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TD-CDMA実現には1社あたり5MHzでは足りない!?

» 2004年03月19日 18時31分 公開
[RBB Today]
RBB Today

 モバイルブロードバンド協会(MBA)が開催したフォーラムでは、各社のプレゼンテーションのほかパネルディスカッション「3G TDCDMAへの期待と電波行政」も行われた。ここでは、TD-CDMAの商用サービスが秘める可能性をそぐような問題が浮き彫りになった。

 それは、TD-CDMAに割り当てられる周波数帯域だ。

 パネルディスカッションでは、MBA理事である真野浩氏をコーディネーターに、TD-CDMAを推進する事業者としてイー・アクセス種野晴夫氏、同諸橋知雄氏、マルチメディア総合研究所の信國謙司氏、ソフトバンクBBの宮川潤一氏が、電波行政を担う総務省の富永昌彦氏が登壇し議論した。

左からイー・アクセス種野晴夫氏、同諸橋知雄氏、マルチメディア総合研究所の信國謙司氏、ソフトバンクBBの宮川潤一氏、総務省の富永昌彦氏、コーディネーターであるMBA理事である真野浩氏

 「5MHzで1,000万人を収容するのは無理」(ソフトバンクBB)などの発言が出てきたようにTD-CDMAに割り当てられる5MHzという周波数帯は非常に狭い。TD-CDMAには今のところ2010MHz〜2025MHzの15MHzを割り当てることが検討されており、ここ3社が参入すると1社あたり5MHzしか割り当てられない。これは、現行の携帯電話に割り当てられている1社当たり20MHzの帯域を考えると非常に狭い帯域だ。

 そこで出てきたのが、先にマルチメディア総合研究所が触れていたインフラの共通化だ。1つの方法として、共同でインフラを構築する案があるが「無線はリスクが大きいため、だれが責任を取るかが問題になる」(イー・アクセス)との意見が出てきた。そのため、特定の事業者がインフラを構築し、ほかの事業者に貸し出すMVNOやホールセールといった方法が考えられる。しかし、インフラを持つ事業者がサービスを行うことには問題があるとの意見も出てきた。

 これに対して総務省の富永氏は「固定局のマイクロ波は光ファイバーの通信に移ってもらったり、800MHz帯(携帯電話で用いている帯域)の整理を行うなどの作業を進めている」と報告した。

 また、TD-CDMAにおけるビジネスモデルについても大きな差が出た。イー・アクセスは4半期ベースはもとより、通期の黒字化も見えてきている。そのためか、「インフラだけで収益をあげる」とTD-CDMAでも現在のADSL回線のホールセールビジネスと同じ姿勢を取ることを示した。一方のソフトバンクBBは「Yahoo! BBはADSL単体だと安いが、BBフォンやBBケーブルTVなどのアプリケーションを載せることでARPUを上げてきた。TD-CDMAでも同じようなモデルを取るつもり」だとした。このように、ソフトバンクBBとイー・アクセスは、TD-CDMAでもADSLと同じビジネスモデルで進めていく方針のようだ。

 そのため、IP携帯電話について質問を投げかけられると、イー・アクセスは「音声をする人が出てくるかもしれない」とした一方で、ソフトバンクBBとマルチメディア総合研究所は「ADSLでIP電話をやるのと同じだ」と前向きな答えが聞かれた。

 このようにサービスの方向性は示されたものの、各社とも、通信速度、料金、エリア、商用サービスの開始時期、定額制の電話サービスなど具体的な内容はまだ検討中だとして、堅く口を閉ざしたままだった。