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楽天はなぜWeb2.0のプラットフォームになれないのか(上)ネットベンチャー3.0【第6回】(2/3 ページ)

» 2006年09月01日 10時45分 公開
[佐々木俊尚,ITmedia]

便乗型モデルの問題点

 しかしこの(1)の便乗型モデルには、ひとつの問題がある。結局のところ、最大の利益を得られるのはプラットフォームを作っている側であるという問題だ。このあたりはfladdict.net blogで今年4月に書かれた、「WEB2.0って結局は“地主制度2.0”なんじゃないの?」という秀逸なエントリーで的確に表現されている。少し引用させていただこう。

僕は今しきりに取りざたされてるマッシュアップとか、創発性なんてのは多分WEB2.0の表層であって、本質的な部分はあくまで“Data as next intel inside”によって占められている。そして、そこは既にGoogleやAmazonによってかなり前からポジションどりがされている。

 利益率は低そうななのに、やらなきゃ乗り遅れるWEB2.0のジリ貧競争にまきこまれ、同業他社と不毛なサービス合戦をしてボロボロになりながらも、得られるものは5%アフィ程度、どちらが勝とうが結局サービスを提供するGoogle様はしっかり儲かる。まさに死の武器商人に踊らされる紛争地帯。それがWEB2.0なんじゃないだろうか。

 で思うに、マッシュアップやらなんやらというのは、Google様やAmazon様という大地主によって与えられた土地で、小作人として生きる道ことを、なんかキレイに着飾ってごまかしているにすぎないのではないかと。

 だから「小作人」となることに耐えられない企業は、GoogleやAmazonに対抗して自らプラットフォームを目指すことになる。先に挙げた(2)の進化モデルだ。

進化型の成功例:GoogleとApple

 だがプラットフォームになろうとすれば、技術やビジネスモデルで圧倒的に他社に優位に立たなければならない。小作人モデルで進化するのと比べれば、一段高いステージに立たなければならないのである。

 たとえばGoogleに関していえば、そのプラットフォームの優位性は今さら言うまでもない。1998年に設立された当初は、本当に小さなシリコンバレーのベンチャー企業だった。当時すでに検索エンジンを扱う会社などはありふれた存在で、まさかGoogleがこれほどまでに巨大化するとは、業界関係者の誰も想像していなかった。だがサービスがローンチして間もなく、そのテクノロジはすぐに注目されるようになった。当時すでに数多く存在していた既存の検索エンジン――AltaVistaやInktomi、Magellanなどに比べ、Googleは「求めている結果をきちんとユーザーの目の前に提示する」という検索エンジンの基本的な性能が傑出していたからだ。

 Googleの技術力に、コアなインターネットユーザーたちは驚喜した。「Googleの成功の秘密は、口コミでその人気が広まったことにある。ファンたちがGoogleの驚異的な機能について熱狂的に騒ぎ立て、その輪がどんどん広がっていったのだ」(Sunday Herald Online紙)と言われるほどだったのである。Googleがインターネットのインフラとなってきた背景には、この圧倒的な技術力がある。

 それはAppleのiPodでも同様だ。iPodが爆発的に売れ、本体の販売益やそれに伴う音楽配信などの音楽事業が、Appleの全売上高に占める割合は40%を突破しており、いまやAppleはiPod企業になりつつあるといっても言い過ぎではない(関連記事)。そのあまりの成功ぶりにAppleの復活や、音楽プレーヤー市場が過熱していることばかりが新聞やテレビなどでは注目を集めているが、しかしiPodは一方でモバイルメディアの巨大なインフラになっている。

 iPodのメリットは2つある。1つは、ハードウェア自体のデザインが素晴らしくて魅力が大きく、これが他の携帯音楽プレーヤーにはない圧倒的な普及率となって現れていること。そして2つ目は、ハードウェアのiPodとアプリケーションソフトのiTunes、それに販売サイトのiTunes Music Store(iTMS)という3つの局所をすべて押さえていることだ。この2つの圧倒的パワーによって、iPodはプラットフォームの座を手中にした。

 そしてこれらのアドバンテージを背景に、iPodは放送電波やケーブルテレビ、衛星放送、インターネット回線などとならぶ新たな「メディア」になろうとしている。オーディオだけでなく、ビデオ機能も備えるようになってその可能性はますます高まり、今後はさまざまなコンテンツや情報のコンテナー(容器)として利用されるようになる。

 そしてiPodとiTunes、iTMSが積み上がったビジネスは、完全に垂直統合されている。ハードからアプリケーション、ウェブまでが整然と統合されたことで、これまでの水平分業では実現できなかったような、優れたインタフェース、優れた使い勝手が提供される結果となった。

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