News 2003年9月24日 06:51 PM 更新

役割を終えるBIOS――-最後の“レガシー”コンポーネント(2/2)


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 現在、クライアントPC向けOSとして一般的なWindows 2000/XPは、起動制御がいったん引き渡されたあと、BIOSの機能を全く利用しない(Windows 9xは部分的にBIOSに依存するところもあるが、BIOSに依存しないよう構成することも可能。またWindows MeはBIOSとは独立した存在になっている)。LinuxやUNIX系OSも同じである。

 つまり、ブートアップやMS-DOSなどリアルモードOSとの互換性をはともかくとして、現代的なOSは起動が始まってしまえば(IA-32プラットフォームでも)、BIOSは不要ということになる。そこでIntelが発表した「Intel Platform Innovation Framework for EFI」では、既存のOSや拡張BIOS ROMとの互換性を取りつつ、EFIを通じたOSとのインタフェースも実現できるフレームワークとなっている。

 「Intel Platform Innovation Framework for EFI」は、OSローダへと制御を引き渡すブートストラップやハードウェアとのインタフェースを取る薄い基盤レイヤーの上に、さまざまな種類のドライバを組み込むことで、拡張性の高い柔軟なファームウェアを構築可能にしている。ドライバにより、新しいハードウェアのサポートが可能になるのはもちろん、ファームウェア上に実装するユーティリティやリモート管理などの機能面での強化も自在に図ることが可能だ。


Intel Platform Innovation Framework for EFIのアーキテクチャー構造図

 もちろん、384KバイトのBIOS ROM空間に縛られることはなく、高度な機能を提供することが可能だ。拡張BIOS ROMのエリアが足りずに悩むことはなくなり、ブレードサーバ/クラスタサーバなどで、1台のPCごとにBIOSを呼び出してメンテナンスする必要もなくなる(全サーバを一括管理する機能をファームウェアとして実装できる)。

 ネットワークブートや、オプショナルのストレージデバイスからの起動もごく当たり前にサポートされ、新世代のI/Oインタフェースが登場すれば、すぐさまファームウェアレベルでイネーブル可能、といった具合だ。

 また「Intel Platform Innovation Framework for EFI」には、ネットワークを通じたシステムのリモートメンテナンス機能が組み込まれている。これまでにも、BIOS内に「pcAnywhere」の機能を組み込んだり、リモートメンテナンス専用の拡張ボードを挿入することで、システムレベルのリモート管理が行えるサーバは存在したが、「Intel Platform Innovation Framework for EFI」の利用が進めば、サーバ、クライアントを問わず、ほとんどのIntelプラットフォームがネットワーク経由でメンテナンス可能になるわけだ。

キャラクターベースの起動画面ともサヨナラ

 「Intel Platform Innovation Framework for EFI」は、あくまでも開発フレームワークであり、実際のファームウェアはBIOSベンダーがこれをベースに開発して提供することになる。BIOSベンダーの数は知れているわけで、画一的なファームウェアでどれを購入しても同じになると考えるかもしれないが、そんなことはない。

 フレームワークはC言語で書かれており、ユーザーインタフェース部分はいくらでも拡張できる。IA-64向けのEFI対応ファームウェアはサーバ/ワークステーション向けだったため、キャラクターベースのシンプルなユーザーインタフェースだったが、実装しようと思えばGUIだろうがなんだろうが可能。むしろPCベンダー各社は、積極的にカスタマイズを行い、アドバンテージにしようと考えるだろう。

 例えば家庭向けPCならば、PC独特のキャラクターベースの画面を完全に排除することで、いざというときのトラブルにもわかりやすく対処可能にしたり、ネットワーク経由でのリモートサポートを可能にするといったこともできる。実際、米国ではGatewayが年末向け商品として発売するMedia Center PCに、「Intel Platform Innovation Framework for EFI」を用いるという。筆者はこの製品をまだ見ていないため、どのような形で実装されているかはわからないが、メモリ空間の制約がないため“やろうと思えばいくらでも”わかりやすいUI、便利な機能を実装できる。


Intelの示すロードマップ

 冒頭でも述べたように、我々エンドユーザーが使える最初のEFI対応32ビットOSはLonghornになる予定だ。しかしファームウェアの機能は、一足先にレガシーから脱却することになる。Intelは自社が提供するマザーボードのファームウェアを、Intel Platform Innovation Frameworkベースへと徐々に切り替え、Longhornが登場する数年後までにはBIOSのモデルチェンジを終わらせようとしている。今後も、PCのファームウェアを“BIOS”と呼ぶことは変わらないだろうが、その中身は全く別のものになると考えていい。

[本田雅一, ITmedia]

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