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「燃えないノート」――電子機器標準化団体、バッテリーに関する規格策定へ(2/3 ページ)

» 2006年08月28日 14時01分 公開
[John G. Spooner,eWEEK]
eWEEK

 委員会は、バッテリーセルの設計とともに、セパレーター、電解液の構成、陰極板と陽極板に使われるコーティング構造など、セルの内部部品に使われる素材の純度に注意を払っていく。

 このほか、セル内汚染物質の測定方法と、汚染物質の量の変化がセルに及ぼす影響にも取り組んでいく、とグロッソ氏は説明した。

 DellとAppleによるソニー製バッテリーセルのリコール事故の原因は、同バッテリー内に混入した汚染物質だった、とソニーは認めている。

 リチウムイオンセルの外観は、スープやニューイングランド式ブラウンブレッドの缶詰に似ているが、内部はロールケーキのようになっている。

 コーティングされた2枚の金属の薄片が絶縁層によって隔離され、コイルに巻き込まれている。このコイルが電解液の入った金属製容器に納められ、封入されている。

 「外部が極めて高温だったり、過剰な量の電流が流れたり、過充電が生じたり、コイルの層の間でショートが発生した場合、セルが壊れる可能性がある」(グロッソ氏)

 「今回のリコールにつながったのは、このショートによる事故だった。非常にまれなことだが、製造過程で混入した金属粒子がセル内でショートを起こし、発火を引き起こすことがある」と、Dellのエンジニアリング担当副社長、フォレスト・ノロッド氏は、8月22日付のDellのDirect2Dellブログで記している。

 Dellの「最近起きている事故のそもそもの原因は、適切な量の――あるいは適切でなかったかもしれないが――金属粒子が、セル内の誤った位置に入り込んだことにある」と同氏はブログで記している。

 「まれに、こうした汚染物質はショートを引き起こして大量の熱を発し、セル素材を壊すことがある。これによりさらなる熱と酸素が発生する。セル内にある可燃物質に、酸素と熱が加わる――すべて発火を引き起こす要因だ。このプロセス全体が急速に起こるため、バッテリーパックの安全装置でこれを防止することができなくなる。安全へのカギは、クリーンな製造プロセスと重要な部分への粒子の混入を防ぐセル設計だ」(同氏)

 したがって、委員会は、問題点を故意に加速・悪化させることでこうした事象の発見方法を探るなど、テストにも焦点を当て、事故防止への努力を進めていく考えだとグロッソ氏は述べた。

 Cisco、Lucent、IBM、Motorolaなどもメンバーとして参加する重要部品委員会は、常にバッテリーにだけ注目してきたわけではない。同委員会が今年4月に策定した最初の標準規格「IPC 9591」は、電子機器で使われるファンを規定するためのものだ。

 今年2月に開かれた同委員会での議題は、電源と部品設計、そしてバッテリーも同委員会が手掛ける分野だ。重要部品委員会は2年前に設立。母体のIPCは、製造規格を通じて電子業界間の橋渡し役をうたう業界団体として1957年に設立された。

 「バッテリーは3番目の議題だった。『バッテリーは重要だ。議題に入れよう』ということになったが、これに対処する新しいチームを結成することはなかった」とグロッソ氏。

 「バッテリーに検討すべき課題があることを、皆認識していたのだと思う。しかし当時は、不安レベルをあるべきところまで引き上げることができなかった。そして2カ月前、わたしは中心的な役割を果たしているチームのパートナーに対して『この問題を進めるべきだ。合同ミーティングをいつ開こうか』と呼び掛けた」(同氏)

 グロッソ氏は、プロセッサやチップセットなど広範な部品調達を管理しているDellの調達部門に籍を置いており、同社のモビリティ製品部門とは別であるため、Dellによるバッテリーパックのリコール計画については一切知らなかったとしている。

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