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素人だらけの“IT劇団” ネットの力で超満員ITは、いま(3/4 ページ)

» 2006年03月03日 15時54分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 営業スタッフを配置し、企業に営業をかけてサイトのバナー広告を売った。IT企業の知り合いのツテをたどり、宮崎さん自らも営業に走った。4社〜5社から広告が入り、60〜70万円売り上げた。

画像 「情熱がある人はたくさんいて、新しいエンターテインメントが育つ可能性は埋まっている。ただ、彼らには資金がない」と宮崎さんは言い、企業にサポートを訴える

 ブログの活用法を考えるセミナーも開き、スポンサーから出資を募った。3社が参加し、20万円の黒字を出した。セミナーではブロガーにも演劇をPR。「スタッフとして働きたい」と申し出る参加者もいた。

 資金も集まり、スタッフも増え、サイトの充実度も増した。Web担当スタッフには、有名掲示板サイト「したらば@JBBS」を運営していた古川健介さんや、SNS研究家の原田和英さんなど“カリスマ大学生”が集まり、アクセスアップの策を練った。

 「流行に乗ろう」と公開したポッドキャスティングは、月間1万5000ダウンロードの人気。劇団員のブログもアクセスを集めた。公式サイトの月間ページビューは、オープンから4カ月目の8月、30万に達した。

迫る公演、売れないチケット

 公演2カ月前の10月。チケットのネット販売が始まる。120枚×5公演の全600枚。100枚も売れれば上出来と言われる劇団の初回公演としては異例の数だったが、「劇団員は30人いたから、1人20枚計算」(宮崎さん)。売り切る自信はあった。

 初動は鈍かった。発売から3日間は「吐きそうなほど売れなかった」(宮崎さん)。手売りとネット通販半々で売り出したが、初日と千秋楽以外がとにかく売れない。

 手売りを強化しつつ、サイトの集客力に賭けた。コンテンツは毎日更新し、エントリーの最後に「チケットはこちら」とリンクを入れた。購入手順の解説ページも作った。「コンテンツに“必死感”が出ていたんだと思います」(宮崎さん)。サイトのPVは月間50〜60万に上がり、チケットは初公演直前に売り切れた。

 11月25日の初公演。「中目黒ウッディシアター」(東京都目黒区)は観客であふれた。当日券は瞬く間に売り切れ、入場できない人まで出た。

 素人集団の初舞台としては考えられない盛況ぶりに、劇場のベテランスタッフは宮崎さんに言った。「君たちは、小劇場演劇界に風穴を開けたね」。何よりうれしい言葉だった。

画像 公演の様子。写真:関根一秀

 観客の評価は、想像以上に高かった。「素人とは思えなかった」「予想以上に楽しめた」「何度も笑わせてもらった」。初公演を見て宮崎さんは、思わずつぶやいた。「演劇って、報われるものなんだ……」

 公演後、公式サイトのGoogleランキングが急にアップした。ブログでたくさんの人が感想を書いてくれたからだった。

 初回公演で解散するつもりだったブサイコロジカル。は今、第2回公演に向けて走り出している。「みんな、演劇が好きになっちゃって」(宮崎さん)。ただ次はもう、素人じゃない。

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