News:ニュース速報 2003年8月4日 08:47 PM 更新

「知財保護に名を借りた不当な著作権強化」 ARTSが政府計画を批判

中古ゲームソフト販売の業界団体・テレビゲームソフトウェア流通協会(ARTS)は8月4日、政府の知的財産戦略推進計画を「不当な著作権強化につながる」と批判する声明を消費者団体などに送付した。

 中古ゲームソフト販売の業界団体・テレビゲームソフトウェア流通協会(ARTS)は8月4日、政府の知的財産戦略推進計画を「不当な著作権強化につながる」と批判する声明を消費者団体などに送付した、と発表した。中古ゲーム訴訟で敗れたソフト会社の“敗者復活戦”に警戒しつつ、音楽CDと書籍の保護方針についても消費者の利益が考慮されていないと指摘している。

 ARTSが発表した声明は「知的財産の保護に名を借りた不当な著作権強化を懸念する消費者への問題提起について」。

 政府の知的財産戦略本部(本部長・小泉純一郎首相)は7月、知的財産保護政策の指針となる「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」(知的財産戦略推進計画)を決定した。同計画では「コンテンツビジネスの飛躍的拡大」について1章を割き、ゲームやアニメーションなど世界で高い評価を受ける日本製コンテンツの保護を打ち出している。

 ARTSは同計画のコンテンツ保護策について「世界に類を見ない情報流通につながる著作権の強化が企図されている」と批判。「書籍貸与権」と「レコード輸入権」、ソフトの中古問題について反論を展開している。

 書籍貸与権は、現在は認められていない書籍に貸与権を与えるもの。レンタルからの保護が目的で、特に漫画本をねらったものとみられている。ARTSは(1)コミックレンタル店は非常に少ない、(2)返品制をやめて流通の各段階で自由な価格設定を認めるべき、(3)WIPO(世界知的所有権機関)の著作権条約では、商業的貸与権はコピー問題が発生しやすいプログラムやレコード、ビデオなどに限られており、書籍に認めると国際標準と均衡を欠くおそれがある──としている。「むしろプロテクトがかかったゲームソフトやCCCDは貸与権から外してレンタル利用の拡大を図るべき」とも提言した。

 レコード輸入権は、輸入を許諾する権利を著作権者に与えるもの。アジアから邦楽CDが逆輸入されて割安で販売されているのに対応するねらいがある。これに対しては(1)CDに再販を認めているのは日本だけで、邦盤CDは高額、(2)これに消費者は邦楽・洋楽とも割安な輸入盤を購入することで対抗しており、輸入権は消費者に高額な支出を強いる、(3)WIPO著作権条約では輸入権は否決されている──と指摘した。

 同計画の「ゲームソフト等の中古品流通の在り方」については、「穏やかな表現ながら、中古売買に対しメーカーに報酬請求権を付与しようとする動き」と見る。ARTSはゲームメーカー側と中古ゲーム販売をめぐって争い、最終的に勝訴した経緯がある(関連記事を参照)。「裁判に負けたから法改正で、というのはごう慢であり、司法への愚弄」とメーカー側の動きを非難した。

 ARTSは同計画に消費者の意見が反映されていないとし、著作物の利用者として法改正論議に加われるよう、消費者団体に働きかけを要望している。



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関連リンク
▼ テレビゲームソフトウェア流通協会
▼ 政府知的財産戦略本部

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