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無線LANの盗用で逮捕者――ユーザーに求められる対策は?(2/2 ページ)

» 2005年08月09日 16時45分 公開
[IDG Japan]
IDG
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 EFFのバンクストン氏によれば、インターネット上に疑わしい犯罪がある場合、通常、捜査当局が最初の段階で探す証拠は、行動が実行に移されたIP(インターネットプロトコル)アドレスだ。米連邦捜査局(FBI)や全米レコード協会(RIAA)などの組織は、そうした人物の特定のために、インターネットサービスプロバイダーに召喚状を発行できることになっている。

 ハンター氏やバンクストン氏によれば、判断材料となるような前例があまりないものの、セキュリティが確保されていないWi-Fiネットワークの所有者が、単にそのネットワークから犯罪が実行されたという理由だけで有罪判決を受けることはおそらくないはずだ。ただし、その過程で、捜査当局が証拠探しのためにそのユーザーのコンピュータを押収し、違法にダウンロードされた音楽ファイルなどが見つかれば、そのユーザー自身が窮地に立たされることにもなりかねない。

 もっとも、バンクストン氏によれば、Wi-Fiの盗用を理由とする逮捕は依然として稀であり、ネットワークに入り込んだ人物の訴追が難しいケースもある。侵入者が、意図的に公開されているネットワークの信号を活用したのではなく、そうした信号を故意に探しまわっているということを証明するのは難しい。逆に言えば、無線信号を探していて、たまたま隣人の無線LANを見つけたという場合、それを理由に罰せられるという可能性は極めて小さいはずだ。

 セキュリティが確保されていない無線LANがどの程度の比率で存在するかについては、推測はまちまちだが、その主要な原因については、多くの観測筋の意見が一致している。それは、一般のユーザーにとっては設定が複雑すぎるということだ。

 2003年後半以降に製造された認証済みのWi-Fi製品にはすべて、ビジネスユースにも十分な強力な暗号化システムであるWPA(Wi-Fi Protected Access)が搭載されている。そこまで強力ではないが、それ以前に認証された製品も、少なくともWEP(Wired Equivalent Privacy)は装備している。たとえWEPでも、侵入を試みる側ではある程度の作業が必要となるため、多くは無防備なLANを求めて先へと進むことになるだろう、とジラード氏。

 ただし、ユーザーはどちらのシステムも使っていない場合が多い。問題に気付いていないか、あるいは設定の手順が分からないからだ。例えばWPAを設定するには、新規のWi-Fiユーザーは有効な「パスフレーズ」を考え、それをコンピュータに入力し、ネットワークを介してルータにも入力しなければならない、とWi-FiチップメーカーBroadcomの上級製品マーケティングマネジャー、デビッド・コーエン氏は指摘している。

 Broadcomは最近、Secure Easy Setupにより、この手順を簡略化した。Secure Easy Setupはパスフレーズを自動的に作成し、ユーザーはPC上のソフトウェアボタンをクリックし、ルータのハードウェアボタンを押すだけで、WPAを設定できるようになっている。Secure Easy Setupは現在、家庭用Wi-Fiギアの最大手であるCisco SystemsのLinksys部門の製品とともに出荷されており、コーエン氏によれば、Broadcomのチップを採用しているベンダー各社が今後、採用を予定している。

 Wi-Fi製品の認証を担当している業界団体Wi-Fi Allianceは、すべてのユーザーがもっと簡単に設定を行えるようにしたいと考えている。Wi-Fi Allianceのマネージングディレクター、フランク・ハンズリック氏によれば、同団体は2006年上半期に、ベンダーが組み込めるような標準を策定し、認証の対象とする計画だ。ただし、この標準はITプロフェッショナルがインストールするような複雑な企業向け製品には適さないため、すべてのWi-Fi製品に採用を義務付けるわけではないという。

 ユーザーの中には、依然として、ネットワークを公共サービスとして開放することを選ぶ向きもいるだろう、とEFFのバンクストン氏は語っている。そうした行動は、ブロードバンド契約の条項に違反している可能性があるだけでなく、そうした選択をするからには、上述したすべての保護手段を果たす必要がある。

 「ネットワーク許可の管理方法を知らないユーザーは、Wi-Fiをオープンにすべきではない。たとえ自分のしていることを自分で理解しているとしても、ネットワークをオープンにするということは、危険を高めていることになる」と同氏。

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