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はてな、アメリカへ(3/3 ページ)

» 2006年07月14日 11時00分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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何をするかは「行ってみて考える」

 昨年12月、1人でアメリカ出張して決意を固め、帰りの飛行機でプレスリリースを書いた。日付けは、はてな5周年記念の2006年7月15日。この日に発表できるよう、準備を進めてきた。

 今年3月30日に、資本金10万ドルで米国支社「Hatena.Inc」を設立。旅行でも出張でも合宿でもなく、シリコンバレーに腰を据える覚悟を決めた。何事も中途半端にはできない。そういう性格だ。

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 シリコンバレーで何をするかは「行ってみて考える」という。まだ家も決めていない。しばらくは、社外取締役の梅田望夫さんのオフィスに間借りして仕事をし、家を探し、何をすべきか見極める。

 漠然としたプランはある。ミッションは3つ。(1)世界的な視野を持った英語サービスを作る、(2)ネット界で有名な人と知り合い、最新技術を学ぶ、(3)GoogleやAmazonなど、すでに日本法人と付き合いのあるネット企業との関係を強化する――だ。

 昨年から何度か、シリコンバレーに行った。思ったほど日本と違わないと感じている。「追いかけている技術や、やってることのレベル、面白いものを作る発想力は、敵わないという気はしなかった。これなら何とかできるんではないかという、勘違いした期待を持ってる」

 だた、技術者を取り巻く環境が違うという。「技術者を尊重し、育てていこうという風土とか文化、見る目が全然違う」。その中でもまれ、1つ殻を破りたい。

不安はあるが

 1〜2カ月ごとに日本に帰ってくる。社内との連絡は、Skypeやチャット、「はてなグループ」などを駆使。「開発合宿時の経験が生きてます」

 はてなは1カ月に1回のペースで、新サービスを開発を目的とした合宿を行ってきた。「3週間東京にいて、合宿で1週間はいない、という生活だった。それが3週間東京にいなくて、1週間いる、となってもそんなに大きく変わらないのでは」――アメリカ行きは、長期の開発合宿のようなもの。今までと大して変わらないと笑う。

 とは言ってももちろん、大きな賭けではある。

 「不安がないと言ったら嘘。日本法人が組織的にバラバラになったり、ビジネスの加速度が落ちてしまうというリスクはある。向こうに行っても鳴かず飛ばずで誰からも注目されず、日本の会社もガタガタになって成長が止まってしまう、という最悪のシナリオも考えられる」

 だが悪いことばかり考えても仕方ない。「理想的なシナリオは、アメリカで始めた何かが人気を集め、ビジネスとして立ち上がって拡大して――もっと理想を言えば、いつの間にか向こうの方が大きくなってきて、『どっちが親会社だよ』みたいになっている状態」

 7月17日に日本を出発し、最低2〜3年はいる計画だ。アメリカで何者かになる。日本法人は大丈夫。そう信じて進むしかない。

 渋谷の外れの閑静な住宅街。平屋建てのベンチャーインキュベーション施設の一角に、はてなの本社オフィスはある。

 近藤社長お気に入りの場所は屋上だ。屋上で会議したり、パーティを開くこともあるという。上ってみると、都会の真ん中とは思えないほど空が広い。

 一段高い場所に立ち、少し向こうに見える、青い屋根のマンションを指して近藤社長が言う。「あそこに図書室を作ろうと思って。オフィスはもう、狭くなってきたから」

 小さな渋谷のオフィスに収まりきらない何かが、ぽんと弾けて世界に飛び出す。

 シリコンバレーも、同じ空の下にある。

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