News 2003年10月2日 08:47 PM 更新
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IBM、元従業員から化学物質汚染によるがん発症で訴えられる

1970年代から80年代にかけてIBMで働いていた元従業員がIBMを訴えた。原告はIBMに対し、工場で使用されていた化学物質によりがんが発症したことの責任を問うている。

 IBMを訴えている元社員4人のうち2人が10月14日から証言を開始する。この元社員らは、半導体およびハードディスクの製造に使われている化学物質の取り扱いに当たり、IBMがその危険性を警告していなかったとしてカリフォルニア州の裁判所に訴えている。原告の弁護士が9月30日、明らかにした。

 IBMはカリフォルニア、ニューヨーク、ミネソタにおいて、IBMの工場で頻繁に使われていた化学物質の汚染によりがんを発病していることを知っていたにもかかわらず、従業員にその情報を明かさなかったとして、多数の罪を問われている。

 同社は9月26日、サンノゼにあるサンタクララ郡カリフォルニア高等裁判所に提訴された4件について棄却を申請したが、棄却されたのは2件のみだったと、原告側弁護氏であるHawes & Audet法律事務所のリチャード・アレクサンダー氏は述べた。

 元IBM従業員のアリダ・ヘルナンデス氏とジェームズ・ムーア氏の訴訟は認められたが、マリア・サンティアゴ氏と、スザンヌ・ルビオ氏の家族による訴訟はIBMの要求通り、ロバート・ベインズ判事により棄却された。

 4人の原告は、1970年代から1980年代にかけてIBMのサンノゼ工場で働いた後、さまざまながんを発病した。ムーア氏とサンティアゴ氏は非ホジキンリンパ腫にかかりヘルナンデス氏は乳がんにかかったあと乳房切除を実施。ルビオ氏は1991年に乳がんで死亡した。

 カリフォルニア州の法律では、労働者の損害補償において通常額を超えた金額を雇用者に請求するためには、雇用者がその異常な状況が死に至らしめることを知っていたか、その異常な状態自体およびそれが業務関連であるということを隠していたということを、原告は証明しなければならない。

 判決文によれば、IBMは同社が従業員の間に「システム的な化学毒物汚染」が行われていることに気づいたことを示す証拠は何もないと主張した。

 また、被告側は原告が病気を患う前に症状については認識していたので、IBMがこの症状を隠していたとの主張はできないとIBMの弁護士は述べている。

 しかし、ヘルナンデス、ムーア両氏の訴訟は続行することになった。その理由は、両氏は会社に雇用されていた数年間、さまざまな病気や症状をIBMの医療担当者に報告しており、それは「システム的化学物質汚染の古典的な発現」と原告の医療専門家が証言したため、と判事は記している。

 この証人の専門的意見はIBMの医師がヘルナンデス、ムーア両氏に見られた兆候の陰に化学物質汚染があると結論づけるべきであったかどうかを問う「公判に付すべき」理由となったと判事は述べている。

 しかし、ルビオ氏の件では、同じ専門家の証人が、ルビオ氏が報告した症状が完全に化学物質汚染によるものであったとは断定できず、ただその症状が化学物質汚染と「整合性を持つもの」と述べていた。また、原告はルビオ氏が実際に化学物質汚染の被害に遭ったかどうかを実証できなかったため、IBMがこの汚染に気づいていたかどうかは、公判に付すべき問題ではない、と判事。

 IBMがサンティエゴ氏の件を棄却できたのは、同氏の最初の宣誓供述書においてはリンパ腫と診断される前には一度もIBMの医師にかかっていないと述べていたが、2回目の宣誓供述書では、気管支炎の処置に関する外部の医師による情報をIBMの医師に渡したと述べたからである。判事はこのように述べている。

 その結果、IBMはサンティアゴ氏が化学物質汚染を被ったことを結論づける病状に関し、情報をまったく受け取っていないと主張することができる。サンティアゴ氏は診断を受ける前の仕事で病院にかかっていたが、その件はIBMの医療記録には残っていなかった。病院に行ったことで化学物質中毒にかかったと結論づけることはできないと、原告の医療関係者証人は認めている。

 公判を目指している訴訟中の案件は40あり、この2件は審理に入る最初のケースとなる。IBMはヘルナンデス、ムーア両氏の審理にで争う予定だが、30日の裁定により、残りの36件が公判に付すべきものかについて、疑問が生じることとなったと、IBMの広報担当者であるケンドラ・コリンズ氏は述べた。

 「この裁定により、残りの件の妥当性について疑問が生ずることになった。この裁定により確立された法的基準に残りの件がどれだけが達するかはわからない。判事はIBMががんを引き起こす症状を知っていたという証拠を原告が持っているかどうかに焦点を合わせていたので、他の件でも実証の責を負わねばならないだろう」と同氏は述べた。

 4人の原告は、IBMが使用した化学物質の製造者であるShell Oil、Union Carbideに対しても関連訴訟を起こす予定だとアレクサンダー氏は語った。

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