News | 2003年10月17日 06:36 PM 更新 |
最近のスポーツニュースや試合中継では、解説者の「ディフェンスラインのここを突破して、あの方向にいいパスを出せたのが勝因でしたね」というコメントと一緒に、手書き風の矢印やチョークラインが映像に書き込まれることが多くなっている。
言葉だけでなく画像に書き込まれた動線で、解説者の説明が格段に分かりやすくなるのを、このようなスポーツニュースや試合中継で多くの方が体験していると思うが、この仕掛けを一つの筐体にまとめたスポーツコーチングシステムが、ワコムから17日に発表された。
なお、製品の販売はワコムでなくエックスビートが行い、出荷は11月1日から開始される。価格はオープンプライスとなっているが実売予想価格は約40万円。
現在、スポーツ指導者のあいだで最も問題になっているのが「指導の現場におけるコミュニケーション」。「コーチが適切な言葉を使えないために、与えられたアドバイスから選手が正確なイメージを構築できない」「選手個人の理解力の違いによって、同じアドバイスでも練習効率が異なる」など、言葉とイメージのマッチングが大きな問題となってきている。
ワコムが発表したスポーツコーチングツール「VisiCoach」は、15インチのタブレットディスプレイを筐体に組み込み、インタフェースとして用意されたNTSC、S-Video、VGAから入力された画像をそのまま表示する。
PCなどのデジタル機器を使ったことがない「実年世代のコーチ」にも簡単に使ってもらえるように、VisiCoachの機能は「入力された画像をディスプレイに表示して、その上から自由に線を書き込める」だけに絞ってある。
17日に行われた製品説明会では、サッカー解説者で横浜マリノス、ガンバ大阪で監督だった早野宏史氏やプロスキーヤーの海和俊宏氏など、第一線で活躍しているスポーツ指導者が登場し、それぞれのジャンルにおけるVisiCoachの活用実践例を紹介した。
VisiCoachの製品企画、開発を行ったのはプロスキーヤーの粟野利信氏が主宰するエックスビート。開発段階においては先ほど紹介した指導者たちが「トップアスリートパートナー」として参加し、実際の指導現場で製品のテストなどを行っている。
早野氏は「現在行われている“ビデオ映像+指し棒”では、動く映像に意識が集中してしまう。VisiCoachでは映像を使った具体的なイメージの伝達に効果的。視線の向け方までも指導できる」とVisiCoachの有効性をアピール。現在、力を入れているジュニア選手の指導においても「専門用語の理解に限界がある子どもたちの指導で、映像を活用するのはとくに有効」と述べた。
プロスキーヤーの海和氏は、「スキースクールでは、最近シニア世代の入校者が急増しているが、やはり言葉のギャップが一番の問題なっている」とスキースクールの経営者という立場からもVisiCoachの有効性に言及している。
「生徒を飽きさせず、かつ即効的に上達させることがスキースクールでは求められる。トップアスリートは一言のアドバイスを自分で有効にイメージできるが、初心者のジュニアやシニアではそうはいかない。これまでは一つのアドバイスのために多くの言葉を必要としていたが、VisiCoachはその問題を完全に解決してくれる」(海和氏)
PCとペンタブレットの組み合わせでも、同様のコーチングは可能で、かつノートPCやTablet PCを組み合わせれば、屋内屋外を問わずどこでも利用できる。
しかし、VisiCoachの一番の特徴は、機能を整理してすぐ利用できるようにしたところだ。加えて、開発に協力している「トップアスリートパートナーズ」によって、現場で効果的に活用するケーススタディがフィードバックされているなど、運用面のテスティングも充実している。
VisiCoachのコンポーネントには、ユーザーであるコーチが一番知りたい「トップアスリートが実践して蓄積した活用のノウハウ」も含まれていると考えれば、40万円という価格は「妥当」といえるかもしれない。
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[長浜和也, ITmedia]
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