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WinHEC:64ビット時代の到来を告げたMicrosoft

» 2005年04月26日 21時48分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Microsoftは4月25日、待望久しいWindows Server 2003とWindows XPクライアントの64ビット版を披露し、Windowsの64ビット時代の到来を高らかに宣言した。さらに同社は、Longhornの新たな機能を紹介するとともに、64ビット技術および高度なモバイル技術の広範な普及に向けて同OSが果たす役割について説明した。

 Microsoftのビル・ゲイツ会長は同社の年次Windows Hardware Engineering Conference(WinHEC)のキーノートスピーチの中で、華々しくLonghornのデモを行った(関連記事)

 ゲイツ氏は、同OSの3Dグラフィカルインタフェースのメリットを強調する一方で、LonghornにはWinFSファイルシステムが搭載されないが、Windowsシェルだけでもメタデータの管理/ソート/表示を行い、そのデータを複数のシステムにまたがる仮想フォルダに整理できることを示した。

 MicrosoftのWindows部門のリードプロジェクトマネジャー、グレッグ・サリバン氏は、「人々がいちばん驚くのは、WinFSに関連した機能がWindowsシェルでも実現できることだと思う。この技術は、マイドキュメントやマイピクチャなどWindowsファイルエクスプローラーのすべての機能で利用できる。Longhornでは、メタデータの整理と検索が可能になり、メタデータは自動的にファイルエクスプローラーに結び付けられる」と説明する。

 WinHECのデモでは、半透明表示や陰影表示、表現力に富んだアニメーション機能を備えたLonghornのグラフィカルインタフェースのデモが行われた。サリバン氏によると、これらは単に見栄えを狙った改良ではないという。「今までできなかったような方法でデータを収集、整理、視覚化するのを支援するのが目的だ」(同氏)

 しかしサリバン氏によると、WinFS不在による最大の問題は、企業やサードパーティーの開発者が同技術の利点を活用したアプリケーションを作成するためのAPIが存在しないことだという。

 WinHECには2800人が参加する見込みで、参加者にはLonghornの開発者向けプレビューリリースのコピーが配布される。ただしこれには、ゲイツ氏のキーノートスピーチで紹介された3Dグラフィックやデータ管理機能は含まれない。Microsoftによると、この最新ビルドは基本的に、Longhorn用のデバイスドライバを作成する開発者やハードウェアメーカーを対象としたものだという。

 またゲイツ氏は、Longhornの32ビット版および64ビット版を良好なパフォーマンスで動作させるのに必要なデスクトップハードウェアの要件に関する「ガイダンス」も示した。

 Longhorn対応のPCでは、512Mバイトのメモリ、今日の性能標準で「メインストリーム」とされるPentiumプロセッサ、そしてLDDM(Longhorn Display Driver Model)をサポートするグラフィックカードが必要とされる。

 「現行のWindows XPロゴプログラムの要件を満たすマシンであれば、良好なパフォーマンスが得られる。メモリおよびビデオ性能に関する限り、32ビット版と64ビット版との間でハードウェア要件はそれほど異なることはないだろう」とサリバン氏は語る。

 Microsoftは、2006年のクリスマス商戦に間に合うようにLonghornを出荷する予定だ。ゲイツ氏はこの計画に変更はないと強調しながらも、具体的な出荷時期は明らかにしなかった。

 しかしサリバン氏によると、このスケジュールを達成するには、小売り向け製品の生産ならびにハードウェアメーカーのマシンへの組み込み作業に必要な時間を確保するために、出荷時期よりもかなり前に開発作業を完了する必要があるという。

 サリバン氏は、Longhornのリリース時期についてはコメントを避けつつ、「今年11月18日にWindowsが20周年記念を迎える」と話している。

新しいモバイルデバイス、Tablet PC、そして……

 関連ニュースとして、MicrosoftはWindowsロゴプログラムも変更する予定だ。同プログラムは「Gold」と「Silver」という2つのクラスに分けられる。

 Goldロゴの認定を受けるには、ハードウェアメーカーはLonghornの高度な機能を有効に活用したシステムを提供しなければならない。Silverロゴを取得するには、Longhornを十分なパフォーマンスで動作させるのに必要なハードウェアを備えたシステムを提供する必要がある。

 さらにゲイツ氏はキーノートスピーチで、新しい64ビット版WindowsとLonghornに組み込まれる新技術を活用したモバイルデバイスのプロトタイプを幾つか披露した。これらの新技術としては、Instant On機能や不揮発性メモリ対応機能などがある。

 そういったデバイスの1つが、「紙10枚分の厚さ」で対角9インチのスクリーンを搭載したTablet PCだ。タッチコマンドと音声コマンドをサポートし、バッテリーは丸一日持続する。しかもLonghorn対応PCに求められるすべての要件を満たすという。

 サリバン氏は、このシステムのメーカー名を明らかにしていないが、価格は500〜800ドルに設定され、2006年末ないし2007年初頭に発売される見込みだという。

 上下にスライドするヒンジを備えたTablet PCも披露された。この機構により、ディスプレイ部分を開いて回転し、再び閉じるという面倒な操作をしなくても、システムを簡単にTabletモードにすることができる。

 もう1つのプロトタイプとして、ディスプレイの裏側に小型の補助ディスプレイを装備したノートPCが紹介された。補助ディスプレイには、予定表やメール着信などの情報を表示することができる。

 予想通り、Microsoftは今週、Windows Server 2003の64ビット版で3種類のバージョンを出荷する。これらは「Standard Edition」「Enterprise Edition」「Data Center Edition」である。64ビットのデスクトップ版は「Windows XP Professional x64」と呼ばれる。

 Microsoftでは、64ビットのデスクトップ版は万人向けではないとしている。航空機の設計や石油の掘削業務など高度なデータ処理やグラフィック処理を必要とするアプリケーションを使用するハイエンドワークステーションのユーザーが主な対象だという。

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