News | 2003年10月27日 09:12 PM 更新 |
先週のTop10では、ソニーの新“サイバーショット”「DSC-T1」の速報記事が2位以下に大差をつけてトップをゲット。7位にもT1の詳細記事がランクインした。
一刻も早く、読者に速報をお届けするために(発表会場でマスコミ向けに用意された軽食には見向きもせず)記事を執筆した筆者にとってはうれしいランキング結果だが、筆者には「薄型ボディに大画面液晶&510万画素」という仕様がそれほど魅力的には映らなかったため、正直いってこれほどアクセスのある“ネタ”とは思っていなかった。
T1で気になったのは、“カメラとしての基本性能”だ。
まず目に付いたのが「レンズの明るさ」。8群11枚(非球面3枚、プリズム1枚) の多群多枚レンズで、「カールツアイス バリオテッサー」という“育ちのよさそうな名前”を冠してはいるものの、F値を見るとF3.5〜4.4と暗いレンズになってしまっている。今回、T1と同時に新モデルが登場したサイバーショットUシリーズが、初代機からF2.8という明るいレンズを使い続けているのと対照的。手ブレしやすいコンパクト機にこそ明るいレンズが必要な点は、同社もよく分かっているはずだ。
小口径レンズになってしまうインナーズーム方式が、暗いレンズの理由というわけでもないだろう。なぜなら、同方式のミノルタDiMAGE Xtが、しっかりとF2.8〜F3.6という明るさを確保しているからだ。
光学ビューファインダーや三脚ネジ穴が装備されていない点も気になる。DiMAGE XシリーズをはじめペンタックスのOptio Sシリーズ、カシオ計算機のEXILIM ZOOMシリーズといった薄型ズーム機は、いずれもこのような“カメラとしての基本性能”をしっかりと備えた上で薄型コンパクト化を行っている。
最薄部17.3ミリというスリムボディに2.5インチの大型液晶ディスプレイという組み合わせは、カメラとしてだけでなくモバイルビューワー的な展開も考えられるなど、従来のデジカメの枠を越えたT1の可能性には筆者も期待している。それでもなお、カメラとしての基本性能に言及するのは、同社が発表会の席上で「T1は“本物感のあるカメラ”を狙う」と明言したからだ。
光学ビューファインダーを持たないT1は、液晶ディスプレイを見ながらの撮影となるため手ブレが発生しやすい。にもかかわらず、搭載レンズが暗いことで手ブレの危険性が逆に高まってしまっている。手持ち撮影が不安な時の“助け舟”となる三脚も、ネジ穴を持たないT1では使えない。
高性能な510万画素CCDやハイエンド機向けの画像エンジンが、手ブレ画像の前で“宝の持ち腐れ”にならないことを願う。
[西坂真人, ITmedia]
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