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企業内Blogは使い物になるか? 日立BOXERBLOGに見る方向性(1/2 ページ)

» 2004年10月29日 16時38分 公開
[木田佳克,ITmedia]

 パーソナルでの人気によって、BlogはISPを中心とするキラーサービスとなってる。企業内利用でもこの恩恵を受けられないものか? そう考える人は多いだろう。「使える」と「使い物になる」には開きがあるが、実際にサービスとしていち早く具体化したのが日立製作所だ。

 公式サイトのBOXERを見ると、これが日立なのか? と思うほどのフレンドリーさを感じる。7月に発表された企業内Blogサービス「BOXERBLOG」について、数カ月経った展開模様やBlog、RSSそのもの、そして企業内利用の見解を、日立製作所、ブロードバンドサービス本部コラボレーションウェア設計部BOXERビジネスグループ部長代理の小川 浩氏に聞いた。

反響には意外性もあった

ITmedia BOXERBLOGの発表から数カ月が経ちますが、どのような反響ですか。

インターネット上のBlogサービスについても幅広い見解がいただけた小川氏

小川 7月の発表には、まずはサービスインを急いだという理由があります。企業向けにはシックス・アパートのTypePad利用ですが、決済システムや、テンプレートを用意しました。しかし、これだけでは差別化のあるサービスではないため、実際に声を聞きながら拡充しているというのが実情です。

 これまでの事例としては、マーケティングのBlogとして、ブランド確立としてのメッセージ発信、営業日報や現存イントラネットのBlog化といった、インターネットとイントラネットそれぞれがあります。そして、大企業こそ取り組みたいという声が多いです。既にグループウェアを導入しているが、情報が読まれていないという問題解決からという問い合わせもあります。

 思っていたところと違っている面もありました。多くの企業ではBlogシステム自体が欲しいのではなく、情報の読み手を増やすにはどうすればよいのか? と悩んでいます。このため、イントラネット内情報のRSS化といった展開の方が、実は重みがあるかもしれません。

ITmedia 商用グループウェアの機能は補完できるということですか?

小川 グループウェアの多くはどうしてもプロプラエタリな環境なので、切り替える段階で大々的なカルチャーの変化が伴います。また、最近では情報のやり取りで標準的な部分がWeb化されているため、親和性の点でも疑問があります。RSSであればXMLベースということもあり、Webサービスとの応用も利きます。

 そして、企業内情報はやはりトップダウン型なので、この情報を知っているのは誰だろう? といった検索は、現行のグループウェアでは難しいという面もあります。また、Blogはこれほどまでパーソナルに広がったものなので、企業内でも操作のトレーニングが軽減できるシステムだとも考えています。

ITmedia BOXERBLOGのBOXER G3やVとの差別化点、位置づけを教えてください。

小川 まずBOXER G3はASPなので、ビジネスコンシューマ向けのグループウェアといった製品です。11月からはBOXER G3とBOXERBLOGをセットとした製品も展開していきます。

 BOXER Vはサーバごと販売する形態で、イントラネットのBlogとしてソリューション販売する製品です。スケジュールデータをRSSで取得するといった仕組みもあります。

 グループウェアもBlogも、情報共有という点ではいっしょです。なるべく同じ方向性でシンプルなソリューションを目指しています。

ITmedia BOXERBLOGは、G3やVとの補完関係、またライト版といった位置付けですか?

小川 ASP版であるBOXER G3はそうです。イントラネットのBlogではMovableType(以下、MT)を利用していますが、決してライト版という位置付けではないです。現存のイントラネット内ポータルをBlog化するというサービスもあります。

 社内情報をRSSクローラやRSSリーダーも用意しているので、情報共有のベースになり得ると考えています。グループウェアのスケジュール機能やワークフローはいらないという需要もあるのです。

BlogのためのBlogはいらない

ITmedia MTを始めとするほとんどのBlogでは、各ユーザーを統括管理する仕組みが完全ではありません。この点はソリューションとして補完するのでしょうか。

小川 MTもそうですが、データベースがPostgreSQLのためにDBのクラスタ化がしづらいという問題点があります。クローラーで情報インデックスを収集するというのが回答です。

 Blogを統括するためのBlogトップページを構築するよりも、RSSクロールして読み手を増やす方が重要だと考えています。すべての機能を包括していくのではなく、情報のハブとなればよいと思います。Webのデメリットとして、いつ情報が更新されたか把握しづらいという点があります。この点を補完するツールを用意すれば十分ではないかと考えます。

ITmedia Pingサーバを構築するというアプローチではないのですね?

小川 はい。企業内利用でありインターネットではないので、BlogのDBサーバが幾つあろうとクローラによる収集でカバーできると考えています。

ITmedia 日立がBlogへと取り組む強みは何ですか?

小川 日立はISP事業を持っていないのでその面では弱いのですが、企業内システムであればノウハウが豊富です。Blogで利用される機能をピックアップすれば、セキュリティ問題も関わってくるでしょう。トータルソリューションを持っているのが強みです。

 また、Blogは新しいものなので、企業としてのサービス継続も重要です。日立が取り組んでいるプロダクトという安心感もアピールできます。

 インターネット上のBlogサービスは、ある時点から拡張性よりもシステム維持に移行せざるを得ない状況になるでしょう。会員数増加や、セキュリティ問題からも考えられます。一方、イントラネットであれば、比較的思い通りに取り組んでいけます。比較的進化しやすいのです。

Blogの基本機能よりもハブとなる先を拡充する

ITmedia なぜTypePadを選んだのでしょうか、内製開発も考慮したのでしょうか。

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