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ストレージを計算機に変身させるプロジェクトが始動

» 2004年06月23日 17時55分 公開
[IDG Japan]
IDG

 ストレージシステムは計算機に変身できるか――。米Silicon Graphics(SGI)と米パシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)は6月22日、このテーマに取り組む新しい研究プロジェクトを立ち上げた。

 PNNLは、ストレージデバイスが単にコンピュータに処理されるファイルを保存するのではなく、単独で計算を行えるようにするソフトの開発プロジェクトを1年間かけて実施し、SGIは資金面で協力する。オープンソースのファイルシステム「Lustre」をベースに開発されるこのソフトは、将来的に大規模コンピュータクラスタの処理能力を大幅に向上させる可能性があると研究者は述べている。

 現在のほとんどのファイルシステムでは、データは保存のためにハードディスク上で分割されており、処理する前に再結合する必要があると、PNNL分子科学コンピューティング部門のコンピュータオペレーション担当マネジャー、スコット・スタッドハム氏は語る。

 しかしLustreでは構造上、この再結合を行わずに済む。PNNLの研究者が開発するソフトは、この点を利用して、ストレージアレイ上の空いているプロセッサが計算を行えるようにするものだ。スタッドハム氏はこうしたストレージプロセッサによる処理プロセスを「アクティブストレージ」と呼んでいる。

 「Lustreは、初めて実現された実用規模のオブジェクトベースファイルシステムだ。このため、われわれはファイルシステム内での処理の実行に挑戦することができる」とスタッドハム氏。

 同氏によると、研究者はこのソフトを利用してフーリエ変換と呼ばれる計算処理をファイルシステムに移し、PNNLで行われているプロテオミクス研究のスピードアップに役立てる計画だ。

 アクティブストレージは、化学業界や法執行、マーケティングデータベース、保険業界など、データマイニングが利用されるあらゆる業界や分野で役に立つ可能性があると、Lustreの開発会社Cluster File Systemsのフィル・シュバン最高経営責任者(CEO)は語る。

 シュバン氏によると、既存のデータマイニングアプリケーションでアクティブストレージを活用するには変更を加える必要がある。だが同氏は、それは大変な作業にはならないと見ている。「非常に特殊なアプリケーション・プログラミングがかなり必要になることはないと思う」

 それより大きな問題は、Lustre自体が高性能コンピューティング以外の分野では広く使われていないことだ。シュバン氏は、Cluster File Systemsはより幅広いユーザー層を開拓していくとしている。

 スタッドハム氏は、アクティブストレージプロジェクトへのSGIの支援金額を明らかにしなかったが、少なくとも2人の常勤ソフト開発者の人件費をまかなえる額だと語った。

 SGIとの協力の一環として、PNNLは最近、ラボで1.3ペタバイトのLustreファイルシステムを1.3ペタバイトのテープストレージとともに構築することで同社と490万ドルの契約を結んだ。

 現時点でSGI幹部のコメントは得られていない。

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