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「散歩」で始まり「短距離走」で終わったMSの1年(2/2 ページ)

» 2006年12月25日 14時46分 公開
[Peter Galli,eWEEK]
eWEEK
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 エンダール氏によると、Microsoftにとってもう1つの問題はイメージの悪さだという。企業や個人は今もなお同社を信用していないと同氏は指摘する。同社の市場への影響力がなければ「ツール企業としての戦略に反するため、おそらく開発資金が出なかったはずの」Zuneのような製品が、「実際に市場に投入されている」という。

 チェリー氏は、Microsoftが重要なメッセージ――例えば、Novellとの合意についての説明――を明確に伝えられない点を懸念している。同氏はこの合意について、MicrosoftとNovellによる顧客の意識調査では好意的な結果が得られているものの、「混乱を招く」と考えている。

 「Office LiveとWindows Liveが実際にはどんなものか、どれが新しい革命的なアプローチなのか、新しいサービスなのかPassportなどのMSNのサービスをパッケージングし直したものなのかという明確な説明もなかった」(同氏)

 同社はまた、製品の提供時期やその内容についても十分に明かさなかった。

 「People Ready」のようなマーケティングテーマは「あまりに包括的だ。社員力を高めたくない経営者がいるだろうか? しかし、VistaやOfficeがXP SP2やOffice 2003と比べてどこがよいのかは具体的に記されていない。あたかも、Microsoftを信用して同社の製品を使えば、社員の生産性が高まると信じなければならないかのようだ」とチェリー氏は指摘する。

 だが結局、どちらのアナリストも、Vista、Office 2007、Exchange 2007をリリースした――少なくとも企業顧客向けに(コンシューマー向けのリリースは2007年1月30日)――ことで、Microsoftの2006年は好調に終わったとしている。

 Microsoftはまた、セキュリティなど継続中の取り組みにおいても前進した。チェリー氏は、同社のセキュリティは2006年に、セキュリティ対策センターを通じた情報提供やパッチ配信の改善により、大幅に向上したと感じている。

 しかし、同社の最も強力なライバル、AppleとGoogleの実績は「Microsoftを圧倒した。同社は、需要を生み出すマーケティングができないという長期的な問題に対処する上で大したことはしなかった」とエンダール氏は指摘する。

 2006年は同社内で幾つかの異動や組織変更があったが、そのすべてが有効というわけではなかったと同氏。

 年間を通じて行われた組織変更は、同社が抱えていた業務上の問題に対処したようだ。共通の利益を中心に製品部門を整理したことにはかなり意味があった。

 また、Microsoftは「Vistaに関して、誰でも覚えられる優れたマーケティングチームを作ったが、資金が少ないようだ。これは問題かもしれない」とエンダール氏は語り、厳しい時期に顧客との関係を維持するのに不可欠な対人的な業務部門において、スタッフの変更がかなりあったと付け加えた。

 「この部門は比較的安定していて組織的でなければならない。彼らはそうは見えなかった」(同氏)

 チェリー氏はまた、Microsoftの人事戦略は変化を生み出すだろうと考えており、懸念を示した。

 「スティーブン・シノフスキー氏に才能があることは疑問の余地がないが、同氏をWindows部門へ移しても、皆が考えるような影響はないかもしれない。結局、ブライアン・バレンタイン氏(Microsoftを辞めてAmazon.com幹部になった)がWindowsをもう一度軌道に戻すために呼ばれた」(同氏)

 また、「ソフトの力を際限なく信じるのは素晴らしいが、修正しなくてはならないプロセス上、物流上の問題もある」と同氏は指摘する。「早期β版やリリース候補をテクノロジープレビューと呼ぶだけでは、開発プロセスの迅速化も品質の向上もできないだろう」

 Microsoftは2006年に、Xboxモデルを使ってZuneを開発するなど、幾つか奇妙な決定を下したとエンダール氏は言う。「Microsoftが逆にAppleのように変わりつつあるというのは奇妙に見える。同社は多くのベンダーの標準であるときにはベストだが、ベンダーそのものであるときには最弱だ」

 オジー氏が率いるサービスとしてのソフト構想への取り組みに関して、エンダール氏は、オジー氏はコラボレーションを修正するために任命されたのであり、Microsoftはその点で緩やかに前進していると語った。

 「同氏(オジー氏)はシャイで聴衆の前に立つのは得意ではない。それが、同氏が表に出ない理由かもしれない。その一方で、同氏は外部者であり、これまでMicrosoftでは外部者が特にうまくやってきた例がない。とは言え、それはどの複雑な大企業でも言えるだろうが」(エンダール氏)

 チェリー氏によると、Microsoftはこの1年、新製品をリリースし、Office LiveとWindows Liveサービスを提供できる状態にするためにかなりの時間を費やした。だが、これまでに公開されたLiveサービスは「おもしろいかもしれないが、混乱を招く」と同氏は言う。

 Office Liveを見てみよう。これは小規模企業が興味を持ちそうなサービスを提供しているが、その名前から一部の人は、WebベースのWord、Excel、PowerPointを利用できるものと思うだろうと同氏は指摘する。

 「それに、これらサービスはMicrosoft製ブラウザの最新版でしか動かない。わたしには、Internet Explorer最新版向けにしかWebベースサービスを提供できないと思っている会社が、Webベースサービスの大前提を分かっているようには思えない。この種のサービスに真剣に取り組んでいるのなら、今使われているすべてのブラウザ、あるいは少なくともFirefoxとSafariをサポートするだろう」(同氏)

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