News | 2003年12月9日 06:07 PM 更新 |
NASやSANなどのエンタープライズ向けストレージシステムを開発しているネットワーク・アプライアンス(NetAPP)が、先日米国で発表した新製品の国内向け説明会を12月9日に行った(紹介された製品の説明と、NetAPPが提唱する独自のRAID規格「RAID-DP」については別記事を参照)。
そのなかで、将来に向けた取り組みとして紹介されたのが「ストレージグリッド」構想。ネットワーク上に分散するストレージリソースを統合管理するシステムが、多くのストレージベンターから提唱されているが、ストレージグリッドはその一つの方法としてNetAPPが開発を進めているアイデアだ。
グリッドというとまず思い浮かぶのが、いまや実用段階に突入した「グリッドコンピューティング」。グリッドコンピューティングは「安価なサーバを広帯域のネットワークで大規模に組み合わせ、求められる負荷にあわせて処理を行うサーバを有機的に再構成する」もの。その目的は「サーバを含めたシステムコストを削減する」(日本NetAPP代表取締役社長 鈴木康正氏)ことにある。
鈴木氏は「グリッドコンピューティングの導入によって、CPUにかかるコストの削減とパフォーマンスの向上が実現しているのだから、ストレージ側でも、安価なデバイスをグリッドで構成し、すべてのストレージデバイスを一つにまとめて統合管理することで、コストの削減を目指さなければならない」と、ストレージグリッドの必要性を訴えた。
ストレージグリッドを実現するためには、クリアしなければならないキーテクノロジーが数多くある。具体的には、異なるプロトコルで接続しているSANやNASを仮想化して一つに統合する技術や、個々のストレージクラスターを調整して管理するスキルが求められる。
この必要なキーテクノロジーをそろえるために、現在進められているのがストレージ開発ベンダーSpinnaker Networkの買収だ。
「NetAPPは、SANやNASの統合アーキテクチャや仮想的なデータボリュームを構成する技術、そしてストレージデバイスの信頼性に対する豊富なノウハウと経験をもっている。そのNetAPPとSpinnaker NetWorkが有するストレージクラスターの高い技術力を組み合わせることで、ストレージグリッドを実現するのに必要なキーコンポーネントがすべてそろった」(鈴木氏)
異なるOSやベンダーのデバイスが混在するシステム環境で「分散するストレージを仮想的に統合して管理する」「新規ストレージデバイスを追加する場合は、自動的に構成を変更して短時間でアサインする」「障害発生を検知したらすぐに構成を変更して短時間で復旧させる」を実現させる製品として、IBMのTotalSorageやNECのVALUMOなどがすでに存在している。
そのなかで、NetAPPは「すでにNetAPPが投入してきた既存のデバイスでも、管理ソフトなどのわずかな追加コストでストレージグリッドが実現できる。この点が既存デバイスの全面的なリプレースを必要とする、ほかの統合ストレージシステムとの大きな違い」(日本NetAPP市場開発本部システムズエンジニアリング部部長代理 村山雅彦氏)と説明する。
また、村山氏は「グリッドコンピューティングでは仮想化された一つのストレージしか見えてこないが、ストレージグリッドならCPUの背後で構成されている個々のストレージデバイスを管理できる」と、グリッドコンピューティングにおけるストレージグリッドの必要性を説明している。
「CPU単位でリソースを再構成できるグリッドコンピューティングでも、たしかにストレージリソースの再構成はできるだろう。しかし、ストレージデバイスを管理するときは、一つに統合化された仮想的なストレージだけでなく、グリッドを構成する一つ一つのデバイスも管理する必要がある」(村山氏)
NetAPPの説明では、Spinnaker Network買収の正式発表は2004年の1月に予定されているが、すでに技術者レベルでの合同開発は進められている。しかし、ストレージグリッドに対応した製品の投入時期については「買収の公式発表前にSpinnaker Networkが関係する製品の情報は公表できない」(村山氏)と明らかにされなかった。
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[長浜和也, ITmedia]
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