News 2003年8月12日 02:42 PM 更新

どこでも聴ける・見られるデジタルTV――「モバイル放送」を試してみました(1/2)

モバイル放送に先ごろ、デジタル衛星放送の予備免許が交付され、2004年の本放送に向けた実際のテストが始まった。早速、同社のデモ車に同乗、トンネル内などでもどこまで鮮明な画像が得られるのか、体験してみた。

 モバイル放送は「日本中でどこでも聴ける、見られる放送サービス」というキャッチフレーズのもとに、デジタル衛星を使用して日本全国で視聴することができる放送サービスである。  7月25日にはモバイル放送にデジタル衛星放送の予備免許が交付された。そこで、さっそく同社のモバイル放送デモを見学してきた。残念なことに、取材時点ではまだ衛星は打ち上げられていないので、“ギャップフィラー”という再送信設備エリア内での電波を受信しながらのレポートとなる。

モバイル放送とはなにか?

 まず、モバイル放送サービスとはどんなものかを説明しよう。

 モバイル放送は、静止衛星を利用して全国どこでも同じマルチメディア放送を見られるようにした自動車などの移動体向けの放送サービスだ。


今回のデモは図の不感地帯をカバーするギャップフィラーがサポートするエリアで行われた。正式な衛星が打ち上げられるまでの間は宇宙通信のスーパーバードを借用して実験を行っている。

 モバイル放送は、地上放送センター屋上にある直径7.6メートルのパラボラアンテナよりKuバンドのアップリンク(14GHz帯)で、空の上の静止衛星(MBSAT)に向けて送信される。データを受け取った衛星は、周波数をSバンド(2.6GHz)に変えたのち、今度は地上に向けて電波を降り注ぐ。この放送は、BS/CS衛星放送と同様にデジタル電波で行われる。衛星の打ち上げは今年秋に米国フロリダ州のケープ・カナベラルから行われる予定だ。

 モバイル放送用衛星には直径12メートルの大きな送信アンテナ(BSでは1〜3メートル)を用い、電波出力1215ワット、地上での電波強度は67dBW(BSは100ワット程度、地上電波強度は50dBW程度)という大出力で放送される。

 そのため、受信側は衛星放送の受信でありがちなパラボラアンテナ設置が不要となり、ラジオのように無指向性小型アンテナのみで視聴できることになる。さらに、衛星がビルの陰となる首都圏などでは衛星からのKuバンドのダウンリンク(12GHz帯)を受信して中継するギャップフィラー(再送信設備)で、電波の届かない不感地帯をもカバーする。

 このギャップフィラーは半径1〜3キロの広範囲なエリアをカバーするため、効率的に配置されることになる。一方、受信端末側でも、直接電波のほか、反射電波など受信できる電波すべてから品質の良い順に最大で12本選び、1本に合成することによって受信品質を高めるような工夫がなされている。

どのようなコンテンツがあるか

 本放送で流される番組は、MPEG4による圧縮画像を映像9チャンネル、音楽などの番組55チャンネル、さらにプレミアムチャンネルとしてデータ放送が準備中である。現在のところ番組内容としてはリアルタイムなニュース、交通情報、エンターテイメントのスポーツ中継、音楽、それに特定ユーザー向けの証券情報、公営競技情報などがリストアップされている。衛星からの正式な電波は今年末に発信され、本放送は来年春の予定なので、それに合わせて番組内容も公開されるものと思われる。


予定番組リスト。この番組予定表では洋画、邦画は夜だけ、深夜は映像番組を休止している

大がかりなアンテナは必要ない

 モバイル放送を受信するためには、専用の受信端末が必要となる。この専用端末は、放送開始時に携帯型と車載型の2タイプを準備するようだ。車載用には各メーカにおいて、既存のカーナビユーザ向けにあとから設置できるチューナー型とカーナビ内蔵型やオーディオ機器内蔵型なども製品化されるとのこと。一方、携帯型では小型化、低コスト化、低消費電力化および端末デザインなどの検討がなされている。

 受信端末の映像は最大カーナビサイズ(7インチ)程度のモニターでできるよう、QVGA(320×240ドット)の解像度である。これは、地上波およびBS/CSデジタル放送と比較すると解像度が低いため、この端末を家庭の大きなテレビに接続するには不向きであろう。またPC、PDA、携帯電話などと連携した端末も各メーカーが計画しているようなので将来が楽しみである。

デモを見学してきました

 さて、モバイル放送を体験するため、同社のデモ用自動車に同乗して回ってみた。

 場所は東京・銀座にある同社より、JR有楽町駅付近から出発し、霞ヶ関入口から首都高速道路を利用して、天現寺出口で降り、その後南麻布の有栖川公園を回って戻ってくるルートである。

 この片道約35分のデモルートは、現状では衛星がないためギャップフィラー(中継局)3局が移動体をサポートする範囲となっている。正式に衛星が運用されれば、その電波が加わるので受信環境はさらに良くなるはずだ。

[後田敏, ITmedia]

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