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スティーブ・ジョブズがAppleを葬った日(2/3 ページ)

» 2007年02月16日 09時00分 公開
[David Morgenstern,eWEEK]
eWEEK

 だがAppleにとっては、ソフトウェアの機能はハードウェアの機能でもある。ここで、Leopardに追加されるとうわさされるもう1つの機能について、その裏付けとなりそうな、わたしの推論を披露しよう。

 昨年夏、わたしはIntelの次世代フラッシュキャッシュ技術「Robson」の進展について書いた。RobsonはWindows Vistaのアクセラレーション技術、「ReadyDrive」と「ReadyBoost」に対応しており、「ハイブリッドな」フラッシュ対応ハードディスクと外部フラッシュメモリの利用に対する代案となる。Robsonは最大4Gバイトのフラッシュキャッシュ、PCI Express Mini Card上のコントローラASIC、ホストコンピュータ上のドライバソフトから成り立っている。

 Robsonには、システムアクセラレーションにフラッシュメモリとハードディスクキャッシュを利用するよりも多くのメリットがある。まず、Robsonはコンピュータ内に設置されるため、「安全」とみなされ、システムはスリープ状態またはシャットダウンの間でさえそのデータの完全性を信用する。Vistaは、スリープ状態の間にこのキャッシュをフラッシュドライブ上に再構築する。これにより時間が短縮され、よりよいユーザー体験が作り出される。

 ハードディスク上のフラッシュの場合、Robsonはドライブメーカーが想定するよりも大きなキャッシュを安価にサポートできる。現在まだハイブリッドドライブは製造されていないが、2、3社が3月末までには製品を出荷する見込みだとしている。

 一方、Robsonにはコンピュータメーカーにとって、幾つかのデメリットもある。このアーキテクチャのノートPCへの採用は、余分なものの追加を嫌うノート市場の在り方に反して、コストの追加を招く。そして、今のところこうしたキャッシュの価値は、ほとんど認められていない。

 Robson実装に使われるフラッシュをIntelが制限することも、幾つかのメーカーにとっては問題だろう。昨年6月のFlash Memory Summitで、Intelのストレージテクノロジーグループのディレクター、ナット・グリムスラッド氏は、Robson搭載マシンは品質保証上の理由でIntelのNANDフラッシュのみを使うと述べた。

 だがAppleにとっては、こうしたことがサードパーティーとの交渉を難航させる要素になることはない。同社は通常自社のハードウェア、特にノートPCには、プロプライエタリなインタフェースやコネクタを装備する。例えば、AppleのMacBook ProにはMagSafeが使われている。これは、電源コードを踏みつけてしまっても、ノートPCをテーブルの上から床に落とさずにすむマグネット式の電源アダプタだ。

 また、Intelはこの外部技術の信頼できるパートナーとみなされるだろう。同社は現在、Appleの技術提携先だ。Robsonがフラッシュの管理を制御し、オンボードキャッシュに自社製の損耗平均化アルゴリズムを使うなら、それはAppleの品質保証にとってプラスになるだろう。

 AppleのシステムにRobsonを搭載すれば、もちろんユーザー体験は向上する。それはAppleが重視することだ。

 最後に、2006年6月のカンファレンスでIntelの代表は、Robsonテクノロジーの公開予定日を2007年6月とした。この日程が語られたのは、Microsoftが当時、最上位レベルのVista対応ロゴを付けるモバイルシステムには、フラッシュキャッシュかハイブリッドドライブの搭載を求める方針だったからかもしれない。

 だがこの日程は、Leopardリリース後に出荷されるMacにとってもいいタイミングだ。

 皮肉なことに、Appleは拡張フラッシュキャッシュアーキテクチャを標準機能として搭載するマシンを出荷する最初のメーカーになるかもしれない。今のところ、Robsonやハイブリッドドライブのサポートを発表したPCメーカーはない。

 もちろん、AppleもIntelも、MacへのRobson搭載について言及したことはない。ただの憶測だ。

 だが、昨年の6月にIntelのグリムスラッド氏はわたしに、RobsonテクノロジーのほかのOSでの利用を妨げるものはないと語った。

 「顧客要求ベースの別OSのサポートにはまだ取り組んでいない」と同氏は言った。

 これは「あり」という意味に聞こえる。

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