News:アンカーデスク | 2003年9月8日 02:53 AM 更新 |
「見たら捨てる」は許されない
日本人はなぜテレビ番組を保存したがるのか。そのモチベーションとなる要素を筆者なりに分析してみると、おそらくまた見たいと思える番組が、再放送されるかどうか不明だからである。
ほとんどのユーザーがビデオレコーダーを使って録画するソースは、地上波放送であろう。例えばドラマや映画などは、人気が高ければまた再放送されたりDVDになったりする可能性はあるが、しかしその評価が下されるのは、放送終了後だ。放送しているそのときに、「これはまた放送するからそのとき見ればいいや」という判断は、視聴者にはできない。
だから、後から見直したりしないかもしれないが、とりあえず何かの形で保存しておきたいのである。
これがCSなどでは事情が若干異なる。というのも、CS局の多くが事業としているのは、過去の番組の再放送だからである。筆者がよく見るチャンネルとしてスーパーチャンネルがあるが、ここは四六時中スタートレックのどれかを放送している。全シーズンの放送が終わると、またしばらくして第一シーズンから放送が始まるのである。このように同じ番組が何回転もしているような放送形態では、よほどのマニアでない限り、それほどの保存欲は生まれてこない。
米国の放送事情もこれに似たり寄ったりである。日本とは再放送権のあり方が全然ちがうので、米国では地上波でもガンガン再放送をする。新作でも、ソープドラマなど評判が良ければ10年でも20年でも続く。ソープドラマとは、まあ言ってみればサザエさんの実写版みたいなもんである。こういうものを延々流し続けるような放送形態なら、保存欲はそれほど起きない。ただしその半面、新鮮味も低い。
コクーンにも、スカパー!に対応したモデルがある。「CSV-P500」がそれだ。本来チャンネルサーバというコンセプトは、スカパー!や米国のような放送形態に即した発想であったろう。
だがそれも、視聴時間が取れない場合はまた保存する必要が出てくる。今は見ている時間がないけど機会を作ってゆっくりまとめて見よう、と思った場合は、録画容量確保という意味でも、またコンテンツを移動させるという意味でも、リムーバブルメディアへの書き出しは必須となってくる。
期待はあってもタマがない
ではDVDが付いてさえいればいいのか、というと、そうとも言えない。「NDR-XR1」はコクーン初のDVD搭載モデルだが、これまでこだわってきた「おまかせ・まる録」機能を捨てた。番組情報はWEBから取るといった点では若干ユニークだが、そのメリットが生かされないまま、またDVDに保存するというメリットも訴求できないまま、といった印象を受ける。
かと思うと、今度はコクーンとは別ラインナップでDVD±RW(HDDなし)のレコーダー「RDR-GX7」を発売している(関連記事:ソニーが今、DVDデュアルレコーダを投入する理由)。
もともと初代コクーンの発売時には、いろいろなタイプ製品群の総称が「コクーン」である、とうたわれていた。だがこのRDR-GX7がなぜコクーンであってはいけないのか、という明確な理由が感じられない。単に作ってる部署が違うんです、ぐらいのことだろうか。このあたり、方針の迷走を感じる。
結果だけ見ると、ソニーはこれまで次世代レコーダーとして数多くのラインナップを輩出しながらも、DVDの相場を読み違えたため、市場からは完全に閉め出された形だ。
[小寺信良, ITmedia]
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