News 2003年8月25日 08:59 PM 更新

まず一歩を踏み出した電機メーカーの“グリーン調達”

電子情報技術産業協会(JEITA)が、エレクトロニクスメーカー各社の「グリーン調達」を推進する「グリーン調達調査共通化ガイドライン」を制定。部品・材料に含有する化学物質調査を共通化するこの指針について、説明を行った。

 環境に配慮した製品が注目されるなか、エレクトロニクスメーカー各社のエコロジー施策で「グリーン調達」という言葉をよく耳にするようになった。

 これはセットメーカーが、部品メーカーなどサプライヤーから製品に使用する部材を調達する際に、品質/価格/納期/サービスといった従来の選定基準に「環境配慮」や「安全」といった項目を加えて、“有害化学物質の使用抑制”や“リサイクルのしやすさ”といった観点で部品調達を行う仕組みのこと。エレクトロニクスメーカーだけでなく自動車メーカーなどでも、1997年頃からこのグリーン調達への取り組みが広まっている。エレクトロニクスメーカーの場合は、環境に影響を及ぼす恐れのある化学物質の使用状況などを評価・選択するシステムを指すケースが多い。

 電子情報技術産業協会(JEITA)は8月25日、「グリーン調達」の推進に関する記者会見を開催。JEITA内にある「グリーン調達調査共通化協議会」(JGPSSI:Japan Green Procurement Survey Standardization Initiative)の活動状況や、同協議会がこのほど制定した部品・材料に含有する化学物質調査に関する指針「グリーン調達調査共通化ガイドライン」の説明を行った。

 同協議会は、エレクトロニクスメーカーなどにグリーン調達調査に関する“業界標準”の構築を呼びかけて2001年1月に発足。旗振り役は、以前からグリーン調達に積極的だったキヤノンだった。当初は、キヤノンのほかNEC、ソニー、東芝など大手電機メーカー8社でスタートした。

 同協議会の古田清人議長(キヤノン グローバル環境推進本部環境企画部長)は「ヨーロッパの“RoHS指令”に代表されるように、特定の化学物質を制限する法規制が各国で多数存在する。これにしっかり対応していかないと、セットメーカーは製品を出せなくなってしまう。グリーン調達への取り組み自体は、1998年頃から各社が独自で活動を開始していた。だが“川上”の素材メーカーから、部品メーカーの一次/二次請けなどを経て、“川下”のセットメーカーに至る上で、化学物質に関する情報伝達がスムーズにいかないという問題を各社が抱えていた。これを力ずくで進めるよりも、みんなで協力して共通のフォーマットで調査した方が、今後に役立つとのことから、主旨に賛同する有志メーカーが集まった」と協議会発足の経緯を語る。


同協議会の議長でキヤノン グローバル環境推進本部環境企画部長の古田清人氏

 発足当初は企業のボランタリーで進めていた同協議会も、2002年4月から事務局をJEITAの環境・安全部に置いて運営管理を実施。JEITA移管後は、電気・電子機器メーカーだけではなく、部品・材料メーカーや日本プリント回路工業会なども加入し、現在は46社+3工業会で構成されている。

 同協議会では、グリーン調達においてメーカーが把握すべき化学物質群について、共通フォーマットで調査を行うことで、取引先の作業負荷を減らすとともに調査スピードと精度の向上を図ることを目的としている。

 「グリーン調達には、製品をいかに“環境配慮型”にしていくかという目的もある。環境への配慮は、製品の付加価値を高める。協議会の活動は、どういう部品が環境に優しいのかを調査する目的もある」(古田議長)。

 同協議会によって2002年3月にトライアル用のガイドラインがまとめられ、同年4月より準備のできたメーカーから順次トライアル運用を開始していた。

 環境負荷低減を目的にした環境配慮製品を供給することは、国内だけでなく国際的にも大きな課題となっている。同協議会によるグリーン調達共通化の活動は海外の業界団体にもいち早く伝わり、欧州メーカー約1000社が加盟している「欧州情報通信技術製造者協会(EICTA)」と、米国メーカー約600社加盟の「米国電子工業会(EIA)」が、調査フォーマット共通化を協同で進めることを提案。

 この欧州・米国の両業界団体のを交えた三極合意と、トライアルの結果をもとに、今年7月にガイドラインを改訂。同月22日に「グリーン調達調査共通化ガイドライン」として公開された。この“日本発”のグリーン調達に関するガイドラインは、現在グローバルスタンダードにむけて調整が進められている。

 日本でも、エレクトロニクスメーカー約650社が加盟するJEITAの後ろ盾ができたものの、実際に協議会に加盟している46社のほとんどがセットメーカーで、調査対象となる“川上”の部品・素材メーカーは大手のごくわずかだけという状況。グリーン調達の徹底には、一次の調査先から二次、三次、四次とサプライチェーンをさかのぼっての部品・材料メーカーの協力が必要なだけに、調査の共通化を図るガイドラインがいっそう重要となる。

 「.jgpという拡張子で作成される調査の回答データフォーマット(JGPファイル)は、CSVファイル形式になっており、各社各様のデータベースで簡単に活用できるようになっている。回答データに落とし込むためのアプリケーションツールも協議会で作成して、フリーウェアとして公開した。これにより、同じフォーマットで集計ができ、データがスムーズにサプライチェーンに流れていく。部品・材料メーカーにも協力を仰ぎ、世界各国のメーカーや業界団体とも議論して、グローバルスタンダード化していく」(古田議長)

関連リンク
▼ 電子情報技術産業協会(JEITA)
▼ JEITA環境・安全部

[西坂真人, ITmedia]

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