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IPネットワークは鉄道をも動かす

» 2004年11月09日 13時07分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米Burlington Northern and Santa Fe Railway(BNSF)は、シアトル地区の路線に沿って3000万ドルのIPネットワークを敷設する「Sound Transit Telecom」プロジェクトの終点に近づいている。このプロジェクトにより、同社が信号やポイント切り替え器の制御に使う技術の信頼性は高まるだろう。同プロジェクトでは、光ファイバーおよびT1専用線でシアトルからワシントン州タコマまでの45マイル(約72キロ)を結び、IP音声、データ、ビデオトラフィックをサポートする3重の冗長ネットワークを構築すると、同社の担当者は今週、ネットワーク設備を巡るツアーの中で説明した。ネットワーク導入は2年前に始まり、2005年に完了する予定だ。

 BNSFの通信担当部長補佐フレッド・グラッケ氏は、同社が数十年間シアトルの線路とテキサス州フォートワース本社の線路網制御センターの間で信号の中継や命令の切り替えに使ってきたプロプライエタリな無線システムを、IPベースの技術で置き換えているところだと語る。

 光ファイバーケーブルと新しいネットワークスイッチ、ルータの方が既存システムよりずっと信頼性が高く、IPベース機器の方がネットワークキャパシティが高いとグラッケ氏。BNSFはバックボーン速度が1Gbpsで、スループットを10Gbpsに拡大できるEthernet-over-Fiber技術を採用している。

 これは、同社が政府から資金提供を受けて進めている2億4800万ドルの計画の一部だ。この計画では、3つ目の路線を追加し、シアトル・タコマ路線の信号・切り替え機能を拡大する。この路線は、貨物輸送、通勤通学、州間旅客列車に利用されている。同社は新しいネットワークを計画し、その導入の管理に当たっており、技術の保守も行う。だがその費用は地元の交通当局であるSound Transitが持つ。

 「3つ目の路線の追加で、信号と監視ポイントが増える。線路沿いの遠隔計測のポイントが増えるということだ」とグラッケ氏。情報の流れが増えれば、普通ならBNSFの無線チャネルは過負荷状態になるが、同社は「ファイバーで無限に近いキャパシティ」を持てると期待しているという。

 Sound Transitの研究・技術担当プロジェクトマネジャー、ニック・マルカード氏は、IPネットワークは拡張され、最終的にはIP監視カメラや通勤路線の駅の電子信号のデータ送信もサポートするようになると語る。

 今週の時点で、BNSFは新しいネットワーキング機器を収容した「バンガロー」を線路沿いに32カ所設置済みだ。45マイルの路線に沿って、50カ所のバンガローが設置される計画となっている。この建物にはNortel Networksのスイッチ、NECのIP電話、そのほか数社のベンダーの製品が収容されている。シアトル、タコマ、ワシントン州オーバーンの中央オフィスもIPネットワークに接続されるという。

 BNSFの信号機構において移行はスムーズに進んできた、と同社のワシントン州鉄道信号担当マネジャー、ジェームズ・アビー氏は語る。「当初、信号の担当者は皆IPを試すのをためらっていた。今まで使ったことのない類のものだったからだ」という。だが新しいネットワークは既存のものよりずっと信頼性が高く、電車の遅れは全くない。

 優れた信頼性のほか、ファイバーベースのネットワークは無線システムよりも安全だとBNSFの通信エンジニアリングマネジャー、グレッグ・ブリッツ氏。

 ブリッツ氏の説明によると、大きな脱線事故によりバンガローが破壊されたり、線路近くの地面が深くえぐられてバックアップのファイバーが切断された場合に備えて、ファイバーインフラは3重の冗長化が行われている。そうした事態が起きた場合でも、T1回線を介して重要な情報を中央オフィスと残りのファイバー回線の間で送信できると同氏は話す。

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