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“フランス版GPL”、仏国立研究所が発表

» 2004年07月12日 11時43分 公開
[IDG Japan]
IDG

 フランス政府が出資する3つの研究機関は先週、同国におけるオープンソースソフトの普及促進を狙った新しいライセンスを発表した。これら機関によれば、このライセンスはFree Software FoundationのGNU General Public License(GPL)と両立できるという。

 フリーソフトライセンスは既に数多く存在するが、そのほとんどは英語で、米国の法体制の観点から書かれたもの。このため、法体制が異なる国で採用した場合に、問題が発生する可能性がある。

 「CeCILL」と呼ばれる新たなライセンスは、フランスと米国の法律が著しく異なる「著作権」と「製造物責任」の2分野において、フリーソフトをフランスの法律により則したたものにすることを目的にしている。

 フランスの法律では、消費者向け製品の製造者は自社製品に対するいかなる責任も拒否することができない――しかし多くのオープンソースプロジェクトに携わっている開発者は企業のバックアップを受けておらず、無制限の金銭的リスクを負うだけのゆとりがない。

 CeCILLではこれを回避する方法が提供されると、フランス国立情報処理自動化研究所(INRIA)で開発・産業パートナーシップ責任者を務めるジェラルド・ギロードン氏は説明する。このライセンスの下で提供しているソフトは知識が豊かなユーザー向けだと宣言することによって、ソフト開発者はフランスの法律の下で自身の責任を限定することができるという。とは言え、開発者はある程度の責任を持ち、ソフトの利用者を安心させるべきだと同氏は言い添えた。

 フランスと米国の法律が異なるもう1つの分野が著作権だ。フランスでは、ソフトの著作権は、商用の知的財産ではなく芸術的・文学的創造物に関連する法律の下で管理されている。ただし著作権がその作者に属する大半の作品と異なり、ソフトの著作権は当該ソフトに出資している企業が保有する。CeCILLではこうした要素を取り入れる必要があったとギロードン氏は説明している。 

 ギロードン氏によれば、ほかのオープンソースライセンスと同じく、CeCILLは同ライセンスにより保護されているプログラムがほかのソフトに包含される場合、包含する側のソフトにも影響するようになっているという。つまりCeCILLで保護されたソフトを取り込んだソフトも、同ライセンスの下でリリースされなければならず、この点はGPLに似ていると同氏は指摘している。さらにCeCILLの条項では、同ライセンスの下でリリースされるソフトを、GPLに準拠するソフトにも取り込んでよいこと、取り込んだソフトをGPLの下でリリースしてもよいことが明示されている。

 CeCILLは今後登場するライセンスシリーズの第一弾となると同氏は言い添えた。計画されているほかのライセンスはそれぞれ異なる特徴を持ち、LGPL(Lesser GPL)やBSDオープンソースライセンスのフランス版と位置づけられる。LGPLとBSDは、オープンソースコードを商用ソフトと併用したり、商用ソフトに取り込むことを特定の条件下で許可している。

 CeCILLという名称は、このライセンス体系の作成に携わった3つの研究機関――フランス原子力庁(CEA)、フランス国立科学研究センター(CNRS)、フランス立情報処理自動化研究所(INRIA)――と、フリーソフトを表すフランス語「logiciel libre」から取ったもの。

 なおCeCILLライセンスの英語版はここに掲載されている。

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