News 2003年12月26日 08:28 PM 更新

バイオ505エクストリーム「基板開発物語」(1/2)

今年後半盛り上がったノートPCといえばPCG-X505。2003年最後のX505ネタでは「MDサイズの基板」について開発者に語ってもらった。

 バイオノート505エクストリーム(X505)の薄型軽量化に大きく貢献しているのが、筐体素材のカーボンファイバーとMDサイズの超小型基板。

 そのMDサイズ基板の実現に最も影響しているのが、従来3割減といわれている「部品点数の削減」と、両面2段ビルドアップ+ブラインドビア6層による10層基板の採用だ。


X505のメイン基板。CPUとサウスブリッジが筐体上面を向くようになっている。左のスペースにはHDDドライブが、右の空白にはPCカードスロットがそれぞれ配置される


X505メイン基板の筐体裏側。ビデオ機能を内蔵したノースブリッジとオンボードのメモリモジュールが実装されている。厚さを抑えるためにメモリスロットは搭載できなかったが、メモリ容量512Mバイトなら当面問題はないだろう

 部品点数の削減作業は、ICメーカーが推奨するリファレンス回路から「不必要な部品を見極め」ることで行っている。では、その見極めの具体的なポイントは何だったのだろうか。

 「回路の解析方法は二通りあって、一つがロジック的な解析。ICメーカーから提供されたブロック図を見ていくと、彼らが重要と考えている部分でも、理詰めで検討してみると必要でないと判断できる場合がある」(プロダクトリーダー兼エレクトロニクス設計担当 西野圭氏)

 「もう一つがマージン。ICメーカーは、起こりうる最悪の状態に対応できるだけのマージンを確保したうえに、さらなるマージンの枠を設けている。その部分を、実験や測定を行うことで検証し、適切なマージンを確認したうえで不要な部分を見極めていく」(西野氏)

 このように、論理的な見極めと実証的な見極めの二本立てで不要部品の削減を進めていったらしいが、X505のような小さなマシンに乗せる回路には、マージンのゆとりがそれほどないのでは?

 「それは逆。小さいマシンのほうが外的影響を受けにくく保証できるマージンは大きい。例えば電圧が変動する要因を考えてみても、A4サイズのフルノートPCでは内蔵ドライブやインタフェースに接続した周辺機器を考慮しなければならない」(西野氏)

 こうして実装する部品点数を減らした上で、さらに基板の実装集積度を高めてくれたのが、X505で初めて採用された両面2段ピルドアップ+6層ブランドビア基板だ。そもそも、ビルドアップ基板とは何なのだろうか。通常の10層基板ではいけないのだろうか。

 「ビルドアップ基板のメリットは、通常基板と比べて実装密度を高められること。通常の基板では配線が干渉して実装密度を上げられないが、ビルドアップ層を使うと配線密度を高くでき、その結果実装密度も上げられるようになる」(西野氏) このように、高い基板集積化が求められるノートPCにとって、ビルドアップ層はありがたい技術なのだが、今まで使われてこなかった理由は?

 「製造的な問題。通常の基板で使われている貫通ビアでは、一度の工程で全層貫通の穴をあける。ブラインドビアは、貫通ビアの基板を何組か張り合わせることで、内部だけで貫通しているビアが作れる」(西野氏)

 このように、通常の基板ではビアを作る作業が貫通ピアで1工程、ブラインドビアでも同じ貫通ピアの組み合わせ分の工程ですむ。さらに、貫通ピアなら数十枚の基板を一度に製造することも可能だ。

 「ビルドアップ層には、途中で止まっている穴が前もってたくさん用意されている。実際に使う穴をレーザーで数十ミクロンだけ掘って開けることになるが、この一回の作業でようやく一層分ができあがる」(西野氏)

 X505のような「両面2層ビルドアップ」なら一台分の基板が4工程を経てようやくできることになる。一回の作業で大量に生産できる通常の貫通基板と異なり、作業の手間がかなりかかるのが分かるだろう。

 ちなみに、基板の素材は通常基板とビルドアップ基板で同じだが、「樹脂の量とガラスクロスの線維の太さなど、材質は異なっている。ビルドアップ用の基板は専用のものを基板メーカーが新たに起こしている」(プロジェクトマネージャーの佐藤英和氏)


X505で採用されている両面2段ビルドアップ+6層ブランドビアの基板構成。一気にピアを作れる貫通式の通常基板と異なり、ビルドアップ層は一層ごとにビア開け作業を行わなければならない

 実をいうと両面2段ビルトアップの採用は、かなり早い段階から決定されていた。前回の「モック物語」で紹介した開発モックの時点では、このビルドアップを採用した基板を想定して筐体のサイズが決められていたが、そのときの基板サイズはMDサイズにはとても収まらない面積だったらしい。

[長浜和也, ITmedia]

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