News:アンカーデスク | 2003年9月1日 10:55 AM 更新 |
夏らしくない夏休みを実家で過ごされた方も多いことだろう。筆者の実家は宮崎県だが、これだけ実家が離れていると、年老いた両親二人暮らしという環境が気になったりもする季節でもある。
妻の実家は東京・八王子の奥にあり、やはり両親の二人暮らしである。電車や車で行ける距離ではあるが、すぐに行ける距離でもないので、やはり様子が気になる。そんな折りも折り、妻の実家にもインターネットを引いたらどうか、という話が持ち上がった。
ことの発端は、義母がパソコン教室に通い始めたことだった。しかし以前から筆者は、インターネットを使って、老人介護とまではいかなくても、ちょっとお互いの顔が見られたり、様子を見たりするようなことができないものか、と漠然と考えていた。親というのは子供に心配させないよう、電話では元気そうに振る舞うもので、本当のところどうなのか、なかなか分からないものだ。
コンピュータやインターネットの使い道として、そういう方向性はアリだろう。今回の件はちょうどいい機会なので、われわれの両親世代にコンピュータやインターネットを使わせる場合、子供であるわれわれからどのようなアプローチが可能なのかを考えてみることにした。
シニア向けのPCとは
まず最初のハードルとして、PCをどうするか、という問題がある。国内メーカーのマーケティング担当者に聞くと、デスクトップPCのハイエンドモデルを購入していくのは、実は定年退職後の60〜70代が大半を占めるという。元々エンジニアだったり、写真やビデオなどに興味がある人が趣味として買っていくようだ。
こういう層は、元々自分で何かやろうというモチベーションを持っているので、本人が好きなものを買えば済むことだ。しかし使うのが母親だったり、機械類が苦手だったりした場合はどうだろう。
こういうケースは、機種の選択が難しい。まず、われわれが自作機など作ってあてがうのは、あまり良くないだろう。メーカー製と違って余計なものがないプレーンなマシンを作ることが可能だが、作った本人しかサポートできないのでは、なにかちょっとした問題があったときにいちいち実家に行くことになってしまう。それも一つのコミュニケーションだとおおらかに考えてもいいのだが、なんだか本末転倒の感が強い。
またサポートという意味では、自分たちが使っていた古いPCを与えるというのはマズい選択だ。これは筆者も実際に体験したので、よく分かる。OSのバージョンが古いため、いろんなソフトウェアのサポートが終了していたり、ウイルス対策が取れなかったりといったことが起こるのだ。このようなことは、遠隔地から電話で説明しても、らちが明かない話なのである。結局車を走らせて実家に向かうことになる。
古いPCに新しいOSを入れる、という手段もないわけではない。しかしこう言うとナンだが、年寄りだから遅くてもいいだろう、という考え方はトラブルの元だ。年寄りは意外に気が短いもので、スイッチを入れたらすぐ明かりが点くといったような、単純な動作に慣れており、動作を待つ、というスタイルに慣れていない。ついつい反応が遅いので何度もクリックしたり、起動が遅いから電源を切ってもう一度入れ直したり、といったことをしてしまう。
誤解のないように説明しておくが、筆者はこれらシニア特有の行動を揶揄(やゆ)しているわけではない。
人間というのは経験の動物なので、新しいものに対してはその経験によって不足している知識を補完しようとする。動作がおかしいときは一度切って入れ直すという行動は、テレビやビデオ、あるいは電話といった比較的シンプルな電気機器のあり方からすでに学習している。PCもまあ同じようなことだろうと類推して行動した結果だ。
言うなればこれはむしろ当然の行為で、それを許さないPCのほうがまだまだデバイスとしてこなれてない、ということなんである。
子供からすれば多少コストはかかるが、両親に送るPCとしては比較的新しめで安定しており、長期にわたって電話サポートをやってくれる国内メーカー製のものが正しい選択なのではないかと思う。かといって面白みもなんにもないビジネスモデルをあてがうのも考えもの。少なくとも興味を持って接して、もらえなければ元も子もないからだ。そのあたりのバランスが難しいところだ。
そのような条件をいろいろ考えたあげく、筆者が選んだのは、ソニーの「VAIO W」やNEC「VALUSTAR FS」のような、モニタ一体型のデスクトップ機だ。これらは元々は若者向けだったりファミリー向けだったりするモデルだが、シニアにもまずまず悪くない選択だろう。
理由は、全部が一体化しているのでセットアップが簡単なこと、フットプリントが小さく邪魔にならないこと、モニタが比較的大型で見やすいこと、単機能ならリモコンでも操作できること、などが挙げられる。そして最終的にはテレビとして使える、というのはちょっと言い過ぎか。
欲を言えば、最近の液晶モニタはどんどん高精細になっていくので、画面の拡大モードや、デカいフォントのデザインが一発で設定できる機能が欲しいところだ。
難解な料金システム
次の問題は、インターネットへの接続をどうするかだ。今までパソコンに縁がなかった家庭では、おそらく電話回線はアナログのままだろう。実家の義母が一番気にしたのは、インターネットを使っている間、電話がかかってきたら困る、という点だった。確かに父母の世代では、ケータイではなく一般加入電話への依存度が非常に高い。
[小寺信良, ITmedia]
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