「ネットは能動的なメディアなので、暇があって、問題意識がある人にしか波及しない」(梅田さん)。ユーザーは、時間を割いて検索したり、ブログを書いたりしない限り、“ネットの知”には参加できない。
はてブの人気エントリーを眺めれば、暇や問題意識がなくても情報を得ることはできる。しかしそれも、マスコミの情報とは性質が異なると梅田さんは指摘する。
「マスコミは、マスに対する経験値を持った人が編集している。(はてブのような)ネットの自動秩序形成とは違う」(梅田さん)――例えばはてブは、ネットの世界をより豊饒にしていくだろうが、それがマスコミを置き換えることはないだろうと梅田さんは語る。
ネットとマスメディアを使い分る人も多い。既に知っていることについてはネット検索でより深く知り、あまり知らないことに関しては雑誌で概要をつかむ――といった形だ。このような使い分けは今後も続くだろうと梅田さんは述べた。
梅田さんは、ネットの力の拡張を信じるブロガーに対して、「『理論的にこうなる』というのが分かっていても、理論より進まないこともある」と指摘し、理論通り進んだ例としてレコードからCDへの移行を、そうでない例として、CDから音楽配信への移行を挙げる。
「レコードからCDへは、関係者全員が行きたかった。ミュージシャンは音が良くなるし、レコード会社はコストを下げながら高い値段を付けられる。しかし音楽配信はそうじゃない」(梅田さん)
それでも既存の秩序を取り崩し、新しい動きを進めたいなら、ネットコミュニティー内の議論で終始するのではなく、エスタブリッシュメント層にも届くよう言葉を磨き、説明し、分かってもらう努力が必要という。「ネットがマスを駆逐するという議論も、ネットに住む人間には面白いと感じられる。しかし、リアルな社会で忙しく働いている人には全く届いていないことがある」(梅田さん)
時が経つのを待つ、という手もある。「20年後には、今30代の若い起業家も50歳になる。そのころにはずいぶん変わっているだろうという気がする」(梅田さん)
ヘッドとロングテールはどちらが儲かるのか――SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「GREE」を運営するグリー副社長の山岸広太郎さんと、はてな副社長の川崎裕一さんを交えてディスカッションが行われた。
ヘッド型のビジネスモデルは、一部のヒット商品をマスに大量に売る旧来型のビジネス。ロングテール型は、ニッチで少数しか売れないが、多様な商品をそろえる形態で、Amazonなど品揃えの幅広いECサイトや、Googleのキーワード広告などがこれに当たる。
GREEはヘッド型で稼いでいるという。収益源はほぼ100%広告で、電通、博報堂といった大手代理店と契約し、マスに向けてPRするバナー広告などを掲載する。ユーザーがレビューした書籍やDVDなどからアフィリエイト料も入るが、微々たるものという。
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