News 2003年8月8日 02:41 PM 更新

「十二単」をまとったスウェーデン製日本語手書き認識ソフト(3/3)


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 誤認識が発生するという事実を否定するよりは、誤認識が起きた場合にいかにしてそれを効率よく修正・訂正できるかを考慮し、そのための「入力のしやすさ」を追求することが、限られたリソースで実用的なアプローチをする上でのキーになると思うからです。文字が書かれた同じ場所で認識文字を表示し、修正も同じ場所でできるようにデザインされているのも、視点移動を少なくし、効率のよい入力を実現するためです。

 具体的に言えば、Decuma Japaneseで使用されている入力枠ですが、これは日本人が子供の頃に書き方の練習を行ったあの枠からきています。Decuma Chineseで使っている枠も、中国にある同じような用紙をかたどったものです。書くという行為になじみ深いものを連想させるようにデザインされているわけです。

 認識文字の候補が9個のマスになっているのも、中国古来の書道学習法である九宮格(補助線の入った9個のマス目)をイメージしていますし、紙がめくれたようなアイコンは下に何かがあってめくりたくなるような感じですが、これは日本の十二単(ひとえ)を背景にデザインされています。

 同じような文字を判別するために、文字種によって背景の色を変えるなどの工夫も行っています。

 このように、GUIのデザインに関しても使いやすさや効率の良さもさることながら、各国ごとのローカライゼーションをかなり綿密に行っているわけです。

 われわれが、手書き文字認識はエンジニアリングだけではなくヒューマンスタディ(人文学)だというのも、このような理由からなのです。


書道の九宮格からデザインされた漢字候補欄


マス目の右下には裏に何かが隠れているように見えるため、ついめくりたくなる。これは十二単(じゅうにひとえ)を参考にしたという。


左にある数字の「0(ゼロ)」と右のラテン文字の「O(オー)」との違いは背景色の違いで判別できる

――認識率はかなり高いようですが具体的な数値などはありますか? また、これからも認識率は向上するのでしょうか?

 認識率自体は特に公表していませんが、継続的に向上しています。ただ、認識率については非常に高いレベルにまで到達していると自負していますし、そう評価いただいていると思います。

 認識率を上げるために、それぞれの国へ行き、データ収集やテストを行っていますし、エンドユーザーやOEMメーカーからのフィードバックも頂いているので、それらをもとに認識率を向上させる努力も行っています。具体的には、その情報を元にデータベースを更新させることが多いですが、エンジン自体に小さな変更を加えることもあります。

――現時点ではPocket PC用とPalm5用だけのようですが、今後プラットフォームを拡充される予定などはあるのでしょうか?

 PDA等のモバイル端末向けのプラットフォームの拡充はしていきたいですし、現在、スマートフォン向けのものも開発中です。

 また、京セラがJavaプラットフォームのPDAである「PocketCosmo」の日本国外向けのモデルを開発中ですが、それにDecumaの手書き認識ソフトを搭載する予定です。発売時期などに関してはオープンにできませんが、遠からず市場に登場することと思います。


 手書き文字認識技術は、PDA向けに限らず研究が盛んに行われ、それなりに面白い分野ではある。だが、その割にあまり話題になることがないように思う。これは、ユーザー側にあまり選択する余地のないがない“バンドルされた製品”であるということも、一因だろう。

 しかし今回話をうかがったDecumaの製品は、(供給されていれば)既存のPDAに後から搭載することも可能だという。IMEがそうであるように、手書き文字入力も“自分で選べる”ような時代になってくると、いっそう面白くなるのではないだろうか。



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関連リンク
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[河野寿, ITmedia]

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