News:アンカーデスク | 2003年8月11日 11:27 AM 更新 |
メガピクセルは必要か
デジタルカメラから端を発したメガピクセル競争は、DVカメラの世界にも多大な影響を及ぼしてきた。静止画と違ってビデオでは、テープに記録する時点での画素数がばっちり決まっている。720×480ピクセル。単純にかけ算すれば、34万5600画素である。従って、動画だけを考えれば、CCDの有効画素数はだいたい34〜35万画素あれば足りる。本来ならばビデオカメラにメガピクセルCCDなど必要ないのだ。
しかしそれでもビデオカメラがメガピクセルを搭載する理由は、静止画撮影のためである。かつてまだビデオカメラがメガピクセルではない頃から、静止画撮影という機能は存在した。だがVGAサイズの静止画が撮れたからといって、単にビデオが止まってるだけのものに、これといって使い道があるわけがない。
そこでビデオの静止画機能を何らかの役に立たせるために、成長著しいデジタルカメラに近づけようとしたわけである。その結果、CCDの画素数は、ビデオとしては破格の100万画素クラスを搭載するようになった。
しかし動画の方から見れば、CCDの高画素化はほとんどメリットはない。例え100万画素あったとしても、ビデオを撮るときはその真ん中あたりしか使ってないからである。ただでさえ1/4インチぐらいしかないCCDの、さらに一部しか使わないとなると、受光面積は相当小さくなる。
受光面積の縮小化は、いろいろな問題を引き起こす。例えば被写界深度が深くなって、どこでもピントが合うようになる。ピントが合うのは単純に考えれば良いことだと思われがちだが、手前のものも奥のものも分け隔てなくピントが合っている映像というのは、奥行き感がなくぺったりした映像になる。
近頃ではアニメやCGでさえ被写界深度を擬似的に表現して、リアリティを出そうという動きになってきているが、実写のほうはまったく逆のベクトルになっていいるというのは、なんとも皮肉な話だ。
もう一つの問題は、レンズの画角が狭くなってしまうことである。最近ではWide端でも「f=50ミリ」しかないなんてビデオカメラがザラにあるが、人間の目がだいたい「f=40ミリ」前後であると言われていることから考えれば、目視よりも狭い範囲でしか撮れないカメラなんてーのは、現実離れしていると思えないだろうか。
生き返るWideモード
ビデオにはあんまりいいことがなかったメガピクセルCCDだが、ここ2年ぐらい前から徐々に事情が変わってきた。100万画素クラスのCCDを使って、ビデオの撮影時も多画素でオーバーサンプリングしておき、それを720×480に縮小することでクオリティを上げようとする動きになってきたのだ。
オーバーサンプリングしたものを縮小するという技術は、CCDの画素数がある一定数を上回らなければ実現できない。720×480という絶対のピクセル数に対して、中途半端な倍数のピクセルから縮小すると、不自然な折り返しノイズが出てしまうからだ。
だがさらにこの夏あたりからいよいよビデオカメラも200万画素へ突入することで、もう1ステップ上に昇ろうとしている技術があることは、あまり知られていない。
画素も200万画素ぐらいまで多くなると、オーバーサンプリングしてもまだ余る。そこで各メーカーが一斉に動き出したのが、この余った画素をWideモードで使うという方法だ。
読者の皆さんは、レンズ付きフィルムでもなんでもいいが、フィルムカメラのパノラマモードを使ったことがおありだろうか。あれって実際には横に広く写るのではなく、通常の4:3のフィルムに対して単に上下を黒くマスキングしただけなのはご存じだろう。これをプリントする段階で横長の紙にデカく焼き付けるのである。したがって解像度の面ではノーマルモードに劣ることになる。
ビデオカメラのWideモードも、実はこれと同じことが長年行なわれてきた。詳しくは図版を見てもらうとして簡単に説明すると、Wideモードでは単純に上下を切っているだけで、それをWideテレビに拡大表示する。従って解像度的には、4:3モードよりも“拡大した分”だけ悪くなっているのである。
[小寺信良, ITmedia]
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