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「e-ウォームビズ」始動――空調服が冬服に参入(2/2 ページ)

» 2005年12月22日 14時15分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 「作業中にファンのプロペラが外れる」――空調服を納入した工場から今夏、クレームが相次いだ。順調に売上げを伸ばしていた矢先のできごと。同社はあわてて企業向け販売を中止し、ファンの改良に着手した。

 「作業服としての耐久性が足りなかった」と市ヶ谷社長は反省する。普段着として使うには十分だったが、激しい動きをする作業着には強度が足りなかった。同社はもともとブラウン管の計測器メーカー。洋服の開発は初めてで、強度の検証法も分からない。開発は今だに手探りだ。

photo 改良後の空調服を持つ市ヶ谷社長。改良後も外観はほとんど変わっていない

 顧客の要望は、強固なファンだけではない。粉塵が出る工場からは「粉塵を吸い込まないよう、ファンにフィルターを付けて欲しい」と言われ、自動車工場では「ファンの部分が車に当たると傷がつく」と改良を依頼され、火を使う工場からは「ファンを金属製にして欲しい」という依頼もあるなど、業種によって要望は多種多様だ。

 想定外の使い方から新たなニーズも生まれた。ある電力会社の下請けで保線工事を行っている企業が、空調服をスズメバチよけに使っていたという。空調服は、ファンの風で服をふくらませるため、肌と服の間にすき間ができ、スズメバチの針が届かない。夏でも長袖の厚着を余儀なくされていた保線工事事業者にとって、空調服は蜂よけと涼しさを両立する新たな解決策。同社からはズボン型の空調服の開発依頼を受けているという。

 「空調服は小さな会社なので、いっぺんにいろいろな対応はできない」ため、来年はまず、強固なファンを搭載したモデルや、フィルター付きモデルを発売する。10人弱の従業員で、できるところから始めていく考えだ。個人向けには“クールビズ対応”のYシャツ型や、デザインを改善した女性用も開発する。

 今年9月に中国に建てた生産工場は順調に稼動している。年間の最大生産能力は100万着以上というが、まずは少数生産を続けて品質を改善し、準備が整ってから大量生産に移る構えだ。来年の出荷見込みは5万着と、今年の2.5倍を見込む。

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