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MS、ブラジル政府高官のFUD批判に名誉毀損の訴え

» 2004年06月30日 14時24分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Microsoftのブラジル支社が、同国のオープンソース戦略を担当する政府関係者を相手取り、訴訟手続きに乗り出した。「Carta Capital」誌に載った発言で、名誉が棄損されたと訴えている。

 Microsoft Informaticaの弁護士は、6月7日に裁判所へ書類を提出し、その中でブラジルの国立情報技術研究所(ITI)で所長を務めるセルジオ・アマデウ氏を名誉棄損で非難し、3月17日の記事に載った同氏の発言が、同社の評判を傷つけたと主張している。

 「説明に対する要求」というこの書類では裁判所に対し、問題の発言を撤回する内容をCarta Capitalに自費で掲載することをアマデウ氏に命じるよう求めている。

 ポルトガル語で書かれた問題の記事は、スタンフォード大学のローレンス・レッシグ教授が運営するブログに英語版が載っている。アマデウ氏はMicrosoftの事業慣行を「麻薬密売人」の慣行になぞらえ、「FUD(恐怖、不安、疑念)戦略を展開している」と批判している。

 「(アマデウ氏による)これらの発言は、不条理で悪質なだけでなく、(同氏が)勤務する公機関に特有の義務に反する」と「説明に対する要求」の英語版には書かれている。この文書もレッシグ教授のブログに掲載されている。

 Microsoftの動きは、オープンソース支持者たちから非難の嵐を呼んだ。彼らは、この動きは言論の自由への攻撃だとし、アマデウ氏を相手取った訴訟の前兆ではないかと懸念している。

 Microsoft社員でさえ、少なくとも1人は同社の「説明に対する要求」を公に批判している。

 「Microsoftの経営陣と社員へ:このようなやり方でわれわれの批判者を黙らせるために弁護士を使うのは大きな誤りだ」とMicrosoftの開発者ロバート・スコブル氏は最近のブログで述べている。

 アマデウ氏はこれまでのところ、Microsoftの要求を拒否している。「われわれはブラジル政府にオープンソフトを導入するために働いている。政府は独占企業への説明を求めていない」と同氏は先週の公開ITカンファレンスの講演で述べていた。

 ITIの広報担当デニス・ジレイト氏はメール取材の中でこう話している。「Microsoftがセルジオ(アマデウ氏)を訴えようという明確な考えを持っているかどうか、われわれには分からない。しかし同社が彼を脅すか、あるいは恥をかかせたいと思っていることは明白だ」

 Microsoftの米国本社の関係者は、「説明に対する要求」を提出した根拠について説明することも、アマデウ氏を提訴するつもりかどうかを明らかにすることもしなかった。

 この問題に関する同社の唯一のコメントは、短い声明文だけだ。それには、同社は「誰も提訴しない」ことと、同社が「政府機関、顧客、業界とオープンに、敬意を持って対話している」ことが書かれている。

 Microsoftがアマデウ氏を提訴する計画だったのなら、その機会は過ぎ去ってしまったかもしれない。ITIの法務顧問によると、ブラジルの法律では、問題のCarta Capitalの記事が発行されてから3カ月以内に名誉毀損訴訟を申し立てることが必要で、期日の6月17日は過ぎている。ITIの広報担当者は「Microsoftはセルジオを提訴しないという決定を下したのだと思う」と話している。

 昨年ブラジル政府は、同国内でのLinux採用を推進するイニシアティブを立ち上げるとの同意書をIBMと交わした(10月11日の記事参照)。アマデウ氏によると、ITIは現在オープンソースへの全面移行の初期段階にあり、最終的には30万台のコンピュータをオープンソースソフトに移行する予定という。

 「既に4000〜5000台のマシンを移行した。3年以内に半数のマシンにオープンソースソフトを導入できると思う」と同氏は先週のカンファレンスで語っていた。

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