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バージョン過多はVistaの意義をあいまいにする

» 2006年03月07日 15時30分 公開
[Peter Coffee,eWEEK]
eWEEK

 ハードウェアのアップグレードの必要性に対するMicrosoftの消極的な姿勢は、Vistaへの無関心を広げることになるかもしれない。

 従来、大衆市場向けOSのメジャーリリースは、ハードウェア基地にも「更新」指令を送るのが普通だった。ユーザーは、新しい機能と利便性を実現するために、より多くのメモリ、より高速なプロセッサ、より強力なグラフィック性能というコストを受け入れてきた。

 しかしMicrosoftは、Windows Vistaが次のそういったサイクルを引き起こす能力に関して、同社らしからぬ消極的な姿勢を見せている。

 例えば、先週発表があったように、同社では、約束された新しいユーザー体験の基本要素となる特徴的な新ユーザーインタフェースとコラボレーション機能を備えていないバージョンを提供する計画だ。これは、広範なハードウェアのアップグレードを促すような革新的なユーザー体験を、Microsoftがこれからも提供していく自信がないことを示すものだ。

 現在Windows XP(あるいはWindows 2000)を使っているユーザーにとって、Vistaは魅力的なアップグレードでないという雰囲気を開発者が感じ取ってしまうと、彼らが新プラットフォームの機能を利用した新しいアプリケーションを開発する勢いも鈍ることになるだろう。

 ボリュームソフトウェア市場に単一の明確なコアプラットフォームが存在するという状況がなくなれば、開発者はプラットフォームに依存しないアプリケーションフレームワークを学習/利用することによってリスクを分散しようと考え始めるかもしれない。あるいは、Vistaの印象的なシッククライアント的改良に習熟するよりも、リッチなWebコンテンツの開発などの手段によって付加価値を提供することに注力するようになるかもしれない。

 今、だれもが注目している技術株のGoogleは、質素なユーザーインタフェースを強大なバックエンドパワーで支えることによって優位に立っている。この手法は、OSやハードウェアを大幅にアップグレードしなくても、ユーザーのPCの使い方を根本的に変革するものだ。これはいまだかつて前例のないアプローチであり、Microsoftはそれが新しい標準にならないよう祈る必要がありそうだ。

 しかしMicrosoftのメッセージが、Vistaが従来OSよりも根本的に優れている点はどこにあるのか、そしてその機能を最大限に活用するのに必要なハードウェアにアップグレードすべき理由について混乱をもたらすようなものであるとしたら、そのメッセージは人々に届かないかもしれない。

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