News 2003年9月18日 06:52 PM 更新

進化するCentrino――Intel、モバイル戦略の今後を語る(1/2)

IDF 2日目、Intelはモバイル関連の基調講演を開催。同社は、Centrinoの好調をアピールしたほか、次世代Pentium M「Dothan」に関する情報を公開。来年後半に投入予定の次世代モバイルプラットフォーム「Sonoma」の発表なども行っている。

 今年3月の発売以来、IntelのCentrinoマシンは世界中で好評を得てきた。これはIntelからのメッセージだけでなく、実際に世界各国から集まる報道陣が使っているPCを見ていてもわかる。例えば現在、開催中のIntel Developer Forum Fall 2003(IDF)の基調講演や技術トラック、休憩所などの様子を見ていると、PCを常に広げながら無線LANを使っている人々が確実に増加している。

 もちろん、PC業界の人々をベンチマークとして世の中の動きを推し量ることはできない。しかし、ユーゼージモデルに関しては比較的保守的なユーザーが多い米国において、目に見える変化が起こっているというのは、流行が始まると一気に加熱する日本の市場よりも、実態を良く反映しているようにも思える。

 Intelは9月25日を「One Unwired Day」と名付け、全米4000カ所の有料ホットスポットを無料で利用可能にするキャンペーンを張る。すでにニューヨークやサンフランシスコなどの都市部では、無料でアクセスポイントを開放するエンドユーザーレベルの運動が進んでいる米国だが、インテルはOne Unwired Dayを企画することで、一般ビジネスマンに対して無線LANをPCに統合したCentrinoのコンセプトを広めようと考えているようだ。

 Intelのモバイルプラットフォームグループジェネラルマネージャ兼副社長のアナンド・チャンドラシーカ氏によると、2003年のノートPC売り上げは前年比20%のプラスとなったという。その要因として業界全体がワイヤレス技術をPCに取り込む方向で動いたことを挙げたが、Centirnoおよびそのプロモーションが貢献したことも強くアピール。実際、Centrinoの出荷後、アナリストによる無線LANの出荷予測が書き替えられ、2003年7月の報告では昨年12月に見積もられていた予測が大きく上方修正されたデータを引き合いに出してきた。

 既存プロセッサからPentium Mプロセッサへの移行も急速に進んでおり、年末に投入予定の次世代Pentium Mでは、薄型・軽量モデルだけでなく、より大きな筐体を持つフルサイズノートPCの分野にまでPentium Mの領域が拡大する。

 もっとも、現状に満足するだけで終わる気配はない。チャンドラシーカ氏はCentrinoのプラットフォームの強化とモバイルに適したアプリケーション開発の推進役となることで、世界的に立ち上がり始めたモバイルPC市場を拡大するという。

年末投入のDothanとi855GMEでCentrinoをさらに強化

 Intelは90ナノメートルプロセスを採用し、平均消費電力の引き下げに成功しているという次世代Pentium M、Dothanを年内に投入する。Dothanは1億4000万トランジスタで構成され、2次キャッシュ容量が2倍の2Mバイトに増量されているほか、レジスタ管理機能やデータプリフェッチ機能など、マイクロアーキテクチャーの細部を改善することでパフォーマンスを引き上げている。

 基調講演では同一クロック周波数の現行Pentium M(Banias)とDothanの速度競争を行わせ、実アプリケーションの実効速度でDothanが圧倒するというデモを披露した。Dothanはクロックあたりの処理速度が上昇しているため、同じ処理を行わせても電力消費のピーク時間が短く、その分、平均消費電力が下がる効果もある。

 またDothanと同時期に登場するグラフィックス統合型チップセットi855GMEも正式発表された。i855GMEは、現在Banias搭載機に使われているi855GMEのメモリコントローラとグラフィックスコアを改良したバージョン。

 従来、DDR266だったメモリサポートがDDR333対応へと改められた。このメモリ帯域の増加とグラフィックコアの高速化(250MHz)により、i855GMに対してグラフィックスパフォーマンスが強化される。またグラフィックスコアのクロック周波数が2段階に切り替わり、バッテリー駆動時の電力消費を抑えることも可能になった。


i855GMEに内蔵される新しいグラフィックスコアの省電力性を示すデモ。バッテリーモード時には最大1.5ワットの消費電力を節約可能

 このほかCPUステートがC3、すなわちDeep Sleepに入っている時に、メモリをセルフリフレッシュモードへと切り替える機能、Display Power Saving Technology(DPST)による消費電力削減も実現している。

 DPSTは液晶画面に表示する映像のコントラストと明るさを自動的に調整し、従来よりも暗いバックライトでも同等の明るさに見えるようにする技術。低輝度時には明暗のダイナミックレンジが理論的には狭くなるハズだが、実際には輝度が低い場合は人間の目の感度も低くなるため、階調の劣化はほとんど感じないという。これにより、従来よりも25%の電力を削減することが可能。もちろん、機能をオフにすることも可能だ。

次世代CentrinoとなるSonomaプラットフォームを発表

 さらに来年後半に投入する予定の次世代モバイルプラットフォームとして、コードネーム「Sonoma」を発表した。SonomaはDothanプロセッサ、Alvisoチップセット、ICH6-M I/Oコントローラ、Calexico II無線LANチップセットで構成される、次世代Centrinoとも言えるプラットフォームである。

[本田雅一, ITmedia]

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