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求ム! 技術が分かるCIO

» 2006年05月18日 16時55分 公開
[Jim Rapoza,eWEEK]
eWEEK

 近年、IT管理者の間ではもっとビジネスに詳しくなろうという大きな動きが起きている。ビジネスコースを履修したり、さらにはMBA(経営学修士)を取得する上級IT管理者やCIO(情報統括責任者)が増えている。

 わたしはこの動きを大いに支持している。ビジネス慣行をよく理解しているIT管理者は自身のキャリアを強化でき、また勤務先にとってもより高い価値がある。さらにCEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)、その他CXOのビジネス用語を理解しているIT管理者は、企業の技術側とビジネス側の間に存在する言葉と知識のギャップを埋める助けにもなる。

 だが最近、第一線にいる読者から、少なくとも一部の企業でこのトレンドが行きすぎているかもしれないという意見が寄せられている。彼らが言うには、今や技術的な知識や経験が少ない、あるいはまったくない上級IT管理者やCIOがいる企業は珍しくないという。

 技術スキルはあるがビジネススキルのないIT幹部は心配の種になることがあるが、ビジネススキルはあるが技術スキルのない上級IT管理者はまったく意味がない。

 どうしてこんなことが起きているのだろうか?

 CEOと新しい幹部候補の間で、こんな会話が交わされているところを想像してみた。

ナンシー「ボブ、あなたを経営陣の一員として迎えたいのはやまやまだけど、今空いているのはCIOのポストだけなの」

ボブ「大丈夫ですよ、ナンシー。ちゃんとやれますよ。なぜって、わたしは先週新しい自宅用のコンピュータを買ったんです。自力で全部接続して起動できました。それに、言ってませんでしたっけ? わたしはPowerPointの達人なんです」

ナンシー「それでいいわ。あなたはうちの新しいCIOよ」

ボブ「素晴らしい。母に報告するのが待ちきれないですよ。チーフ・インフォテッキー・オフィサーになったんだよって」

 このトレンドに拍車をかけているのが、現代技術が複雑だと思われていることだ。一部の人は、技術の絶えざる変化、革新、入れ替わりを見て、あまりにも複雑でめまぐるしすぎて、技術スキルのある幹部でさえ扱いきれないと感じている(セキュリティに関しても同じような感覚がある)。だから、ビジネスマンを雇って、コンサルタントや分析会社のアドバイスに従わせればいいじゃないか、ということになる。

 しかし、これはビジネス的には意味をなさない。コンサルタントや分析会社は、あなたの企業のことは知らない。おそらく、彼らはあなたの会社を似ていると思われる別の顧客になぞらえようとするだろう。そして実際にあなたの企業に合っていようといまいと、その顧客と同じものを得ることになる。

 技術的な面で競争上の優位を保つためには、技術のアーキテクチャ、用語、仕組みを理解しているIT幹部が必要だ。こうした人たちは、コードを書けなければならないとは言わないが、技術を理解していなくてはならない。例えば、車を買おうとする人はおそらくエンジンの改造方法を知らないだろうし、現代の車の場合は、整備の方法さえ知らないだろう。それでも4シリンダーエンジンと6シリンダーエンジンの違いは分かるし、ハイブリッドカーのメリットと早期導入のリスクも知っている。それに、これが一番大事だが、車が自分のライフスタイルにどうフィットするかも分かっている。

 いいIT幹部は、少なくとも自分の会社のために購入しようとしている技術に関して、それと同じレベルの理解がなくてはならない。だが、もしも純然たるビジネスマンにSOA(サービス指向アーキテクチャ)の評価を頼んだら、それは車を運転したことがない人に車を買ってくるよう頼むようなものだ。

 ほかの多くのビジネス分野でもそうだが、ほどよいバランスは最高の成果をもたらすことが多い。技術職出身だが強力なビジネス経営スキルを取得したIT幹部は、自社のビジネスニーズと戦略を理解しつつ、自社に最適なITの選択肢を効果的に評価できる。

 正直言って、これがほかの業務分野だったら、関連する経験がない人物を起用したりするだろうか? 会計や金融のスキルがない人をCFOにする会社はそうないと思う。

 今考えてみると、「チーフ・インフォメーション・オフィサー」という名前が問題なのかもしれない。つまるところ、誰もが何らかの情報を持っている。厳密に言うなら、CITO(最高情報技術責任者)と呼ぶべきだ。

 とは言え、考えてみると、「チーフ・インフォテッキー(情報技術屋)・オフィサー」はちょっといいと思う。

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