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引退前のバレットCEO、Intelの今後に自信

» 2005年03月02日 15時43分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Intelのクレイグ・バレット氏は3月1日、Intel Developer Forum(IDF)での取材の中で、5月にCEO(最高経営責任者)を退任して会長職に就くことについて、ユーモアのセンスを忘れず、「上の階へと蹴飛ばされて、道を外れる」プロセスだとコメントした。

 Intelの定年退職規定に従って、バレット氏はIntelが2004年のさまざまな失敗や製造問題から立ち直りつつあるときに、日々の職務から離れることになる。同社はこの日、デュアルコア設計への移行に関する詳細を明らかにした(関連記事参照)。昨年のバレット氏が将来の製品の詳細を披露することに消極的だったことを考えると、今回の発表は、Intelがデスクトップ・サーバ製品のロードマップに昨年9月のIDFの時点よりもずっと自信を持っていることの表れだとアナリストは話している。

 基調講演後のマスコミとの会合でのバレット氏の振る舞いにも、同様の自信が見られた。この会合では、マイクロプロセッサ製造と将来のプロセッサ向けに開発される新たなアプリケーションの輝かしい未来に焦点が当てられた。

 IntelでCEOを務めた7年間を振り返って、バレット氏は、2001年に多くのネット企業が破綻した後の深刻なIT不況の中で、同社の収益性と世界最大の半導体メーカーとしての地位を維持したことを最も誇りに思うと語った。

 同氏は不況下に新たな製造技術に多額の投資を行うと決定したことに触れ、「Intelはテクノロジー企業だ。将来への投資を続ければ成功する」と話した。

 しかし、バレット氏の治世は何もかもがバラ色だったわけではない。Itaniumプロセッサはかつてサーバ事業の未来、そして業界の64ビットコンピューティングへの軌道として構想されたが、Pentium 4やXeonなどのx86プロセッサと違う命令セットとソフトを使う同プロセッサに対する市場の反応は芳しくなかった。

 「(Itaniumに)もっと急ペースで伸びてほしかったかって? それは当たり前だ」と同氏は語った。Itaniumの市場はIntelが当初描いていたよりもずっと小さいが、同プロセッサにはハイエンドサーバの未来がある、とも。

 同氏はまた、Intelは通信デバイス用の半導体アーキテクチャにおける専門知識を磨いていると主張した。通信分野の取り組みで、同社はこれまでに浮き沈みを経験している。同社のXScaleアプリケーションプロセッサはPDA・携帯電話メーカーの間で人気を博し、同社のフラッシュメモリ事業は何度か問題を抱えたものの比較的好調だ。そして地球上のほとんどのノートPCユーザーが、無線LANに接続するためのモバイル技術「Centrino」の名を聞いたことがある。しかし、同社は携帯電話向け通信チップに鳴り物入りで参入したが失敗した。どこの企業も、同社のManitobaプロセッサを搭載した携帯電話をリリースしなかった。

 携帯電話用通信チップの可能性をよみがえらせることが、2010年に向けたIntel最大の課題の1つであり、同社はこの技術への投資を大幅に増やしたとバレット氏は語った。同社はまた、次の10年に向けてトランジスタの継続的な縮小を可能にする新たな素材を特定し、これまでの性能向上のペースを維持する必要があるという。

 こうした投資の決定と課題はバレット氏の後任に指名されている社長兼COO(最高執行責任者)のポール・オッテリーニ氏に渡されようとしている。このCEO交代は、バレット氏が1997年にCEOに就任し、アンドリュー・グローブ氏が会長になったときと似ているとバレット氏は話した。

 バレット氏によると、オッテリーニ氏はCOOの役割を引き継ぐ幹部の指名を延ばす可能性が高い。Intelは最近、組織をデジタルエンタープライズ、デジタルホームなどの部門に再編し、オッテリーニ氏の後任候補と思われていた多くの幹部は新たな役目についたばかりだ。

 「これまで、われわれはCOOのポストを秩序ある経営の移行に利用してきた。ポール(オッテリーニ氏)は向こう数年かけてこの決定を下すだろう」(バレット氏)

 バレット氏の会長としての主な役割は、米国の教育システムの(同氏が言うところの)「お粗末な状態」への投資拡大を提言することになる。同氏はこの数年、米国は技術的な専門知識における優位性を失っており、この状況を改善する唯一の方法は学生にもっと科学技術に興味を持たせることだと熱心に主張してきた。

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