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すぐにXP SP2を導入すべきか? 企業の答えは「待て」

» 2004年08月10日 17時51分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Microsoftはセキュリティを重視したWindows XP Service Pack 2(SP2)を正式に製造工程に向けてリリース、来週にはIT管理者、コンシューマー、PCメーカーに向けて提供開始するとしている。

 だがMicrosoftができるだけ早くアップグレードするようにと促す一方で、Techworldが話を聞いたIT管理者たちは、新OSと言ってもいいくらいのSP2を急いでインストールすることはないと語っている。

 SP2はWindowsのセキュリティ(それからMicrosoftの評判)向上を目指し、Windows XPのデフォルトセキュリティ設定に広範な変更を加え、新しいセキュリティツールとパッチ管理システムを提供する。変更の規模が大きく、またMicrosoft自身もこれらの変更が既存アプリケーションに障害を起こすかもしれないと認めていることから、企業はSP2を通常よりも厳格にテストしていると話している。「われわれはこれをOSのアップグレードとして扱っている」とある大手国際IT企業のITディレクターは語る。

 ソフトが完成した印である製造工程向けリリース(RTM)に達したにもかかわらず、最も冒険心のあるユーザーでさえ向こう数カ月はSP2を利用しないかもしれないとMicrosoftは語っている。同社によると、SP2はWindows XPのオンラインアップデート機能か、無料のCD、小売店、新規PCへのプリインストールを介して提供されるが、企業ユーザーは中央管理されたインストールプロセスを介して、自社のサーバからSP2を受け取る可能性が最も高いという。

 大企業がSP2を導入して稼動するプロセスは、これまでで最も長くなるだろう。そしてSP2を最初に手に入れられるのは大規模企業になると見られる。Microsoftによると、IT管理者は来週から、256MバイトのSP2のフルパッケージにアクセスできる。だがほとんどのPCにはフルパッケージは必要ないだろう。例えば、SP1と最新パッチをあてているPCの場合、必要なアップデートはもっと少ない。Microsoftの見積もりでは、Windows XP Home Edition搭載機の平均ダウンロードサイズは80Mバイト、Professional Edition搭載機は平均100Mバイト。PCにSP1がインストールされていない場合、ダウンロードサイズは20Mバイト増える。

 Microsoftは、パッチをバックグラウンドでダウンロードするWindows XPのAutomatic Update機能をオンにするようユーザーに勧めており、向こう2カ月のうちにこの機能を介して約1億台のPCにSP2を配布するつもりだ。SP2を手動でダウンロードしたいユーザーは、8月末まではそれが可能だろう。9〜10月には、SP2がプリインストールされた新しいPCが出回り始める見込みだ。

 北米以外のユーザーや、英語以外の言語を使っているユーザーは、SP2を入手するまでもっと待つことになるとMicrosoftは述べている。同社は2カ月以内にSP2を25の言語にローカライズする予定だ(7月13日の記事参照)。インターネットでの要望が多ければ、さらに遅れる可能性がある。

 Microsoftは、SP2はPCセキュリティを飛躍的に進歩させると表し、コンシューマーと企業にできるだけ早くアップグレードするよう促している。Windows部門マネジャーのバリー・ゴッファ氏は、「SP2はゲームなどのお楽しみ機能を提供するのではなく、顧客のインフラのセキュリティを改善する。SP2が全顧客に多大な価値を提供するよう、われわれはかなりの時間を注いできた。われわれはすべての顧客にSP2をできるだけ早急に導入するよう促している」と話している。

 だがIT管理者たちは急いではいない。IBMは社員に向けて、互換性テストが実施されるまで、SP2をダウンロードしないよう指示する通知を送っている(8月9日の記事参照)。Sophos Antivirusは、SP2はセキュリティを改善するだろうが、社内ですぐに導入する計画はないとしている。同社の広報担当者は、「当社にとっては、リリースされた日にすぐ導入してもメリットはないだろう。遅かれ早かれSP2は導入するが、目下の優先事項とは考えていない。それに導入するのは、適切なタイミングが来たと確信でき、適切に導入できるという自信が持てたときだけだ」としている。

 別の大手IT企業は、SP2は「広範な」品質保証が終わった後で導入するが、それでも問題は起きるだろうと述べている。「品質保証プロセスで見逃してしまう、避けられない互換性問題も幾つかあるだろうし、SP2自体の問題もあるだろう。われわれはMicrosoftが追加のフィックスを提供するものと思っている」とこの企業のITディレクターは話す。

 多くの企業は、SP2が約束しているメリットは好ましいと言いながらも、まだWindows XPにアップグレードしていない。業界アナリストによると、これは大手企業に共通の状況だという。Sophosの英国本社では、Windows XPマシンをほとんど使っていないという。別の企業のITスタッフは「これまで当社では、すべての新しいコンピュータにWindows 2000を導入しており、すぐにWindows XPに乗り換えるつもりはない」と話している。

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