News 2003年11月7日 07:43 PM 更新

IBMが異機種サーバにおけるデータ仮想化を実現

大規模SANが抱える「システムの複雑化による管理コストの増加」の解決のために導入が進むストレージの仮想化技術。IBMは異なるOSやファイルシステムが混在する環境でも仮想化を実現する技術を発表した。

 IBMは11月7日に、異機種間サーバの間でデータを一括管理できる仮想ストレージ管理システム「IBM Total Storage SANファイル・システム」(SFS)を発表した。出荷は11月14日から開始される。

 SFSはメタデータサーバエンジンのシステムハードウェア「IBM4146-T30」と、このメタデータサーバとアプリケーションサーバのそれぞれで稼動するソフトウェアセット「5765-FS1」が用意されている。IBM4146-T30の価格は741万円から、5765-FS1の価格は660万円から。

 発表当日には、米国IBMのイェンズ・ティードゥマン氏(Storage Software Marketing Vice President)が、現在のSANが抱えている問題点とその解決のためにIBMが取り組んできたTotalSorageシリーズのバーチャライゼーションファミリーに関する説明を行った。


イェンズ・ティードゥマン氏。「将来的には、遠距離に分散しているシステムや、グリッド環境にもSFSは対応できるようになるだろう」

 エンタープライズの大規模ストレージシステムで導入が進んでいるSANは、システム構成における拡張性や柔軟性などの長所を持っているが、導入が始まった3年前からは予想もできないほどに大容量大規模化が進んだために、「現在のシステム環境ではSANは限界に達している。そのため、ユーザーはSANシステムのメリットをフルに享受できていない」(ティードゥマン氏)

 ティードゥマン氏が説明する「SANをフルに活用できない」システムの問題点というのが「物理的に繋がるネットワーク上のストレージ」「複数のベンダーが提供する互換性のない最新技術」「複数の規格が混在するファイルシステム」

 「1万台にも達するサーバハードウェアがすべてワイヤーで接続され、それぞれのベンダーが提供する最新技術にはどれも一貫性がなく、ディスクごとに異なるOSがインストールされているシステムでは、それぞれのOSごとに異なるファイルシステムが使われるため、データ管理機能も異なってくる」(ティードゥマン氏)

 このような状況では、ストレージの規模が膨張するにつれて、管理コストと担当者の負担も指数関数的に増加していく。せっかく投資して増設されたストレージ機器だが、その稼働率はわずか25%までに低下しているのが現状だ。

 「ストレージを増設するたびにアプリケーションサーバを停止して、データの移行作業を行う手間と時間の無駄を考えると、ユーザーは容量に余裕を持たせたストレージを増設する。そのため、ストレージの稼働率は低下してしまう」(ティードゥマン氏)

 IBMはこの問題の抜本的な解決のために、ストレージシステムの「自動化」と「仮想化」といった二つのアプローチからSANシステムの開発を行い「アプリケーションの多様性と人的生産性を向上させ、ストレージ構成の最適化を容易にする」ことを目指している。

 この動きは「IBM TotalStorage バーチャライゼーション・ファミリー」として製品化が進められているが、「仮想化」の成果は、すでに6月に発表された「IBM TotalStorage SANボリュームコントローラ」としてストレージの仮想化を実現している。

 ボリュームコントローラで、ストレージの仮想化によって、ネットワーク上のストレージとサーバを物理的接続の制約から解放している。そのおかげで、下層に位置するストレージの構成に変更が発生しても、上層のアプリケーションサーバには影響せず、管理労力が削減された。

 今回発表されたSFSでは、仮想化に加えて「自動化」を追加さえている。このため、下層のストレージに変更があった場合、管理ソフトウェアで自動的に初期化作業やデータ転送作業を行えるようになった。

 さらに、ボリュームコントローラでは異なるファイルシステムを組み込んだストレージごとに、同じファイルシステムを管理できるサーバを必要としていたが、SFSでは、異なるOS、ファイルシステムも一つの仮想的なストレージとして扱える機能が組み込まれている。

 これで、IBMが考えるSANの問題点「ネットワークにおける物理的接続」「ベンダーごとに異なる最新技術」「複数のOS、ファイルシステムの混在」が解決したことになる。


ボリュームコントロールを導入した場合のシステム構成の変化。サーバとすべてのストレージブロックが物理的に接続されていた状況が、ボリュームコントローラによる仮想化によって、一つのストレージだけに接続するだけですむようになる。ただし、このままでは、異なるOSやファイルシステムごとに接続を確立する必要があった。


SFSを導入した場合のシステム構成の変化。異なるOSやファイルシステムも一括して扱えるようになったため、複数のサーバが一つの仮想ストレージを参照するだけですむ

 また、SFSでは、ポリシーベースのファイル管理にも対応している。データの属性機能をSFSが管理することで、事前にユーサーが設定したポリシーに従い、データの属性情報を参照しながら適切なストレージに保存することが可能になる。

 例えば、データの属性情報を参照して、「役員決定事項」のような情報はコストが高いながらも強固なストレージに保存し、「社員雑談ログ」のような情報は安価な通常のストレージに保存できるわけだ。

 すでに出荷されているボリュームコントローラと今回発表されたSFSは、それぞれ得意とするシステム形態や使用目的にあわせて導入するのが望ましいと、ティードゥマン氏は説明する。

 「ボリュームコントローラの上にSFSを導入することも可能だが、SFSは異なるOSやファイルサーバが混在する複雑な環境で真価を発揮する。扱うデータ量よりも、システムの複雑さによってSFSのメリットは生きてくるだろう」(ティードゥマン氏)

関連記事
▼ IBM、ストレージ管理製品発表
▼ IBM、2種類のストレージ仮想化ソフトウェアをリリースへ

関連リンク
▼ 日本アイ・ビー・エム

[長浜和也, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.