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04年度無線LAN機器出荷台数日本一がほぼ確定 プラネックス社長が語る過去と未来(1/2 ページ)

» 2004年07月21日 16時09分 公開
[大出裕之,ITmedia]

シスコを凌駕するソリューションとしてのAirgo

―― Airgoとの提携はどのような経緯で始まったのでしょう。

久保田 私には神様がたくさん(笑)いるのですが、その一人であるぷらっとホームの本多会長からの紹介です。Airgoのサンプルを見せていただき、たまたま別件でWi-FiやVoIPの話もあって、それからパロアルトのAirgoへ行きました。

 弊社のAirgoに対する評価というのは2つあります。世間ではプレ802.11n技術である、というのが主要な興味のポイントですが、私としてはなんとも思っていません。速い、遅い、という話はどうということはないのです。近い将来に802.11nとして確定すれば、弊社だけでなくどんどん製品は出ますし、価格は安くなっていくでしょう。価格があるポイントまで来ると購買層が急拡大しますから、そのタイミングをどう読むか、という問題に過ぎません。

 我々プラネックスはSOHOベンダーという位置づけでずっと参りまして、さらに上のエンタープライズ市場に必死にチャレンジしてきました。僕らが今までやってきたプロダクトでどうしても突破できない壁というのは、SNMPv3やVLAN、そして認証などです。

 例えばNTTBPさんが無線LANクラブというサービスをやっていらっしゃいますが、全て、シスコ製を導入されています。理由は? というと簡単で、セキュリティの面と、管理ソフトを使って設定を効率よくダウンロードしたりできる、という点です。

 弊社はこれまで台湾ベンダーさんなどと共同開発などをやってきました。共同で開発するとしても、あるいは自分たちでSDKを買ってきて開発しても、おそらく1年はかかります。我々のマーケットにとって、1年というのはまったくの論外です。

 だからどうしたものかと思っていたときでしたので、Airgoに行ってみて驚いたのです。システムを作っているのはシスコから来られた方で、シスコよりいい物を作る、という意思のもとでの仕様書を見たときに、これだ、と思いました。

―― なぜ、御社はAirgoの世界最初のOEMベンダーになったのでしょう?

久保田 なぜかというと、TIもブロードコムも、もうまもなくプレ802.11nを出して来るのです。

 半導体を作れる畑には限りがあるのです。もう、年内のスケジュールは全部決まっていますし、来年ぐらいまでも決まってしまっていますね。確保してしまえば、誰も製品を出せなくなる。

 802.11gのときの“畑”は、ある時期ブロードコム1社という状況があり、そこをバッファローさんに抑えられてしまったのでどうしようもありませんでした。ところが誤算があるのは、今回のプレ802.11nは、4社くらいから出ています。4社も押さえるのは不可能なのです。

エンタープライズビジネスへの道のり

―― 法人向け新ブランド「Carrier Quality Series(CQS)」を立ち上げられましたね。

久保田 NTT-MEさんやYahoo! BBさんなど、802.11xの分野で日本はさらにインフラが安くなると思います。050ナンバーを持っていれば、ニューヨークへ行こうがタイに行こうが、ホットスポットに接続できれば、IP電話で通話できるようになるはずです。この技術のリーダーはやはり日本。いろいろな形で日本がリードしていくと思います。そういった通信事業者向けのアクセスポイントにぜひ採用していただけるべく、努力していきます。

 うちが作るのは、あくまでもデバイスです。バックエンドとしてはどこかと組むしかないんです。NTT-MEさんともそうでしたし。

 NTT-MEさんとのOEMというきっかけもよかったですし、そのおかげで、NTTコミュニケーションズさんとかいろいろなところからお話をいただけるようになりました。

 またこれからは学校のセキュリティは大事です。簡単にAdministratorのIDやパスワードを取ってこれるような機器を売ってはいけないのです。イジェクションがかかっていて、ぱくってもパスがわからない、かちっとしたものにしないといけないのです。シスコの現行製品は過渡期なのでしょうね。値段も高価ですし。他に選びようがないというだけです。

 今度汐留に、ビルを一棟借りして引越しされる会社がありますよね。社員食堂ができるとかいろいろなことが聞こえてきますが、そのビルでは当然完璧なセキュリティの無線LANを入れる必要があるわけです。弊社としては、そういうところに採用いただけるプロダクトでないといけないわけです。その選択肢はプラネックス以外に無い、くらいの勢いでやっていきたいと考えています。

 また、我々の機器であれば、メッシュ・ネットワーク(mesh network)を既に実現しています。ポータルアクセスポイントを設定すれば、基本的にどんどん増殖していく。シスコ製もそうですが、現在のソリューションの欠点は、新しく追加したものの設定が非常に大変だということ。Airgoは、つなげていくだけで、自動で設定していきます。

 しかも、RADIUSが入っていて、マルチSSIDで、なおかつツインビーコンであるという、まさにエンタープライズ市場にはうってつけの機能を搭載した商品になっております。学校や法人の無線LANネットワークというのはまだまだ全然導入が始まっておらず、これからの市場。理由は、セキュリティであったり、管理面、バンド幅の問題です。Airgoの技術であれば、各種マイグレーションにも耐えられます。設置台数も少なくてすむので、TCOの削減にも当然貢献します。

―― 海外にも販路をお持ちですね。

久保田 台湾、アジア、ミドルイースト、ヨーロッパですね。例えばアルメニアやウズベキスタンの政府系は、全部弊社の製品になっています。ものすごい勢いでオーダーが来ますよ。台湾市場では、ここ5、6年ずっと2位です。

 弊社は絶対の自信があるのですが、一度行ったら死ぬまで絶対にやめません。他社は代理店を変えたり撤退したり、いろいろやられているようですね。ですがそれをやると、大変です。我々香港の市場でも2番目です。

コンシューマー向けももちろん準備

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