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» 2007年02月16日 09時00分 UPDATE

スティーブ・ジョブズがAppleを葬った日 (3/3)

[David Morgenstern,eWEEK]
eWEEK
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 このコラムの冒頭に書いたように、1997年の組織改編はApple内外に波紋を巻き起こした。この発表は2月最初の週、Appleの株主総会で行われた。R&Dとマーケティング部門の上層部が異動となった。

 当時のCEO、ギル・アメリオ氏は、R&D部門の経費と一般管理費を4億ドル削減すると発表した。アナリストは2000人〜3000人のレイオフを予測した。

 アメリオ氏は集まった株主と従業員に向かって、Appleは「成長する前に縮小しなければならない」と語った。

 だが、どのくらい小さく?

 1カ月後、次の段階として、Appleは具体的な削減を発表した。従業員4100人のレイオフに加え、同社は多数の技術や製品を打ち切った。そこにはMac OSのプログラミングツール、「弁当箱方式」のコンポーネントドキュメント環境「OpenDoc」、ネットアプリケーションスイートの「CyberDog」、ネットワーキングフレームの「Open Transport TCP/IP」などが含まれていた。

 なかでもOpenDocやCyberDogなどの製品は、サードパーティーのデベロッパー、特にISVにとっての、戦略的なプラットフォームと見なされていた。

 AppleのR&Dはほとんど骨抜きになった。同社には長期にわたるリサーチを行うグループが多数あった。エージェント技術やモバイルデバイス、インタフェース、バスなどだ(IEEE 1394 FireWireを開発したのはAppleであることを思い出してほしい)。

 そのほかにも幾つかの削減が同年とそれ以降に行われた。例えば、最初のリストラでは命拾いしたNewtonの取り組みは、1998年2月に中止になった。

 それから数カ月後の1997年5月半ば、AppleはWWDCを開催し、OSのロードマップを発表した。この大規模な計画は「Rhapsody」と名付けられ、PowerPCとIntelのプロセッサで稼働する、NeXT OpenStepベースの「Yellow Box」APIを含むことになっていた。

 ほとんどの顧客は従来のMac OSを使っていたというのに、開発者はRhapsodyに取り組むことになった。当然、多くの疑問や懸念が生まれた。開発者が主に心配したのは、自社製品のリライトに必要な作業と、この新OSを受け入れる顧客が不足するのではないかという予測だった。

 RhapsodyのYellow Box計画は破綻し、1年後のWWDCで、Appleは改良した戦略、「Mac OS X」を打ち出した。この計画では「Carbon」APIが提供された。これは、Macのプログラムの安定性を強化するUNIXベースの機能だ。過去を尊重して改良を加えた形のこのアプローチは、互換性モジュールの「BlueBox」とともに、開発者と顧客から歓迎された。

 1997年のWWDCに話を戻すと、スティーブ・ジョブズ氏はカンファレンスの舞台裏を歩き回り、開発者との「ファイアーサイドチャット」を即興で開催した。当時、アメリオ氏がまだCEOで、同氏はまだ共同設立者にすぎなかった。最近のジョブズ氏の周到に準備されたイベントと違い、この催しは非公式で台本なしのものだった。

 ジョブズ氏はこのディスカッションで、数多くの標語を披露した。Appleは多かれ少なかれ、過去10年間この時の標語を掲げてきた。

 例えば、1人の開発者がジョブズ氏はAppleの問題解決について何も分かっていないと言ってやじった。ジョブズ氏はこの開発者はおそらく正しいと認めておいて、顧客価値について語った。

 「開発者は顧客体験が第一、技術はその次という姿勢でなければならない――逆はない。わたしは恐らく誰よりも多くこの点で過ちを犯してきたし、それを証明する傷も負った」とジョブズ氏は語った。

 OpenDocなどの人気のあるフレームワークを打ち切ることに対する開発者の懸念について、ジョブズ氏は自分が「皆さんの技術を銃殺する側の1人」であることが残念だと述べた。

 この厳しい話を受け入れない観客もいた。だが、ジョブズ氏がこの決定を後悔しておらず、むしろ決定者であることが分かった。OpenDocとCyberDogは優秀なテクノロジーかもしれないが、打ち切る必要がある。バーン。

 ジョブズ氏にとって、Appleは集中する必要があり、それは「ノー」と言うことを意味していた。

 さらにジョブズ氏は次のように続けた。「いずれにしてもApple以外に誰もOpenDocを使わないなら、無理に使うこともないだろう」

 1997年に開発者とユーザーの前で行われたこの発言に、あなたは苦笑するに違いない。業界全体がMacユーザーに対し、なぜ誰も使わないプラットフォームを使うのだと言っていた。

 だが、Appleは年々、ソフトウェアとハードウェアの業界標準へのサポートを拡大しつつある。

 当時のジョブズ氏によると、Appleは「違う」と見なされるべきではなく、むしろ「Appleはほかよりもっといいと思われることが重要」ということだった。

 これは来る6月のWWDCの基調テーマになるだろう。Intelへの移行を背景に、Appleのハードウェアはかつてないほど競合のPCに近くなっている。また、Windows XPからの切り替えユーザーが全Macユーザーの半数になっていることからも、Appleはその方針をある程度変更しているように見える。

 新たな疑問はこうなるだろう。「LeopardがWindows Vistaに対抗したとき、この『より優れている』という状態を続けられるのだろうか?」

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