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ソーシャルネット「mixi」、儲からなくても続ける理由

» 2004年07月21日 09時00分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「『mixi』は儲かっていません」――ソーシャルネットワーキングサイト「mixi」を運営するイー・マーキュリーの笠原健治社長はそう言い切る。

 mixiは同種のサイトでは国内最大級。ユーザーが他のユーザーに招待状を送ることで参加者が増える仕組みのコミュニティサイトだ。社員数人で3月に始めたが、ユーザーは1カ月ごとに倍のペースで増え続け、7月12日現在、4万5000人が参加している。

ユーザーの個人ページ。日記をつけたり、本やCDのレビューを書き、他のユーザーに見せられる。他のユーザーの日記にレスをつけることも可能

 ユーザーが増えれば、サーバなど設備の負担も重くなる。1日の総ページビューも200万以上。「サーバを1台増やしても数週間ですぐにパンパンになってしまう状況」(笠原社長)。

 人が増えればトラブルも増える。言葉の行き違いなどでユーザー同士にいさかいが起き、スタッフが仲裁に入ることもある。サービス内容も次々に拡充しており、開発担当者の手も割かれる。

 しかし利用は今のところ無料。収入源は現状、アマゾンとイープラスを利用したアフィリエイトサービスだけだが、「ほんのちょっとの足しにしかならない」(笠原社長)。

 アマゾンで販売している本やCD、イープラスが販売する各種チケットなどをユーザーがレビューで紹介し、ここを経由して商品・チケットが購入されれば、販売額の一部が運営者側に入る。しかし「1000万円売り上げても収益は30万円程度」(笠原社長)で、投資額にはほど遠い。

自然にユーザーが増える“オイシイ”モデル

 赤字でも運営を続けるのは、これまでのネットサービスになかった、“自然にユーザーが増える仕組み”にビジネスの可能性を見出したからだ。

 同社は、求人情報サイト「Find Job !」の運営で、ユーザーを増やすことの難しさを経験した。求職者がなかなか増えないため、有名サイトに広告を出す、メディアで取り上げてもらう、SEO(検索エンジン最適化)を導入する、コンテンツを充実させるなどさまざまに工夫。1997年のオープンから、登録求職者数が10万人の大台に乗ったのは、ようやく今年になってからだ。

 ところがmixiでは、開始からわずか約4カ月でFind Job!の半分近くにまで会員が膨れあがっており、勢いは止まらない。サービスの質さえ保っておけば、参加者自らが広告塔になってユーザーを増やしてくれるためだ。

 ユーザーが多ければ多いほど、新たな収益モデルを導入した時の実入りも大きい。当面はユーザー数拡大に専念し、十分に集まったタイミングを見計らって、広告を掲載したり、Find Job !への導入口としての利用、少額課金の付加サービスを導入するなど新しい収益モデルを取り入れる予定。基本利用料は無料をキープしたまま、年内には収支をトントンに持って行きたい考えだ。

笠原社長

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