時間オンラインになっている履歴を持つ。

 RIAA広報は対象となるファイル交換者に関する戦略について、コメントを拒否しているが、「かなりの数の著作権付き音楽ファイル」を提供もしくは共有しているユーザーをターゲットにしていると述べている。

 1998年に成立したデジタルミレニアム著作権法(DMCA)によれば、RIAAのような著作権所有者はインターネット上で自身の著作権を強制するために直接召喚状を送り付けることができると定めている。

 DMCAが成立する前は、召喚状を発行できるのは裁判所だけで、召喚状の発行には厳しい条件が付けられていた。現在では、RIAAは2ページの手紙に信義誠実の原則に基づき著作権が侵害されたことに対する召喚状を個人宛に送付する旨を記載し、提出するだけでいい。それ以外の証拠や侵害の証拠は不要であるとローマン氏は説明する。

 Verizon Internet Servicesは7月に音楽ダウンロードの容疑者4人の名前を引き渡した。同社は容疑者の名前を知る権利を持つとする音楽業界の主張に異議を唱えていたが、Verizonの主張は退けられた。

 RIAAによれば、ISPは「対応してくれている」というが、最新の召喚状に対応した、新たな対象者が提出されているかどうかについては口をつぐんでいる。

 RIAAは8月末から9月初めにかけてP2Pネットワークで収集した情報に基づき「数百件の訴訟」を起こす予定であるとRIAAの広報は述べた。

 しかし、これは訴訟の手始めにすぎない。広報担当者によれば、法的手続きと並行して、将来の訴訟に向けた情報収集は行われているという。

 「これが違法行為であるという、われわれの主張が行き渡るまで、訴訟を継続する」とRIAA広報。

 EFFは検索ツールに加え、US Internet Industry Associationや他の団体と共同で、www.subpoenadefense.orgというサイトを立ち上げた。このサイトでは、個人が提訴から自分を守るための情報が提供されている。

 EFFはRIAAの標的となり身を案じている人に対し、P2Pネットワークへのアップロードのホストになることをやめるよう勧めている。起訴されることが分かった人は、弁護士に対応を相談することを勧める、とローマン氏は述べている。

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[Paul Roberts, IDG News Service]