News 2003年8月6日 09:23 PM 更新

“液晶TV本格普及時代”に対応――DNPが大型LCD用カラーフィルター生産増強

大日本印刷(DNP)が、第五世代液晶ディスプレイ(LCD)用カラーフィルターの新工場を、日本と台湾の2拠点で同時に建設する。これによって同社は、大型LCD向けカラーフィルター市場では業界トップの生産能力となる。新工場建設の背景や今後の事業展開は?

 大日本印刷(DNP)は8月6日、大型液晶TV用などで需要増が見込まれる第五世代液晶ディスプレイ(LCD)用カラーフィルターの新工場を、日本と台湾の2拠点で建設すると発表した。新工場は、2004年第1‐2四半期の稼動を目指す。「新工場建設によって、DNPグループ全体のLCD用カラーフィルター生産能力は14インチ換算で月産470万枚に拡大し、大型LCD向けカラーフィルター市場では業界トップの生産能力となる」(同社)。同日、同社が都内で新工場の詳細や今後の事業戦略について語った。


新工場の詳細や今後の事業戦略について語る同社専務の高波光一氏(左)と、ディスプレイ製品事業部長の和田正彦氏(右)

 CRTからの置き換えが加速しているPC用モニタ向けや薄型化が進むTV向けに、LCDの需要は近年急激に増加している。それに合わせて、LCDのキーパーツの一つであるカラーフィルターのニーズも急速に高まっている。一般的なTFTタイプのLCDの仕組みを見ると、バックライトなどから出た光がTFT制御された液晶層を経て、最後にカラーフィルター層を通過して人間の目に届く。つまり、カラーフィルターの良し悪しが、色再現性や鮮明度などLCDの性能に大きく関ってくるのだ。

 LCDの生産現場でも、カラーフィルターの品質がTFTパネル全体の歩留まりに大きく影響するため、コストダウンや安定供給のためにも高品質なカラーフィルターは欠かせない。LCDメーカーの中には、カラーフィルターまで自社生産するケースも多いが、その分生産工程も増えるため、近年の液晶TVなど新規ニーズによる生産増加に対応できなくなっている。また、今後主流になる第五世代以降の大型LCDに対応したカラーフィルターまで内製するには、生産設備などへの巨額な投資が必要となる。このような理由から、カラーフィルター専業メーカーの本格的な第五世代対応が待ち望まれていた。

 同社専務の高波光一氏は、新工場設立の背景について「2ケタ成長をみせるLCD市場だが、価格低下、数量増加、液晶TV生産の本格化など、新しい流れが出てきた。これまでカラーフィルターを内製していたLCD各社も、外部調達へと方針変更し始めている。それに対して、第五世代に対応した生産ラインを持つカラーフィルタ専業メーカーは2社(2ライン)しかなく、今後の本格需要にとても対応しきれなかった」と語る。

 国内では、広島県三原市にある同社三原工場内に、約150億円を投資して第五世代LCD用カラーフィルター製造の新ラインを建設する。ここでは、生産能力増強に加えて、新技術の開発や、大型ライン導入による生産効率の向上を目指していくという。


広島県三原市にある同社三原工場内に第五世代向け新ラインを建設

 同社ディスプレイ製品事業部長の和田正彦氏は「三原工場の新ラインでは、1100×1300ミリサイズで月産4万シート、14インチ換算で月産64万枚の生産能力を持つ。製造プロセスの完全自動化によって生産性向上を図っているが、大型液晶TVに対応できる柱状スペーサー工程や、IPS/MVAといった広視野角技術など、さまざまな工程に対応できるフレキシビリティさも併せ持つ。2004年第2四半期から稼動予定」と、国内新工場を説明する。

 ただし、カラーフィルターを必要とするLCDメーカーの多くは、台湾や韓国に生産拠点を持つ。人件費や搬送の手間・コストを考えると、国内での生産展開は不利に思える。

 「LCDの高度化に合わせてカラーフィルターも高度化しなければならず、R&Dを含むインフラの強化は必須。国内工場での展開は、将来の第六世代につながる第五世代のラインが必要と認識したため。約1年前から生産ラインを試作して検証しており、コスト競争力などは確認済み。日本国内で十分対応できると判断した」(和田氏)


左が第五世代LCD向けカラーフィルター

 国内の新生産拠点が、将来の新技術開発も含めた展開を行うのに対して、台湾の新工場は、完全に第五世代LCD向けカラーフィルターの「量産」にターゲットを置いている。

 「汎用品の量産対応拠点とした台湾工場の新ラインでは、1200×1300ミリサイズで月産6万シート、14インチ換算で月産96万枚の生産能力を持つ。2004年の第1四半期には稼動させたい」(和田氏)

 台湾の新工場は、同社が出資している台湾のSinTekとのジョイントベンチャーである「南金光電(“金”の正字は金が3つ重なる)」に出資するカタチで建設される。出資金額は、現在両社間で調整中だという。この台湾新工場での生産分を合わせたDNPグループ全体のLCD用カラーフィルター生産能力は、14インチ換算で月産470万枚に達する。

 「中小型のLCD向けまで含めると、凸版印刷がシェアトップだが、12インチ以上向けとしては、月産470万枚は業界トップの生産能力。第五世代の大型LCD向けカラーフィルターは、台湾のLCDメーカー各社から1年半ほど前から打診があった。国内の新工場は、インクジェット方式など次世代の製造技術の開発拠点にもなる。すでに韓国や台湾のLCDメーカーでは、第六世代以降への検討が行われている。新技術開発を含め、高品質、高機能なカラーフィルターの安定供給を図っていきたい」(同社)

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[西坂真人, ITmedia]

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