News 2003年8月18日 07:56 PM 更新

PCアーキテクチャのゲーム機“Phantom”は成功できるか?

その存在自体が疑われていたこともあるPCアーキテクチャベースのゲーム機、Phantomのスペックが公開された。その機能、サービスについて同社首脳、アナリストが語る。

 ソニーとMicrosoftをライバル視しているフロリダに本社を置くベンチャー企業が、自社製コンピュータゲーム機の暫定スペックを公開した。

 このゲーム機、PhantomはPCアーキテクチャをベースにしており、ゲームはブロードバンドネットワーク経由で内蔵ハードディスクに取り込む。発売は2004年第1四半期を予定していると、開発会社であるInfinium Labsは明らかにした。同社はゲームショウで製品の詳細を発表する予定だったが、それをキャンセル。その後、自社のWebサイトで詳細情報を公開した。

 PhantomのプロセッサにはIntel製チップが使われるが、どのプロセッサが使われるかは特定していない。Infinium Labsは以前、2GHz以上で動作すると発表していたが、現在は3GHz以上で動作することになると修正している。本体には256MバイトのDDR DRAM、NVIDIA製グラフィックスカード、100Gバイト以上の容量を持つ内蔵ハードディスクが搭載されるという。

 このスペックは固定ではない。Phantomの特徴の一つに、技術の進化に従ってユニットをアップグレードできるというものがある。

 Phantomは光学ドライブは搭載しておらず、それがソニーのPlayStation 2、MicrosoftのXBox、任天堂のGAMECUBEと大きく異なる点だ。ハードディスクに問題が起きた場合にはユーザーは物理メディアがない状況に陥ってしまうが、Infiniumによればユーザーは購入済みのゲームは再ダウンロードできるという。ディスクドライブがいっぱいになれば、ネットワークサーバにゲームを保存し、ローカルディスク上に新しいゲームを置くことができる。

 PhantomはWindows XP Embeddedオペレーティングシステムを搭載。Phantom用のゲームはブロードバンド接続を使った独自のオンラインサービスからダウンロードされる。Phantomnetオンラインサービスはゲームコンテンツ、ソフトウェアデモ、オンラインゲームを提供する課金サービスで、現時点では月額9.95ドルを予定しているとInfinium Labsの最高マーケティング責任者であるデビッド・フレデリック氏は語った。

 ダウンロードされたゲームは現在のパッケージ化されたゲームと同等か、それよりも安く、ユーザーはゲームをレンタルすることも可能だとフレデリック氏は述べる。

 他のゲーム機メーカーと同様に、Infinium Labsは利益を得るのはハードウェアでなくソフトウェアによってだと考えている。これはコンピュータゲーム機メーカーにとっては古典的なビジネスモデルだが、多大なリソースを要求するものでもある。

 「Microsoftを見れば、この市場に参入するのが信じられないくらいに難しいということが分かるだろう」とIDCのコンシューマー製品担当アナリストであるシェリー・オルハバ氏は語る。「優れたゲームとデベロッパーがいくつか必要だ。一つか二つではなく、ある程度の数の優れたゲームを出していかなければならない」と同氏。

 Infinium Labsは別の方法でいくとフレデリック氏は述べた。

 「ソニーとMicrosoftはいくつかのタイトルで独占権を主張しているが、われわれは別の方法を取る。当社にとってはそのタイトルがXBox向けに作られたかどうかは関係ない。Phantom用のコンテンツ作成は簡単にする。ソニーやMicrosoftのように、ポーティングやSDKにロイヤルティーを課したりせず、SDKは事実上無償提供し、われわれのプラットフォーム向け開発に対してロイヤルティーを徴収することはしない」と同氏。

 他のプラットフォーム用に開発されたゲームだけでは不十分だろうとオルハバ氏は主張する。「あなたがゲーマーで既にPlayStation 2を持っているなら、わざわざ他のゲーム機を買ってMadden Footballをプレイしようとは思わないはずだ」

 オルハバ氏はInfiniumが提供するとしているアップグレードオプションについても懸念を示す。

 「ゲーム機は固定されたもので、共通したものである」と同氏。最初の年に開発されたゲームは5年間、使われ続ける。アップグレードできる機能を付け加えると、その方程式は変わってしまい、PCのようになってしまう」とオルハバ氏。

 フレデリック氏は、同社では米国限定のベータテストを10月から開始する予定だと話した。フレデリック氏によれば、同社はWebサイトで宣伝を始めて以来、4万本のアプリケーションをベータテスト用に受け取ったという。製品の販売は来年第1四半期に米国でスタートする予定で、ゲーム機本体の価格は400ドル程度になるという。米国以外での販売も予定されているが、スケジュールは決定していない。

 400ドルという本体価格はPlayStation 2とXBoxが180ドル前後であるのに比べ、高価で、オルハバ氏は高すぎると分析する。

 「ゲーマーは299ドルが分岐点だということを何度も実証してきた」と同氏。「この製品はとてもニッチ的なものになると思う。3社とも非常にうまく統制されており、キラープラットフォームとなっている」とオルハバ氏は語る。

 しかし、フレデリック氏は自社の将来について違った考えを持っている。

 「特に大きな競合があるとは考えていない。これはゲーム機であり、そこでは2つの巨人が争っているわけだが、われわれは静的なゲーム機ではなく、ダイナミックなプラットフォームとして差別化しているのだ」とフレデリック氏。

 Infinium Labsはここまでにいくつかの障害を乗り越えてきた。同社が最初にゲーム機開発を発表したとき、ゲーム関連のBBSは同社の計画に対する疑問であふれ、Infinium Labsが実在する会社かどうかを疑う意見も現れた。

 「はっきり言っておこう。Phantomは現実のものであるだけでなく、もうすぐ実際に登場する」とフレデリック氏。「本物でないと考えている人たちは、大きなショックを受けることだろう」と同氏は述べた。

[Martyn Williams, IDG News Service]