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損失は数十億ドル? Vista延期の波紋(2/2 ページ)

» 2006年03月23日 17時15分 公開
[John G. Spooner,eWEEK]
eWEEK
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 Gatewayの広報担当者はeWEEK編集部への電子メールで、次のように語っている。「これで、年末商戦期に向けた準備をより整然と進められる。そしてVistaの実際のリリース時期にかかわらず、Microsoftによるリリースに先立ち、当社のPCを完全に同OSに対応させることができる」

 だがPCメーカー各社は、この互換性を確実にするための具体的な取り組みについての詳細な説明を断っている。

 ケイ氏などのアナリストは、PCメーカーはMicrosoftがスポンサーとなったアップグレードクーポンを提供すべきだと提案している。

 「Microsoftは、パートナー企業がこの状況を切り抜けるために協力する姿勢を明らかにしている。つまり、アップグレード証書など、あらゆる種類の金銭的支援を意味している」とケイ氏。

 だが、アップグレード証書だけでは、第4四半期にPCを購入するつもりのすべてのユーザーを取り込むことはできなさそうだ。

 「どうしても購入したい人にしか効果はないだろう。消費者のなかには、自分のPCにOSをインストールしたがらない向きもいる。いかに簡単な作業かをどれだけアピールしても駄目だ。そうした人たちは、PCをパッケージとして丸ごと購入したいと考えている」とケイ氏。

 リリース延期は、AMDやIntelなど多くの半導体メーカーのほか、ATI TechnologiesやNVIDIAなどのグラフィックスチップメーカー、そしてMicron Technologiesなどのメモリメーカーにも影響を及ぼすだろう、とMerrill Lynchのアナリスト、ジョー・オシャ氏は指摘している。

 「Windows Vistaが2006年の年末商戦期から姿を消したことは、単に数週間の遅れが意味する以上の大きな影響を半導体企業に及ぼすだろう」と同氏はリポートで指摘している。

 AMDとIntelはいずれも、新しいPCプロセッサとそのサポートチップを第3四半期にリリースすべく取り組んでいる。だが今回のリリース延期を受けて、PCメーカー各社はそうしたチップを搭載するハイエンドシステムを年末商戦期に向けて投入することにそれほど熱心ではなくなっている、とオシャ氏はリポートで指摘している。

 結果として、AMDとIntelはそれほど最先端ではないチップの販売を主に価格面で競い合うことになるだろう、と同氏。同じような影響がメモリメーカーやグラフィックスチップベンダーにも及ぶことになりそうだ。Windows Vistaはこれまでよりも多くのメモリを必要とするとされており(現在の標準の512Mバイトに対し、Windows Vistaは約1Gバイト)、またWindows Vistaの高度なユーザーインタフェースの一部は強力なグラフィックス処理能力を必要とするからだ。

 一方、Windows Vistaがどれだけのグラフィックス処理能力を必要とするかについては意見が分かれるところだ。ただし、PC企業は高度なグラフィックス機能を備えたマシンをVista搭載マシンとして売り込むことになりそうだ、とオシャ氏は指摘している。

 「2006年の年末商戦期にはコンシューマー向けVistaによる後押しがないということであれば、GPUの販売にも若干マイナスの影響が及ぶだろう」と同氏。

 Intelの広報担当者は、Vistaのリリース延期に関するコメントを断っている。

 ベイカー氏はVistaのリリース延期に伴う金銭的な損害を考慮し、Microsoftが同OSを1月にリリースするという決定を批判している。3月や4月のリリースであればそれほどでもなかっただろうが、1月というタイミングは年末商戦期にあまりに近いため、需要を失速させるのに十分だ、と同氏は指摘している。

 そのため、ベイカー氏は今年の年末商戦期のPC販売台数の見通しを下方修正するかもしれないという。「まだ時期尚早だが、その点を踏まえ、おそらく予想をある程度、下方修正することになるだろう。販売台数にマイナスの影響が及ぶだろう。売上高にもマイナスの影響が及ぶだろう。すべてにマイナスの影響が及ぶだろう」と同氏。

 だが、誰もがここまで否定的な見通しを抱いているわけではない。

 Bear Stearnsのアナリスト、グリンダー・カルラ氏は次のように語っている。「われわれは今の時点では、2006年下半期のPC業界の販売台数の需要減はほとんどすべて、2007年上半期に取り戻せると予測している。また、OEM各社も2006年第4四半期の需要拡大に向けた手段を講じるだろう」

 だが同社は2006年第3四半期と第4四半期については、AMDとIntel両社の見通しを引き下げており、2007年第1四半期と第2四半期については、両社の見通しを引き上げている。メモリメーカーのMicronとグラフィックスチップメーカーのATIおよびNVIDIAについても、同社は同様の調整を行っている。

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