News 2003年10月6日 06:26 PM 更新

テクノロジはもっと教室で生かされるべき

PCを授業で活用するための「教師のスキル」に依然としてバラツキがあるのが教育現場の現状。この格差を解消する活動に「インテル」が取り組んでいるのは意外と知られていない。この活動の成果が公開授業として紹介された。

 インテルは、同社が行っている「Intel Teach to the Futureプログラム」の公開授業を10月3日、東京都北区赤羽台西小学校で行った。

 「多様な地球を感じよう」というテーマで行われた公開授業には、特別講師として冒険家の石川直樹氏が招かれ、極地などの極限状況においてPCやデジタルカメラで記録された画像を中心に、世界中で体験してきた石川氏の冒険が児童たちに紹介された。

 「Intel Teach to the Futureプログラム」とは、PCやインターネットを授業で効果的に活用できるように、2001年から教員を対象に世界規模でインテルが展開している情報教育支援プログラムだ。

 インテルは“教育と最新テクノロジの融合”をスローガンに教育分野への取り組みを積極的に行っている。この取り組みは“Intel Innovation in Educationイニシアチブ”と称され、科学、数学、エンジニアに対する興味をもっと持ってもらいたいという発想により1999年より開始されたもの。

 現在は、ここで紹介している「教員のための情報教育支援」を基軸に「地域単位での教育支援」(日本における具体的な活動としては、小学生を対象にしたパソコンスクールの開催や、パソコン読本、ビデオ配布活動)、「科学コンクールの主催・支援」(世界規模の高校生科学コンクールを毎年米国で主催)を行っている。

 同社は、このような活動に数百万ドルを投じ、実際の活動や人的支援を無料、つまりボランティアで提供しているのだ。

 さて、教員向けの「Intel Teach to the Future」プログラムだが、これはオフィスソフトやWindowsの使い方を教える一般的なPC研修とはまったく異なる内容。PC操作の取得を目的とするのではなく、授業の中でのPC活用法を習得してもらうための、いわば「教材研究的」な研修内容となっているのが特徴だ。

 今回、公開授業を行った赤羽台西小学校の管轄である北区教育委員会もこの研修を取り入れている。昨年の夏に研修を受けた野間俊彦教諭は「通常のアプリケーションの使い方講座では、“授業でPCをどう使う”というところに直結しない。しかし、インテルの研修では、受講後、PCやインターネットを授業に無理なく取り入れることができるようになる」と話す。

 野間教諭は「リーダー研修」を受講しているが、これは受講した内容を学校に持ち帰り、各地域で情報教育のリーダーとして活躍する人材を育成するためのプログラムだ。

 野間教諭によると、研修の36時間におよぶ内容をすべて伝授するのは時間の制約があって難しいが、エッセンスを抜き出して教材として授業に取り入れるようにしているとのこと。このおかげで、赤羽台西小学校では全部の科目でPCを教材として活用するようになるまで、教師のスキルが高まっているという。

 野間教諭がPC好きということもあって、同小学校ではちょっとしたトラブルなどにも問題なく対処できるが、学校に導入したシステムの面倒をみることができる人材が足りずに苦労している学校も多いという。

 「これからは、技術も教育もわかる人材が必要不可欠となってくる。そうした人材の育成にインテルのプログラムは貢献していると思う」と野間教諭は述べている。


「実際には何万円レベルの講習内容で、すごくよくできているプログラムが無料で受けられるのはすごいこと。多くの先生に活用して欲しい」と話す野間教諭

 このように、インテルのプログラムを受講した野間教諭を中心に、同小学校では授業の実践や最新テクノロジーを使うときの情報モラルを育成する活動に取り組んでいる。今回の公開授業も、その活動の一環として行われたものだ。

 高校2年で体験したインド・ネパールへの旅を皮切りに、世界各地で数々の冒険にチャレンジする石川氏は、7大陸最高峰登頂最年少記録を打ち立てたこともある。しかし、石川氏は、そんな偉業を成し得たとは思えないほど気さくな語りで授業を進めていった。

 PCやインターネットを利用して世界各地から行った情報発信の様子も語られた。エベレストの頂上ではさすがにPCは使えず、6400メートルのアタックベースキャンプまで戻ってきてから、デジカメで撮影した写真やメールを送ったそうだ。

 ちなみに電話の公衆回線やインターネット回線がない場所では、インマルサット衛星電話にPCをつないでインターネット環境を得るという。

 エベレスト登頂途中で冷凍保存されたドイツ隊の遺体を見て「足がすくみ、体が前に動かなくなった」石川氏はデジカメやビデオで撮影をしている間も心の中では「死んじゃいけない。死んじゃいけない」ということばかりを考えていたそうだ。

 授業の最後で石川氏は「ロビンソンクルーソーや十五少年漂流記などの本を読んでは自分でやってみたいと強く思っていた」と、中学のころの夢を述べると共に「世界にはいろんなことが溢れていて多様なんだということを、みんなにも体験して感じて欲しい」と語った。


子供たちの前で訪れた土地での体験談を語る石川氏。彼はどんな場所にもノートPCを携帯し、情報の発信に活用している


「世界にはいろいろな文化や考え方、そして価値観がある。それを考えると世界は面白くなるし、体験するとずっとやさしくなれる」と石川氏

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[遠竹智寿子, ITmedia]

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