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「mixi依存症なんです」――ソーシャルネットで人生が変わった26歳女性ITは、いま──個人論

» 2004年08月31日 15時49分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 タイトル:「日記を書いてから」。本文:「5分以上レスが付かないとそわそわします。病気かもしれません」。

 8月16日、東京に住む中村初生さん(26歳、ハンドルネーム:ふぁる)が、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)「mixi」に書いた日記だ。

 ネットが得意な友人からmixiに招待されたのは3月。PCは苦手で、チャットやメールに使うくらいだった。インターネットにも疎く、SNSが何なのかも分からなかった。mixiがその後の人生を大きく変えることになるとは、想像もしなかった。

 とりあえず、招待メールに従って、ログインしてみた。日記機能があったので、「お弁当のレシピに困っています」という日記を書いた。次の日、知らない人からレスがついた。嬉しかった。ほぼ毎日、日記を書くようになった。レスへの返事も欠かさなかった。

 日記にレスがついていないか、自分のページに誰かが訪問していないか、一日中、気になった。朝起きるとまずPCを立ち上げてmixiをチェック。会社でも、上司の目を盗んでは何度もアクセスした。休みの日は1日中mixiを見て過ごした事もある。友人との旅行にまでPCを持っていって、ホテルでもmixiをチェックした。

 「私、mixi依存症なんです」。

「ネットの人って、もっと“イタイ”と思ってた」

 友人リンク機能「マイミクシィ」にもハマった。マイミクシィは、他のユーザーにリンク依頼し、承認されれば、自分の友達として自分のページに表示できるという仕組み。知らない人ともどんどんつながれるのが楽しかった。

 ある時ふと思い立って、友人と、マイミクシィ数がどこまで増えるか競い合った。この勝負を見届けに、多くのユーザーが、中村さんのページに集まった。勝負の状況を伝える日記のレスで、いつのまにか、負けたほうの罰ゲーム――東京・飯田橋の中華料理屋で、巨大餃子を食べる――まで決まっていた。

 勝負には勝った。面白そうだったから、言われるままに巨大餃子の店を予約した。初めて主催した、mixiのオフ会だった。

 オフ会に参加したのは、勝負した2人と、それを見届けたユーザー11人。初対面の人も多かったが「皆いい人でびっくりした。ネットの人って、もっと“イタイ”と思っていたから」。

 mixiのオフ会は、その後何度も主催した。mixiのビジネスモデルをユーザー皆で考える「mixi版無敵会議」もその一つ。mixiが赤字運営だという記事を読んだ時、1ユーザーとして何か役に立てないかと考え、思いついた。

 場所を借り、内容を練り、80人以上のユーザーを集め、司会を務めた。もともと仕切るタイプではないし、人前で話すのも初めての経験だったが、大好きなmixiのためなら、何でもできた。

mixiで仕事を見つけたという“失敗”

 mixiで、仕事も変わった。4月のある日、mixiがきっかけで知り合った人から、自分が働いているIT系企業に来ないかと誘われた。

 東京で一人暮らしをし、コールセンターのバイトで生計をたてていた当時。実は、そろそろ名古屋の実家に戻ろうと考えていた。実家の母親の健康状態が悪かった。一人っ子の自分が支えてあげないくてはいけないと思っていた。

 「でも、自分と一緒に何かやりたいと言ってくれる人がいる。こんな機会は2度とないかもしれない」――悩んだ末、東京に残って仕事を受けることにした。バイトをやめ、その会社で営業職として週4回、働き始めた。

 マスコミがこのことを聞きつけ、取材に来た。SNSで仕事を見つけるという一つの“成功例”として、新聞に載った。

 でも実は、仕事を受けたことは後悔していた。会社側が期待していたのは、精力的にオフ会をこなし、人脈も広い“mixiのふぁる”。しかし、職場での自分は、シャイで人見知りで、営業は苦手。

 mixiのイベントなら、みんなに喜んでもらうため、盛り上がって楽しむために、頑張れる。でも、好きでもないものを売るための営業の仕事は、ただただ、辛かった。悩んだ。

 「辞めよう」――8月、決意した。

ネットのイメージと、現実とのギャップ

 「mixiを始めてから、一緒に何かしようと声をかけてくれる人は多くなった。mixi内での私は、モチベーションが高くて何でもできる人に見えるみたいで」。

 そのイメージは間違っていると、自分では思っている。「本当の私は、思いつきで行動するだけの、何もできない頭悪い子」。一人歩きする“ふぁる”のイメージと、自身の自己像とのギャップに、悩むこともある。

「mixiのよさを、たくさんの人に伝えたい」

 それでもmixiは大好きだ。mixiがきかっけで、友達が増え、イベントを主催し、仕事をもらい、インタビューを受け──想像もしなかった新しい人生が拓けた。mixiから受けた恩は計り知れない。

 今は、もっとたくさんの人にmixiの良さを知ってもらいたいと強く思っている。mixiを盛り上げるのに少しでも貢献したいから、イベントを積極的に主催したり、取材を受けたりと、広告塔の役割を自ら買って出る。

――あなたにとって、ITとは?

 「新しい世界を切り開いてくれたもの。自分の全く知らなかった、“別世界”に遭遇するきっかけをくれたもの」。

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