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米予算教書、緊縮型ながらIT支出増を見込む

» 2005年02月09日 18時28分 公開
[IDG Japan]
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 ブッシュ米大統領の2006年度予算案は、多方面で支出を切り詰めているにもかかわらず、IT支出については増額を見込んでおり、また、研究開発(R&D)税額控除の恒久化を米連邦議会に求めている。

 米財政赤字が過去最悪の水準に達していることから、予算案は150件の政府プログラムを縮小または廃止するという内容になっているが、政府のIT関連支出については、7%増の651億ドルを見込む。IT関連支出の約55%は国防および国内のセキュリティ対策に充てる計画だが、全米科学財団(NSF)によるIT助成金の26%近い増額も提案している。

 ブッシュ大統領は2月7日、議会に対し、歳出2兆5700億ドルの2006会計年度予算教書を提出した(2005年度の予算教書は歳出2兆4000億ドル)。米国の2006会計年度は、2005年10月1日から1年間。

 一方、科学技術予算については、2005年度の推定617億ドルから、2006年度は608億ドルに減額している。科学技術予算には、米標準技術局(NIST)による技術関連R&Dのほか、宇宙開発、再生可能エネルギー、農業研究などの予算が含まれる。

 議会がこの予算案を承認すれば、17の米連邦省庁の情報セキュリティ支出は、7%以上アップで1億1300万ドルの増額となる見込み。業界団体の米情報技術協会(ITAA)は、大統領の示したIT予算案を歓迎している。

 「米国は、科学、数学、エンジニアリングの面でピッチを上げる必要がある。世界中の国々が、技術分野における米国のリーダーシップに対し、明らかな挑戦の意志を示している。米国経済の安定は、この挑戦に対する回答いかんに懸かっている。その点で、NSFの活動はかつてない重要性を帯びている」とITAAのハリス・ミラー会長は声明で述べている。

 ブッシュ大統領は2006年度予算教書で、R&D税額控除措置の恒久化を提案している。R&D投資に対する税額控除の法案は、1981年に一時的措置として米議会を通過した後、何度も有効期限が延長されてきた。ITAAなどのITロビイング団体は、長らく、同控除の恒久的措置化を求めてきた。この措置の下では、R&D活動を行う米国企業は、R&D支出の10%まで、税額控除を受けることができる。

 予算教書では、正式には「試験研究費税額控除」(Research and Experimentation Tax Credit)と呼ばれるこの税額控除のために、2010年まで270億ドルを充てることを提案している。

 一方、NISTによれば、2006年度予算教書では、NISTの「先端技術計画」(ATP)の廃止が提案されている。ATPは、ハイリスクだが見返りの大きい民間企業の技術R&Dに資金援助するNISTのプログラム。ブッシュ大統領は2月7日のテレビ会見で、この予算教書を「無駄のない」予算案と表現している。

 ブッシュ大統領は2001年の就任以来、ATPを大幅縮小もしくは廃止しようと試みてきたが、民主党議員らの抵抗に遭っている。2005年度予算には、半導体研究と実験的ワイヤレス技術研究に助成するためのATP予算が組み込まれたが、一部には、ATPを「企業福祉」と呼んで批判する向きもいる。

 ATP支持派――2004年の民主党大統領候補ジョン・ケリー上院議員もその1人――は、ATP予算がカットされれば、製造業の費用削減や重要新技術の開発を助成する政府のプログラムがなくなってしまうと指摘している。「ATPは、ハイリスクだが大きな見返りを生む研究に対して資金を提供するものだ」と、大統領選挙に際してケリー陣営が作成した、オハイオ州有権者に向けた広報資料には記されている。

 2005年度予算では、見込額で1億3700万ドルがATPに割り当てられた。

 ホワイトハウスのジョン・マーバーガー科学技術政策局長によると、ATPに充てられた予算は、NISTでほかの分野に充てた方がうまく使われる可能性がある。「(ATPは)投資効果面で最高とはいえない」と同氏は記者会見で述べた。

 マーバーガー氏は2006年度予算教書を、2004年度に4120億ドルを超えた米財政赤字を減らす努力として「信頼すべき」内容だと擁護した。同氏は、R&D予算は「横ばいではないがそれに近い」と述べ、「難しい予算削減が盛り込まれている」とした。

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