ITmedia NEWS >

Sun-Microsoft全面和解への“賛”と“否”(2/2 ページ)

» 2004年04月05日 12時09分 公開
[IDG Japan]
IDG
前のページへ 1|2       

 しかし誰もが皆、今回の和解を評価しているわけではない。Microsoftを「悪の帝国」と酷評してきたSunが、事実上、多額の現金と引き換えにMicrosoftに屈した格好だと話すのは、Sambaの開発者の1人、ジェレミー・アリソン氏だ。SambaはUNIXとLinuxシステム間でWindowsファイルを共有するために使われている、人気の高いオープンソースプログラム。

 同氏によれば、Sunは和解合意の一環として、Microsoft Communications Protocol Program(MCPP)の条件を受け入れた。MCPPでは、サーバとMicrosoftデスクトップPC間でデータを交換するための通信プロトコルをライセンス供与している。Microsoftの技術は厳しいライセンス条件の下で管理されているため、Sunはこれらプロトコルを自社のLinuxサーバで利用できないかもしれないという。

 「これらのプロトコルのライセンスを受けることで、彼ら(Sun)は基本的に、これがMicrosoftの知的財産であることを容認し、その守秘義務に従うと約束することになる。つまり、Sunはこれまでの戦いの中で主張し続けてきた最も重要な項目の1つを取り下げたということだ」とアリソン氏。

 Microsoft側にとって、2日の和解合意は、公の場で自社を最も声高に批判してきた企業との長い確執に終止符を打ち、現在係争中の数々の訴訟リストからSunの名前を消すことを意味する。この訴訟リストからは既にAmerica Online(AOL)の名前も消されている。Microsoftは昨年、AOLに7億5000万ドルの和解金を支払うことで合意に達し、AOLのNetscape部門から起こされた独禁法訴訟を終結させている(5月30日の記事参照)。このほか、米司法省との独禁法訴訟も、多くの観測筋が寛大で効果がないと見なしている是正措置を受け入れる形で切り抜けている。

 今なおMicrosoftが係争中の訴訟の1つに、RealNetworksが10億ドルの損害賠償金を求めて起こした民事独禁法訴訟がある(12月19日の記事参照)。Sunとの和解発表を受け、RealNetworksは2日、これによって対Microsoft訴訟に向けた自社の決意が弱まることはないとコメントした。

 RealNetworksの次席法務顧問を務めるデイブ・スチュワート氏は次のように話している。「当社が訴訟を起こしたのは、Microsoftの商行為が違法だと強く確信しているからだ。このことは、欧州委員会による(独禁法)調査結果によって裏付けられたと考えており、われわれとしてはそれを法廷の場を通じて証明していきたい」

 同氏によれば、Microsoftが和解条件を提示してきた場合、RealNetworksにはいかなる条件についても検討する「株主に対する義務」があるが、現時点でこの訴訟を和解に持ち込む計画はないという。

 Microsoftが抱えるもう1つの懸念材料は、欧州規制当局が先月下した独禁法違反に関する裁定だ。欧州委員会はMicrosoftの競争阻害行為に対し4億9700万ユーロ(2日時点で6億1300万米ドル)の罰金を科すとともに、メディア再生ツール市場の競争を活性化させるため、Microsoft製メディア再生ツールを取り除いたバージョンのWindowsを販売することなどを命じた。Microsoft側はこの決定を不服として上告するとしている(3月25日の記事参照)。

 そもそもSunは、Microsoft対欧州連合の訴訟を引き起こした張本人だった。同社は1998年、「Microsoftは、競合企業が自社サーバとMicrosoft製品を連係させるのに必要なソフトのコードを不当にも開示しようとしない」との苦情を申し立てた。だがMicrosoftと和解合意に至った今、Sunは欧州側の支持者としては声を弱めることになる。

 「当社が実際に求めていたすべてを手に入れた事実を踏まえると、今後われわれは(欧州対Microsoft問題に関する)活動を少なくし、目立った行動を控えていくだろう。当社の立場として、既に手中にあるものを公に要求するのは少しおかしいと思う」とSunの法務担当副社長、リー・パッチ氏。

 ただし(Microsoftによる欧州での)上告にあたって、SunとMicrosoftの和解は、欧州側の立場を必ずしも弱めることにはならないと、法律事務所Howard Riceのダナ・ヘイター弁護士は主張する。欧州委員会は300ページにわたる文書でMicrosoftの違反行為を説明しており、またこの訴訟はMicrosoftの行為が競合相手全般に及ぼす影響をめぐるものであって、Sunのみを対象とはしていないという。

 「(和解合意が)欧州委員会の審議に大きな影響を与えることはないと思う。彼ら自身が、MicrosoftとSunの和解が欧州に影響すると考えている場合は別だが」 (同氏)

 少なくともSunの顧客1社は、「この和解は、SunとMicrosoft間の関係強化という新時代の幕開けの象徴である」と楽観的な見方を示している。10年以上前からSunを導入しているカナダのGridway ComputingのCTO(最高技術責任者)、クリス・クレーマー氏は、この業界は、WindowsとUNIXが企業内で共存できる方向に進みつつあるのかもしれないと話している。

 「MicrosoftとUNIXは、入手可能なアプリケーション、サービス、そしてツールセットで異種混在環境を構成するという段階に向かい始めている。サーバOSはどこの製品か、何のデスクトップOSが使われているかということは、それほど問題視されなくなる」とクレーマー氏は語っている。

前のページへ 1|2       

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.