News 2003年8月8日 09:51 PM 更新

老舗カメラメーカーに課せられた「レンズ資産の活用」――“世界最小・最軽量”一眼レフデジカメ「*ist D」(1/2)

ペンタックスが、レンズ交換式一眼レフデジタルカメラ「PENTAX *ist D」を発表。“世界最小・最軽量”ボディを可能にした新技術は?一眼レフカメラのパイオニアである老舗カメラメーカーに課せられた使命とは?

 ペンタックスは8月8日、レンズ交換式一眼レフデジタルカメラ「PENTAX *ist D」(イスト ディー)を9月6日に発売すると発表した。「レンズ交換式一眼レフデジタルカメラでは世界最小・最軽量」(同社)という。610万画素CCDを搭載し、同社製を含むKマウント交換レンズが使用可能。価格はオープンだが、実売は20万円前後(ボディのみ)になる見込みだ。


レンズ交換式一眼レフデジタルカメラ「PENTAX *ist D」(イスト ディー)

 今年2月に発表された*ist Dは、当初6月中に発売するとアナウンスしていが、5月の発表で一部部材調達の遅れを理由に発売日を8月下旬に変更していた。

 満を持して登場した同社初の一眼レフデジカメの最大の特徴は、やはり「世界最小・最軽量ボディ」だ。

 他社のレンズ交換式一眼レフデジカメが、両手で支えなければいけないほどのサイズで、重さも約700グラムから1キロ以上あるのに対し、*ist Dのボディサイズは129(幅)×94.5(高さ)×60(厚さ)ミリ、重さ約550グラム(電池別)と、片手で支えられる軽量コンパクトボディに仕上げている。「他社製品に比べてサイズで一回り以上小さく、質量比で20%以上コンパクトにできている」(同社)


「世界最小・最軽量ボディ」は、片手で支えられるほど

 小型軽量ボディを可能にしたのが、「ステンレス製のボディフレーム」と「電子回路基板の効率実装&小型化」だ。*ist Dのボディフレームには、1〜1.2ミリ厚の冷間圧延ステンレス鋼帯が使用され、電子回路には10層基板が採用された。

 「ステンレスは温度変化による膨張・収縮がアルミニウムやプラスチックに比べて少なく、CCDやペンタプリズムの取り付け位置精度の維持に役立つ。また、回路基板の小型化で発生するノイズを減らすために基板を分割し、ノイズ源を遠ざけている。通常、デジカメ回路用には4〜6層の基板が採用されるが、10層の回路基板を使うことでノイズを減らしながら回路の小型化を行った」(同社)


ステンレス製のボディフレーム

 一眼レフデジカメを快適に操作する上で、小型で軽量なボディは大きなメリットとなるが、同時にファインダーの良し悪しも一眼レフタイプには重要となる。*ist Dでは、専用のガラスペンタプリズムファインダーを新たに開発。視野率は95%で倍率は等倍に近い0.95倍と、銀塩一眼レフカメラ並みの大きくて見やすいファインダーを備えた。


新開発のガラスペンタプリズムファインダー

老舗一眼レフカメラメーカーに課せられた“レンズ資産の活用”

 *ist Dには、撮像素子に23.5×15.7ミリで有効610万画素のCCDが採用された。大型CCDを採用した最大の理由は、「ペンタックスレンズ資産の活用」。一眼レフカメラメーカーとして歴史の長さゆえに、交換レンズが多いのも同社製一眼レフカメラの魅力だ。

 「ペンタックスの一眼レフとしては、“レンズ資産の活用”が第一の優先項目だった。この資産を有効活用するには、マウントの共通化だけでなく、実用的な画角で既存のレンズが使えなくてはならない。*ist Dでは、35ミリ判換算で1.5倍の焦点距離と使いやすい画角を実現した。また、高画質に欠かせない階調表現とダイナミックレンジを得るためには、画素ピッチが広い大型のCCDが不可欠だった」(同事業本部マーケティング部商品企画部長の川野潔氏)

 *ist Dは基本的に、K/KA/KAF/KAF2マウントに対応した伝統の「Kマウント」レンズが装着可能。また、アダプタを使用することで、スクリューマウントレンズや中判カメラ 645/67用レンズも装着できる。


伝統の「Kマウント」レンズが装着可能

 この豊富なレンズ資産のうち、AFなど各種オート機能が使えるレンズは、絞りリングにA(オート)ポジションのある「FA/F/A」といったsmcペンタックスレンズシリーズと、銀塩*ist向けに開発された「FA-J」レンズ、そして新たに開発された一眼レフデジカメ専用の「DA」レンズだ。Aポジションのないマニュアル機向けレンズなどは原則として推奨してはいないものの、カスタムファンクションの設定変更によって使用可能になるなど、レンズ選択の幅は広い。

 「*ist Dで使用できる(Aポジションのある)交換レンズは110種類。対応レンズのこれまでの販売本数も650万本に達しており、撮影目的や好みに応じたレンズが選べる。またデジタル専用のDAレンズは、イメージサークルを*ist Dに合わせた。デジタル専用レンズの利点は、35ミリ判レンズより小型軽量化ができ、コストパフォーマンスが追求できるところ。望遠系は35ミリ用既存レンズ群、広角系はDAレンズというのがペンタックスの提案。DAレンズのラインアップも、広角系を中心に求めやすい価格で提供していく」(川野氏)


超望遠からフィッシュアイまで、*ist Dのレンズ選択の幅は広い

 今回は、ボディと同時にズームレンズ「smc PENTAX-FA J ズーム18‐35mmF4‐5.6AL」(*ist D装着時、35ミリ判換算で27.5‐53.5ミリ、オープン価格)が発売されるほか、一眼レフデジカメ専用レンズとして「smc PENTAX-DA ズーム16‐45mmF4 ED AL」(同24.5‐69ミリ、価格や発売時期は未定)が用意される予定。

レンズ交換式一眼レフデジカメは長年の悲願

 ペンタックスといえば、一眼レフカメラの草分け的存在だ。1952年、旭光学工業時代に国産初の35ミリ一眼レフカメラ「アサヒフレックスI」を発売して以来、一眼レフカメラに“国内初”“世界初”を冠した最先端技術を次々と搭載し、それが現在の一眼レフカメラの基本技術になったものも多い。

[西坂真人, ITmedia]

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